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第1話 少女から乙女へ

 冬の寒さが残る季節。


 ヒンヤリとした風を受けながら、カトレアは、白馬に乗って王都を目指していた。


 あの、ヨルドの樹海から6年。


 カトレア・クラークは、美しい乙女へと成長を遂げた。





「御機嫌よう、リュウさん」


 カトレアが訪れたのは、リュウノスケが営む刃物屋。6年前からこの店は、カトレア達の集いの場と化している。


「嬢ちゃんか。野郎ふたりは、まだ来てねーぞ」


「あら、セラは寝てるとして、ダンデはどうしたのですか?」


「果物屋の婆さんが、包丁研いで欲しいとかで、今行かせてんだよ」


 リュウノスケは、表じゃ邪魔になるからと、店の奥にある作業部屋に入れてくれた。


 カトレア達があまりにも来るものだからと、初めて入れてくれた時の、彼の渋い表情は未だに忘れられない。


 リュウノスケが提示した、魔法鉱石3種類持ってこいという条件。


 これを大目に見てではあるが、クリアしたダンデは、無事『刃物屋 リュウ』で、働けるようになった。もちろん、剣を作ってもらうという約束も含めてである。


 仕事を覚えるのが早い上に、顔も広いダンデのおかげもあり、売上も上々らしい。

 リュウノスケは、素直に認めたがらないが、仕事を任せるくらいである。彼なりにダンデの事は頼りにしてるのだろう。


「戻ったぜ、リュウさん。ったく、人使い荒いんだからよ。おっ、カトレア。もう来てたのか」


 帰ってきたダンデは、仕事道具を机に置き、肩を回しながら、椅子に腰掛けた。


 すっかり青年へと成長したダンデは、とっくにカトレアの背を越してしまった。

 仕事柄だろうが、筋肉も程よくついており、羨ましく思う。


「セラの奴、来てねえのかよ」


「さあ、寝てるんじゃないかしら? 一応、行くとは手紙で伝えたんだけど……」


 そう、2人で噂をしていると、店のベルがチリンチリンと音を立てた。


「こんにちは〜。カトレアさん達いますかー?」


 表からセラの声が聞こえた。

 思ってたよりも早い到着に、カトレアは驚く。


 セラは、勝手知ったる風に作業部屋へとやってきた。


「二度寝しそうだったんですけど、流石に今日は頑張っておきました」


 そう言って、セラは眠たそうな目を擦る。


 昔よりも更に美少年に磨きをかけたセラだが、中身はあまり変わっていない。


 とはいえ、頑張って起きたというのだから、今日の予定は、彼なりに大事だとは思ってくれてたのだろう。


「俺は寧ろ寝れなかったけどな」


 そう言うダンデ目には、確かに隈ができていた。

 その顔に、カトレアは思わず笑ってしまう。


「フフッ、ダンデは念願叶ってだものね」


 ダンデの念願。

 そして、カトレア達の騎士に向けての第一歩。


 今日は、3人の剣が完成する日である。


「でも、セラはまだいらねえだろ? 」


 騎士になるためには、ヴィストン学園の騎士科に入る必要がある。


 枠は、原則15歳以上を対象に、推薦と一般がある。


 前者は、家柄と資産重視で、騎士の家系や位の高い貴族が優遇される。更に、高い入学金も必要だ。


 では、後者はといえば入学金は必要ない。

 ただし、剣を用いた実践式の一般試験がある。その為に、試験を受ける者は、最低限、剣を1本用意しなければならないのだ。


 ちなみに、15歳を迎えたカトレアとダンデは、一般の枠で入学を狙っていた。


 しかし、セラはまだ13歳である。

 年齢を満たしていないのだから、すぐに剣は必要無いはずだ。

 

(単に、同じ日に欲しかっただけかしら?)


 だとしたら可愛らしいと、微笑ましく思っていたのだが、セラの口から予想外の言葉が飛び出る。


「僕も、今年受けるからいりますよ?」


「はぁ!?」


 カトレアとダンデは、口を揃えて声を上げた。

 当の本人は、キョトンとしている。


「だって、()()ってだけでしょう? 一般入学でいい成績を取れば、受かると思うんですよね。僕強いし」


 このような事を、本当の事として口にしているのだから、彼は怖いのだ。


(本当に行く末はどうなるのやら……)


「でも、無理して今受けなくても、貴方なら推薦で、それこそ楽に受かるんじゃないかしら?」


「え〜、そんなの待ってたら、2人と離れちゃうじゃないですか。 そんなのつまんないですよ」


 セラは、唇を尖らせて言った。


 それだけの理由で、飛び級で試験を受けようと思う彼に、カトレアは、呆れつつも少し嬉しく思った。

 ダンデも満更ではないのか、「馬鹿だな、テメェは」と言いながらも、若干照れている。


「おい、ガキ共。お喋りはそこまでにして、ちょっと来い。目当ての物、出来上がったぞ」


 リュウノスケの呼び掛けに、カトレア達は椅子から立ち上がった。

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