第10話 魔法学の授業
パーティーが開かれるからとて、浮かれてばかりはいられない。
学生の本分は学業である。招待状の事は頭の片隅に置き、カトレアは、座学に勤しんでいた。
今日の授業は、魔法学。カトレアにとっては、他よりも得意とする分野の為、特に身が入る。
教鞭を取るのは、一般試験時にゴーレムを召喚していたマリア・スチュワーノ。
彼女は、鈴の鳴るような可愛らしい声で、魔法の歴史を語っている。
「魔法は、元々は他国の技術でした。しかし、100年ほど前に、外商、ディアン・サラバノ氏により、伝えられたとされています。当時は、すぐには受け入れられず、恐ろしいモノとして、扱われていました。」
ヴィストン王国で、魔法が日常生活のツールとして発展したのは、割と最近の話である。自分達の祖父母の年代では使えない人も少なくない。
現在は、魔力の特性検査を各地域で、満6歳を対象に行っている。それほど、魔法が今後の暮らしの発展に関わるとされているからだ。
しかし、小さな村では、魔法学に明るい人材がいなかったりする為、15歳になっても、魔法の使い方はおろか、魔力の特性を知らない若者もいる。
実際に授業が始まる前に、自分の魔力の特性を知らない生徒をマリアが聞いていたが、グラトを始め、数人の生徒が手を挙げていた。
「魔力の特性は、火、水、風、雷、土、氷、光、闇の8種類あります。特性を調べるのには、経験している人もいるかもしれませんが、この8種類の魔法鉱石を使用します」
マリアは教卓に魔法鉱石をズラリと並べた。
魔力の特性検査は、魔法鉱石の探索魔法とほぼ同じである。検査対象者は、魔法鉱石の方へ手をかざし、呪文を詠唱する。その詠唱に反応した魔法鉱石が特性という事になる。
「特性を知らない子は、授業が終わってから、個別で検査をするけど……、せっかくだし、代表でグラト君の特性検査をやってみようかな」
その場でいいからと、グラトを立たせると、板書の呪文を詠唱するように、マリアが指示を出す。
グラトは、ジッと板書を見つめてから、ゆっくりと口を開いた。
「我が身に宿りし魔力よ、源となる石へ導きたまえ」
呪文に応えるように、土の鉱石が黄褐色の光を放ち、それと同じ光がグラトの手からも出現した。
それを見たマリアは、少女のような笑顔で、よく出来ましたと、彼に拍手を送った。
「グラト君は、土の魔力の持ち主ね! 土の魔力は、とっても幅広い使い方ができるのよ? 私みたいに、召喚魔法とか、ゴンザレス先生みたいな、効果付与とか! これから、頑張って覚えましょうねっ」
グラトは、不思議そうに自分の手と、魔法鉱石を見比べながら、席に座った。
「今のが魔力の特性の調べ方で、次は、基本となる魔法の使い方です。魔法の4ステップを、カトレアさん、知ってるだけでいいので、答えてもらってもいいかしら?」
マリアの指名に、カトレアは、返事と共に起立する。
「『集中』、『イメージ』、『詠唱』、『開放』です」
「すごい! とっても勉強してくれているのね? 完璧だわ!」
カトレアの回答を、マリアは、大袈裟な程に褒めた。
とはいえ、基本中の基本である。覚えているかは置いて、ある程度、魔法が浸透している地域ならば、両親か、特性検査の時に教わっている者も少なくないはずだ。
それでも、偉い偉いと、褒めちぎるマリアに、つい、照れてしまう。
「カトレアさんの言った通り、魔法は、魔力を何処かに『集中』させて、発動したらどうなるかを『イメージ』する。それから、呪文を『詠唱』して、より具体的な物にしてから、集中させていた魔力を『発動』させるっていう流れになります。慣れてくると省略も出来るけど、最初はこの基本をしっかり抑えてね」
マリアが言い終えると、ちょうど終業のベルが教室に鳴り響いた。
「今日はここまで! グラト君以外の、特性を知らない子は、今からするから前に来てね。それ以外の子達は、次の準備をしてください」
そう言って、マリアは、生徒達へ花も綻ぶような笑顔を見せた。




