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19話 新入生親睦会 退場

 ダンデに手を引かれるがまま、カトレアは、いつの間にか校舎の外に出ていた。


 外は、会場の騒がしさが嘘のように静かだ。

 空を仰ぐと、無数の星が輝いている。先程まで見ていたシャンデリアと比べると、その明るさは優しく感じた。


「ねえ、ダンデ、今どこに向かっているのかしら?」


 夜空から視線を移し、問いかけると、ダンデが足を止めた。


「何処って……、女子寮だよ。体調悪いんだろ?」


「えっ、いやそういう訳じゃーー」


「いつもジャジャ馬なテメェが、顔青くして震えるなんざ、風邪でも引いたかなんかでしかねえだろ?」


 揶揄うでもなく、真剣に話すダンデに、カトレアは非常に困った。


 ダンデに、自分が1度死んだ人間等とは説明が出来ない手前、本当の理由を話す事が出来ない。

 ただ、カトレアのトラウマ的な物が揺さぶられただけなのだから、勿論、体はすこぶる元気だ。


 どう答えようか迷っていると、ダンデは、もしかしてと、目を大きくした後、気まずそうに頭を掻き始めた。


「あー、アレか、食べ過ぎで腹痛いならよ、トイレ、遠慮せずに行ってこいよ」


「ち、違うわよっ!!」


「なら、いいけどよ。行きたくなったらちゃんと言えよ」


 気遣わしげにカトレアの手を引くダンデに、居た堪らなくなってくる。


(勘が良いのか、悪いのか……)


 しかし、あのままレイノルドと会話を続けるのは、正直辛かった。

 それを思えば、連れ出してくれたダンデ、それにあとを引き受けてくれたリリスには感謝である。


 いつもより遅い歩みのダンデに連れられ、カトレアは、女子寮に着いた。

 男子は入る事が出来ない為、ダンデは門番に声を掛け、管理者であるサブリナを呼んだ。

 

「あら、カトレアさん? どうしたの?」


「夜遅くにすみません。コイツ、親睦会の途中で体調崩しちまったみたいで……」


「そうだったの! 送ってくれてありがとう。あとは、私が連れていくわ」


 サブリナがそう言うと、ダンデは、カトレアの手を、彼女に差し出した。


(そういえば、ずっと繋いだままだった!)


 急に恥ずかしくなり、カトレアの顔が熱くなる。

 それを2人は勘違いしたのか、熱がでたんじゃないかと、焦っている。


「じゃあ、俺は会場に戻る。適当に上手いこと言っといてやるから、お前はちゃんと休めよ」


 ダンデはそう言い残すと、心配そうに2回ほど振り返ってから、元来た道を走っていった。


「可哀想に、せっかくのパーティーだったのにね。後で毛布持っていきましょうか?」


「い、いえ、そこまでは……。後は、自分で戻れるので、お騒がせして申し訳ございません」

 

 カトレアは、サブリナに頭を下げて、自室へと戻った。


 部屋に入り、ドアを閉めると、疲れがドッと押し寄せる。そのまま、ドアを背に座り込み、カトレアは、息を吐いた。


 無意識に頭を触ると、アイラが付けてくれた髪留めが手に当たる。


(せっかく、綺麗にしてもらったのに……)

 

 セットしてくれた髪を崩すのが勿体なくて、カトレアは、アイラが帰ってくるまで、そのままにしておくことにした。


「あっ、ダンデにお礼、ちゃんと言ってない……」


 そのことに気付き、しまったと慌てるが、明日は学校は休み。次に会うのは2日後だ。

 気が動転していたとはいえ、恩知らずな自分に頭が痛くなる。


 それもこれも、己の中に燻る、未練がましい自分のせいだ。

 レイノルドの事で、まだあんなにもショックを受けれるのかと、我が事ながら呆れる。


(レイノルド様、今の婚約者の方にも、昔の私と同じような態度なのかしら)


 ふと、そんなことを思い、顔も知らない女性に同情する。


「……ん? 今の婚約者って、どなたなのかしら」


 カトレアは1人、今更な疑問を口にしたのだった。




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