表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/64

第2話 それぞれの剣

カトレア達は、店の一番奥へと来た。

そこには、おそらく自分達の物だろう、3本の剣が並べられている。

形も大きさもバラバラな所に、それぞれの性格が現れている。


「私とセラのは、最初に選んだ形がベースになってるのね」


「うーん、僕、ぼんやりとしか記憶にないです」


「……まあ、貴方眠たそうだったものね」


こんな物選んだっけ、と頭を捻っているセラは置いておき、カトレアは、1番大きな剣を見る。


長い剣身も然る事乍ら、驚くのは刃の幅の太さ。

かなり重たい事が、見た目からでも分かる。


(こんなの振れるのかしら?)


カトレアは、怪訝な目でダンデを見つめる。

それに気付いたダンデが、見せつけるように、軽々と片手で大剣を肩にのせた。


「馬鹿ぢーー、力持ちだとは思ってたけど、本当に凄いわね」


「おい、ぜってー『馬鹿力』って言おうとしただろ? つーか、お前の剣こそ、そんなヒョロくて大丈夫なのかよ?」


ダンデが指差すカトレアの剣だが、彼の剣とは全く正反対の代物である。


元々ある、スモールソードという剣を、より、カトレアでも扱えるように調整したものだ。剣身は細く、無駄な装飾も減らし、出来るだけ軽量化してある。

見ようによっては、頼りなく思われても仕方が無い。


「そいつは聞き捨てならねーな。この俺が作った物が、そんなヤワなわけねーだろ」


カトレア達の後ろで、椅子に腰掛けていたリュウノスケが、不機嫌そうに言った。


彼曰く、王国内で取れる特殊な材質を用いて作られており、軽量にも関わらず、耐久性にも優れているのだそうだ。


「なんだよ、やたらカトレアの奴に力入れてんじゃねえかよ」


「ハッ、貰ってる額が違うんだよ。」


リュウノスケの一言に、カトレアは慌てて聞き返す。


「貰ってる額が違うですって……?」


剣を買うにあたって、カトレアは自分の私物を売って出来た資金を使う予定だった。


しかし、既に貰っている言う事は……。


『それは、もう少し大きくなってからのお楽しみですぞ』


(もしかして、ラドリゲス様が既に支払ってる!?)


そういえば、見積もりだのなんだの話していた。

よく良く考えれば気づく話である。


自分の鈍感さにカトレアは、頭を抱える。


「お、おいくらでしたの?」


カトレアが恐る恐る聞くが、リュウノスケは、それは野暮だからと、答えてくれなかった。


「まあまあ、カトレアさん。別に違う形で恩返しすればいじゃないですか〜」


「あ、寝坊助のガキは、満額、騎士になってから返してもらうって言ってたぞ」


リュウノスケの言葉に、セラが「何で!?」と叫びながら、膝から崩れていった。


「まあ、嬢ちゃん。そんな湿気た面すんな。寝坊助の言う通り、また何かで返しゃいいんだよ」


「……はい」


カトレアは、自分の剣を慎重に手に取った。


(騎士になったら、絶対に何かしよう)


心の中で近いながら、マジマジと剣を見ていると、カトレアはある物を見つけた。


それは持ち手と鍔の間に嵌められていた。


「これ……、『氷』の魔法鉱石?」


形状は変わっているが、その透き通るような輝きは間違いなく、魔法鉱石である。


「あ? 待てよ……、俺のには、『火』のヤツが付いてる」


セラの剣も見れば、同じような場所に、『風』の魔法鉱石が付いていた

これはどういうことかと、カトレアは、リュウノスケを見た。


「元々、お前達が取ってきたのだ。餞別と思って受け取っとけ」


「……リュウさんがサプライズって、ちょっと気色悪ぃな」


「クソガキ、お前のだけ返せ。剥ぎ取ってやるよ」


大剣を取り合う2人を、遠巻きに見ながら、カトレアは魔法鉱石を撫でた。


『朝露の木』から落ちてきた魔法鉱石。

これを見るだけで、あの時の苦労も感動も思い出せる。


「これって、結局、あるとどうなるんですか?石のまま持ち歩くのと違うんですか?」


セラは、その大きな瞳に、不思議そうに魔法鉱石を映した。

彼の疑問に、カトレアは自分の胸元のリボンを例に説明する。


「このリボンみたいに、魔法鉱石を加工して作られた物は、より、持ち主の魔力を増幅させるのよ」


行商人のトトから貰った青色のリボン。

実はこの刺繍糸に、魔法鉱石が混ぜこまれていたのだ。

カトレアが『ヨルドの樹海』で、魔力を使い果たしても、魔法を維持できたのは、リボンが魔法鉱石の効果を発揮したからである。


ただ、魔法鉱石の加工物は、値段も高くなる。

それをサービスでというのは、金にこだわるリュウノスケらしくない行為である。


それを言ってしまうと、ダンデの二の舞になる。


カトレアとセラは、素直に礼を述べる。


「リュウさん、ご好意ありがとうございます」


「リュウさん、ありがとー」


リュウノスケは、少し照れくさそうに頬を掻いた。

それに対して、ダンデはまた、「気色ワリィ」と呟いたのは、カトレアの心にしまっておくことにした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ