表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/64

第11話 知らない

「マリア先生……、マジ可愛かったよなぁ」


マリアが出ていった後、教室は、彼女の話で持ちきりだった。

例に漏れず、ポロとラグもうっとりと語り合っていた。それは、彼等から、さほど離れていない席に座るカトレアにも、聞こえていた。

カトレアは、2人を揶揄ってやろうと、声を掛ける。


「あら、私も中々悪くないと思うけど、そんな事言われた事ないわね?」


すると、2人はいやいやと、食い気味に首を振った。その反応はあんまりだと、眉を顰めると、彼等は鼻息荒く話し始める。


「オイラ達は、カトレア姐さんのおかげで合格できたんだ! そんな恩人であり、尊敬する姐さんは、最早、女性というカテゴリーから外れてるんだよ!」


「なんたってカトレア姐さんは、僕達『業火に呑まれ隊』の隊長だからね! 最早、『神』というカテゴリーのが近いよ!」


ポロ、ラグの順に熱く話された理由に、カトレアは、口元を引き攣らせた。


彼等の口からでた、『業火に呑まれ隊』は、一般試験を合格したその日に、2人の間で勝手に結束されていたらしい。メンバーは、ダンデの火に隠れていた4名は、強制的に加入との事。


では、具体的に何をする組織なのかと聞けば、まだ決まっていないと言う。


「どちらかと言うと、心の同盟みたいなもんだからね。でもせっかくだし、今度の休みとかご飯に行く?」


「ラグは、飯の事ばっかだな。まずは、副隊長を決めないとだろ? やっぱ、ベンかな? アイツ真面目だし。姐さんは、どう思う?」


やる気みなぎるポロの問いに、カトレアは、そうね、と、投げやりに答えた。







「ありがとう、ダンデ。助かったよ」


隣に歩くベンからの礼に、ダンデは、構わないと、返した。


授業が終わり、ダンデは用を足しにトイレに行っていた。それを済ませて出た所で、山の様な資料を抱えて歩く、ベンを見つけ、手を貸したのだった。


「ポットル先生に呼ばれて取りに行ったらさ、こんだけ資料が置かれててさ……」


「あー、あのヨボヨボ爺さんなぁ。アイツの授業ある日に、日直はマジ最悪だな」


ダンデ達が話す、ポットル先生とは、ヴィストン学園で、歴史を担当している、老齢の教師である。学園の生き字引とも呼ばれる彼の授業は、何故かべらぼうに資料が多い。


しかし、腰も曲がった年寄りがそれを運ぶ訳もなく、いつもクラスの日直が駆り出されている。今回、それに当たってしまった、不運な生徒が、ベンだった。


「話も長えし、俺はアイツの授業無理だわ」


「ハハッ、あの先生人使いは荒いけど、話は案外面白いよ?」


「ケッ、俺は体動かしてる方が性に合ってるぜ」


ダンデは理解出来ないが、ベンは、座学の方が楽しいのだと言う。確かに、一般試験の時の様子を見た限りでは、実戦は得意ではなさそうだ。


その事を言えば、彼は、情けないのか恥ずかしいのか、気まずそうに目を逸らした。


「あっ、そうだ。ダンデって、カトレアさんの好きな物知ってる?」


「あいつの好きな物ぉ?」


ベンの質問に、ダンデは何故と首を傾げる。

聞けば、助けてくれたお礼をしたいのだと言う。


(アイツの好きな物なぁ)


出会いから遡って考えるが、ピンとくるものがない。

そもそも、元は侯爵令嬢だったのに、野宿もしてのけた彼女の適応能力の高さ。これは、裏を返せば、こだわりが強くないと言えるのではないだろうか。


詰まるところ、長い付き合いであるダンデにも、彼女の好きな物は分からないのだ。

その事が、何故だかダンデには面白くなかった。


しかし、ベンを無視する訳にもいかない。

ダンデは、苛立たしげに舌打ちを交え、知らないとだけ返した。

機嫌を悪くしたダンデに、若干怯えた顔を見せたベンは、それならいいんだと、苦笑した。


「まあ、本人に聞いてみるよ。気を悪くさせちゃって、ゴメンね?」


しかし、ベンの『本人に聞いてみるよ』が、何故だか気に入らないダンデは、益々、眉間の皺を深めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ