第4話 試験開始
「ここは……?」
ロズウェルに連れられた場所は、どこかの豪邸の庭だった。
面積はかなり大きく、50人は優に超える受験生達が居ても、まだまだ余裕のある状態だ。
豪邸は、人が住んでいる雰囲気は無く、所々劣化が進んでいる所を見ると、どうやら廃墟と化してしまっているようだ。
「こちらは、昔、服飾業で財を為したとある富豪の屋敷です。まあ、事業に失敗して、今はもぬけの殻ですが」
ロズウェルは、そんな事はさておきと、手を叩いた。
彼は、受験生達の視線を集めると、満足そうに笑う。
「皆さん、良い子ですね。では、これから試験を始めます。頑張ってくださいね?」
そう言うと、ロズウェルは指を鳴らし、影の中へと消えていった。
その場に残された、カトレア達含めた受験生は、突然の彼の宣告に、ざわめいている。
「なんだ? あの、ロズウェルって教師の言ってる試験ってやつはよ」
「今のところ、皆目検討もつかないわね」
ダンデとカトレアが戸惑っていると、セラが何かを察したように剣を構える。
「何か、地面が変です」
セラの言葉に、カトレア達が下を向くと、ボコボコと地面がうねりを上げていた。
それを見て、3人は反射的にその場を飛び退いた。
直後、地面のうねりは徐々に大きくなり、人のような形を成していく。
「オイっ!全員、剣を構えろっ!!」
ダンデが叫ぶと同時に、人型の何かは近くの受験生を襲いだした。
一斉に阿鼻叫喚と化した状況の中、剣を構えながらカトレアは、ある魔法を思い出す。
「あれは、ゴーレム!」
土の魔法の1つ、『ゴーレムの生成』。
土の魔力により、作られた土の人形は、使役者の指示に従い動く。
かなりの高等な魔法で、使える人間も少ない為、一般的にはあまり知られていない。
しかし、次から次へと現れるゴーレムに、おそらく何処かに、かなりのレベルの魔法士がいると、カトレアは推測した。
一気に叩くのならば、その魔法士を見つけ出すのが早い。
(もしかして、オルテーニ卿が? いえ、影に消えていったのを見ると、彼の魔力は『闇』のはず。ということは、別に?)
しかし、考えている間にも、ゴーレムの腕がカトレアに向かって振り上げられる。
それを素早く躱し、カトレアはゴーレムに向かって剣を向けた。
(見つけ出す暇はないみたいね)
カトレアは、地面を蹴りあげ、心臓目がけて、剣先を突き刺す。
魔法書には、ゴーレムの急所は人間と変わらない。
その通り、心臓部を突き刺されたゴーレムは、土へと還っていった。
「皆さん! 狙う場所は人間と変わらなくてよっ! 臆さず、斬りつけなさい!」
カトレアの言葉に、受験生達は、恐る恐ると剣を振り始めた。
とはいえ、ゴーレムは次々と増えていく。
一体一体倒していては、いずれ押されてしまう。
カトレアは、距離をとり、剣に魔力を込めながら詠唱する。
「剣に纏え凍てつく魔力、敵を貫く矛と成れっ!!」
カトレアが目の前に向かって、剣を乱れ突くと、鋭い氷柱が弾丸のように、ゴーレムへと飛んで行った。
氷柱は、数体のゴーレムの頭に深く突き刺さり、それらは一気に崩れてった。
(ヨシッ、上手くいったわ!)
既存の魔法を元に、応用した独自の魔法だが、実践でも十分に使えるようだ。
カトレアは、苦戦していそうな所へ応戦する為、駆け出して行った。
突然現れたゴーレムに、セラは真新しい物との出会いに素直に感動していた。
(土なのによくできてるなぁ)
周りが泣き叫んでいる中、セラだけが冷静に敵を観察していた。
すると、ボーッと突っ立っていると見なしたのか、一斉にゴーレムがセラに群がり始めた。
「ありゃ、僕が狙われてるんですね? それは、面倒だなぁ」
セラは、地面を蹴りあげると、次々にゴーレムの首を跳ねていく。
ふと、カトレアの方を見ると、彼女は器用に魔法を使ってゴーレムを倒していた。
(流石だなぁ、カトレアさんは。僕、魔法、下手くそなんだよな〜)
「かといって、魔力使うと疲れるし」
セラは、無駄口を叩きながらも、次々に剣のみで敵を葬っていく。
人には、得手不得手がある。
ならば、得意な方を極める方が、セラは楽だと思っている。
「うん、剣だけでも割と何とかなりますね」
そう言って、剣を振り払うセラの周りには、崩れた土だけが残っていた。
「チッ、次から次にウザってえ!!」
ダンデは、大剣を振り回し、複数のゴーレムをなぎ倒していく。
それにしても、ちょこちょこと現れ続けるゴーレムには、正直ストレスが溜まってくる。
(一気に炎で焼き払うか? いや、そこら辺にいるヘタレ共も焼いちまうな)
邪魔なので焼いてしまいたいが、人間を丸焦げにする趣味は、ダンデには無い。
ダンデは、正面のゴーレムの頭を叩き割った。
何か良い手は無いかと思案していると、突然、目の前で、巨大な斧のような物が横一閃に振り払われようとしていた。
「――っ! あっぶねえな!!」
既で躱したダンデが顔を上げると、ハルバードという長大な武器を手にした、大柄な青年が立っていた。




