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第3話 一般試験 申し込み

 剣を手に入れた3人は、そのまま王都の中央へと来ていた。

 目的は、『ヴィストン学園 騎士科』の一般試験へ申し込む為だ。


 ちょうど今日が、申し込み受付日である。

 カトレア達は、申し込み時に必須な剣を引き取った後、すぐに行こうと決めていたのだ


「確か、場所は役所前だったわよね?」


「おう、てか、もしかしなくてもアレか?」


 カトレア達の視線の先には、大勢の若者が集まっていた。そのいずれも、剣を持っているところを見ると、彼等も同じく騎士志望なのだろう。


(倍率は高いと聞いていたけれど、これだけ人数がいたらそうなるわよね……)


 ヴィストン学園には、特別教養科、一般教養科、魔法科、そして騎士科と、計4つの科に分かれる。


 この中で、1度目の人生でカトレアがいた、特別教養科は、家柄による推薦である。その為、もう行く人間は決まっているようなものだった。

 よって、カトレアは、倍率なんてものを意識したことはなかった。


 しかし、それ以外の科――特に専門的且つ、魔法科よりも敷居の低い騎士科は、上流階級のみならず、庶民からの人気も高く、毎年、たくさんの応募があるのだ。


 とはいえ、知識として知っているのと、目の当たりにするのでは衝撃が違う。

 周りのライバルの多さに、カトレアは少し狼狽える。


 しかし、カトレアは、この6年間、努力を惜しまなかった。狼狽えはするが、負ける気はそもそもないのだ。


「静粛にっ!」


 カトレア達が、周りの受験生を見ていると、ひとりの男性が現れた。

 上品な顔立ちに、眼鏡が知的な彼は、用意されていた台に乗った。


「高い所から失礼いたします。この度は、ヴィストン学園、騎士科の一般試験に参加申し込みいただき、誠にありがとうございます。申し遅れましたが、私、騎士科で主に剣技を教えております、ロズウェル・オルテーニと申します」


 目上にも関わらず、丁寧に頭を下げる彼に、受験生達は慌てて膝をついた。


 唯一、セラのみ膝をつけようとしていなかったのだが、カトレアとセラが慌てて地面に引きずり下ろした。

 彼には、礼儀というものをのちのち教えなくてはならない。


(にしても、ダンデって、こういう時割と常識的なのよね)


「オイ、今失礼な事考えただろ?」


「……ご想像におまかせするわ」


 無駄に鋭いダンデはスルーし、カトレアは、ロズウェルが何を話すか、ソワソワした心持ちで待つ。


 彼は、ニコリとその口角を上げると、焦らすように、ゆっくりと口を開いた。



「これより、ヴィストン学園、騎士科の一般試験を執り行います」



(ーーっ!)


 この場に集まったもの全員が、その一言に目を見開いた。








「カトレアお嬢様は、今日が申し込みの日だったわよね?無事、着いたかしら……」


 心配そうに、ウロウロと動くハーベラに、ラドリゲスは苦笑する。


「大丈夫さ。あの娘も、初めて行くわけではいのだから。それに、ダンデ君とセラ君もいるんだ。問題ないさ」


「そう……、そうよねぇ?」


 まだ、不安げではあるが、幾分落ち着きを取り戻したハーベラは、再び料理へと戻った。


 カトレアを引き取ってから6年。

 彼女を弟子として育ててきたが、その惜しまない努力により、カトレアは、立派に成長を遂げた。

 今まで見てきた騎士達とは、戦いのスタイルは異なるにしろ、おそらくその中でも彼女は非常に優秀な弟子だ。


 何かあったとしても、彼女ならある程度は、1人でも対処出来るだろう。


(しかしなぁ……)


 ラドリゲスは、1つ不安な事があった。


 ルークル騎士団、元副団長ということもあり、ラドリゲスは、騎士科の一般試験について、担当試験官のみ、伝えられていた。

 なぜなら、試験官が相応しいものであるか、アドバイザーとして、意見をしなくてはらないからである。


 もちろん、今回の試験官についても教えられていた。


 ロズウェル・オルテー二。


 若くして、ルークル騎士団の1番隊隊長を勤めた経験と実力、そして頭脳の高さを買われ、騎士科の教育者に任命された男。


 彼が、試験官になる事に異論は無い。


(しかし、彼は性格に難ありだからなぁ)


「突拍子もない事にならないと良いが……」


 ラドリゲスは、ハーベラに聞こえないよう、小さな声で呟き、髭を撫でた。



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