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第5話 新たなリリス

「そんで、そっから色々あって、猫助けようとして、車に轢かれた事までは覚えてんねん。多分……、死んだはずやねんけど、目覚ましたら、この顔な訳よ」


 そう言って、リリスーー中身はミナト・ヤシロは、自らの顔を指さした。


「えっと、げーむ? とか、色々分からない言葉はあるけど……、とりあえず、リリス? いえ、ミナト? は、元々違う世界に居たのね?」


「流石、カトレアちゃん! 理解が早いわぁ! あ、後、この世界ではリリスやから、リリスって呼んでくれてエエよ」


 寧ろ、そっちの方が……と、ニヤけるリリスに、カトレアは思わず引いてしまう。

 やはり、彼女は、カトレアが知っているリリスではないようだ。


 彼女から見たこの世界は、『ミナト』が見ていた物語の世界。

 彼は、恐らく死んで、物語の登場人物である、『リリス』に生まれ変わったのだが、中身はそのままというのだ。

 カトレアの身に起きたことも、生まれ変わりとは、また違うが似ている。


「でも、私達が別世界の創作上の人物だなんて……」


 既に筋書きが決められているとしたら、恐ろしい話である。

 しかし、リリスは、それは無いだろうと、首を振る。


「今の時点で、カトレアちゃんもオレも、ストーリー上ではありえない現状におる。そう考えると、既に原作からは、手が離れた世界なんやないかな?」


 心配する事はないと、笑うリリスに、カトレアは、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「にしても、カトレアちゃんが、騎士科にいるなんて思わんかったわ」


「それは、こちらも同じよ。なぜ、貴女は、魔法科に入ったの?」


 カトレアが問うと、リリスは目に見えて落ち込みだした。

 膝を抱えて、地面を指で弄りだした彼女に、カトレアは、何事かと焦る。


 リリスは、そのまま、沈んだ声で話し出した。


「カトレアちゃん助けたくてな、魔法科では、回復魔法を極めようと思って入ってん。でも、カトレアちゃんは、実質、1回死んじゃってるわけやん?」


「ま、まあ、そうなるかしら?」


「せやろ? それって、オレは遅かったって事やん。時が巻き戻ったからといって、カトレアちゃんが殺されたあの日に、結局、オレは間に合わなかったんや」


 リリスは、悔しそうに下唇を噛んだ。


 しかし、カトレアの死に、彼女がそこまで心を痛める必要はない。


 あの最期は、自業自得だ。それに、死んでいなかったとしても、その後、何かしらの罰は待っていたのだ。

 正直、生きていた方が辛かったかもしれない。


 カトレアは、リリスの頬にそっと触れた。


「確かに、私は一度は死んでしまったわ。でも、今の私は、死なないとなれなかった私なの。貴女が望んでくれたような形、ではないけれど、意外に気に入ってるのよ」


 だから悲しむなと、カトレアはリリスの頬を数回撫でた。


 すると、彼女の顔はたちまち、朱に染まっていく。耳まで真っ赤になる頃には、リリスは、すっかり元気を取り戻したのか、顔を覆って、言葉にならない叫び声を上げていた。


 頭がおかしくなったのかと、心配になるが、元気になったのなら良かった。


 カトレアが、薄目で見守っていると、突然、リリスが顔を上げる。


「そうや! あんなボケ王子に、カトレアちやんは勿体ないわっ!! カトレアちゃんには、もっとエエ男がおる。カトレアちゃんに、取り付く悪い虫は、オレが駆除したらぁ!!」


 急に活気づいたのか、高く拳を突き上げて、宣言するリリスに、カトレアは唖然とする。

 しかし、そんな事はお構い無しに、リリスは、やる気に満ち溢れている様子である。


「カトレアちゃん、任せてやっ! カトレアちゃんに相応しい男、オレがちゃんと見極めるで! あ、でも、オレも一応選択肢に入れてもエエんやで?」


 エヘヘと、照れ臭そうに笑うリリスに、カトレアは、この先の苦労を何となく察してしまう。


 カトレアは、顔を引き攣らせながら、「程々にお願いするわ」と、返した。






いつも、閲覧、ブックマーク、評価、ありがとうございます。

この度、ブックマーク数が100に到達いたしました。ひとつの目標にしていたので、とても嬉しく思います。

今後も、皆様に楽しんで貰えるよう、創作活動に努めます。


上記の事、この場を借りて、お礼申し上げます。

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