第7話 試験結果
ベンの作戦はこうである。
まず、ダンデの魔法でゴンザレスの視界を遮る。その火の中に、耐火付与の魔法をかけた数名を忍ばせて、奇襲をかける。
耐火付与の魔法には、『水』の魔力を持つ者が必要なだ。幸いベンの属性が『水』であった為、そこは問題無かったのだが……。
「けど、あのジジイがそう簡単にヤられてくれるか?」
「そこなんだよね……」
もう少し、フェイクを重ねて不意をつけられるといいのだが、どうするか。
考えあぐねていると、グラトが手を挙げて、口を開く。
「飛ばす」
「……だ・か・ら、よォ!!もうちょっと詳しく話やがれ!!」
グラトの言葉数の少なさに怒ったダンデは、彼の肩を掴んで、ブンブンと頭を揺らした。
しかし、グラトの言う通り、飛ばして上からの奇襲は、中々に気をてらっているかもしれない。
(上からの奇襲に加えて、一気にグート卿との距離を詰められば……)
「セラ、貴方、加速効果付与の魔法は使えたわよね?」
「あー、使えますけど、1回分しか出来ませんよ?僕、本当に魔法苦手なんですよね……」
「問題ないわ、それで十分よ」
グラトがアシストして、セラを空中に飛ばし、そこから一気に加速で距離を詰める。
ベンが提案した4方向からの奇襲に、それを加えることで、向こうの隙をつけるかもしれない。
ベンにも意見を求めると、それならイケるかもと、同意を示してくれた。
こうして、カトレア達は、奇襲に奇襲を重ねた作戦を、決行することにしたのだ。
「結果的に上手くはいったけれど……」
カトレアは、所々焦げた服と、ヒリヒリと痛む軽い火傷に顔を顰めた。
ゴンザレスに1発を与えた事から、作戦は成功に終わった。
しかし、ダンデの火の威力が強過ぎたり、そのせいで耐火効果があるにも関わらず、軽く被害を被ったり、グラトの力が予想以上に強く、セラが高く飛ばされすぎたり、それに周りはヒヤヒヤしたり……。
(予想外な事が多すぎて、余計に疲れちゃったわ)
カトレアと同じく、奇襲組だったメンバーは、焼け死ぬかと思ったと、半泣きになっていた。
さて、ゴンザレスだが、彼は、額に拵えた大きなたんこぶを、痛そうにさすっている。
ゴンザレスは、よっこらせっと立ち上がると、パチパチパチと、手を叩き始めた。
「ふむ、まさか、本当に一発入れられるとはな……。ガハハハっ! 適材適所な奇襲、見事だ。さて、審査結果だが、お前さんら、7人か?合格だ」
通知は追って送ると言って、ゴンザレスは、ニカッと笑った。
「っしゃーー!! 合格だぜ、カトレアっ!」
「は〜、やっと終わりましたね。僕疲れました」
肩や腰にくっついて、それぞれに喜びや安堵を伝えてくるダンデとセラに、カトレアはジワジワと合格した実感が湧いてくる。
「ーーっ」
カトレアは、思わず緩んだ涙腺を、慌てて隠した。
正直、女の身で騎士の門を叩くのは不安で仕方が無かった。
しかし、差別や偏見無く、試験官達は実力のみを見て、開いてくれたのだ。
カトレアは、その場に膝をついて、彼等に感謝の意を示した。
他の合格を伝えられた仲間達も、カトレアに習うように膝をつく。
すると、先程までいなかったロズウェルと、ゴーレムの主だろう女性が、庭に現れた。
「顔を上げてください。皆さんには、先程ゴンザレス先生が仰ったように、合格通知を自宅へ送ります。帰る際に、所定の紙に、名前と住所を記入して、私にお渡し下さい」
おめでとうございますと、丁寧に頭を下げたロズウェルは、今度は、カトレア達以外の受験生へ視線を向ける。
「他の受験生につきまして、ゴンザレス先生に挑んだ数名については、後日、彼が実施する体力テストにご参加ください。後程、詳しい説明をいたします。それ以外の方は不合格ですので、速やかにお帰りください」
淡々と告げるロズウェルに、不合格者達は、沈んだ表情で庭から出ていった。
「戦いの場で大事なのは、自分の出来る事を精一杯努めることです。何もせずに立ち竦むならば、逃げて命を守る方がまだマシですね。今の試験は、役立だずをふるいに掛けるためにやったんですよ」
無駄に死ぬのは、何の意味もない。
ロズウェルは、冷え切った瞳で去っていった彼らの後を見つめる。
そのあまりの恐ろしさに、カトレア達はゴクリと唾を飲み込んだのだった。
その日、カトレアは合格の報せを嬉々として持ち帰った。
だが、見るも無惨に切られた髪を見て、ハーベラが悲鳴を上げて卒倒してしまった。
その悲鳴に、動物達が驚き慌てた事は、山のみぞ知る話である。
あとがきの場を借りて、失礼致します。
いつも閲覧くださり、ありがとうございます。
また、ブクマ、評価を下さった皆様方、大変励みにしております。
この場を借りて感謝申し上げます。
今後とも、彼等のストーリーを見守ってくださると、嬉しく思います。
少しでも皆様のお供になれますように
照 鈴々




