表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/64

第14話 若き天才

 カトレア達が風の魔法鉱石を求めて歩いた先にあったのは、ひとつの洞穴だった。


「セラ、もう一度探してもらえるかしら?」


「はい。我が身に宿りし魔力よー、石の所に連れてってください」


 セラが唱えると、緑の光は洞穴の中へゆっくりと向かっていく。

 カトレア達は、その後を恐る恐るとついて行く。幸い、緑の光が道を照らしてくれている為、光を付ける必要は無いが、足元はあまり良くない。

 躓かないよう、慎重に歩いていると、ダンデが急に足を止めた。


「ん? おい、奥からなにか来るぞ」


 ダンデと同じように、カトレアも耳をすませてみると、確かに、地面を蹴る音と、ハッハッハっと、獣の息遣いが近づいてきている。


「ガウッ! ワンっワンっ!!」


「しまった! ここは野犬の縄張りだ! 逃げろ!」


 ダンデの言う通り、大きな野犬が3匹カトレア達へと向かってきていた。 カトレア達は、急いで踵を返し、出口へと走る。


「これ以上刺激して怒らせると厄介だ! 一旦出て、木の上に逃げるぞ!」


「わ、分かったわ! ……ちょっと待って! セラは!?」


 セラがついてきていない事に気が付き、足を止め振り返ると、彼は、何故か逃げる様子もなく立ち止まっていた。


「おい、バカ!! 何してんだ逃げろ!」


 慌ててダンデが引き返すが、野犬達はもう既に近くに迫っていた。


(ここは、私の魔法で……!)


 カトレアは、両手を構えて呪文を唱えようと口を開く。


 しかし、それより先にセラが鞘から剣を抜き取り、野犬達に斬りかかった。

 セラは、1匹の野犬の頭を剣で叩きつけると、すばやく身を翻し、後ろの野犬の首に刃を振り当てる。そして、上から襲い掛かる最後の1匹を軽い動きで避けると、野犬の腹に剣の柄を入れた。

 野犬は、キャンっと短く鳴くと、そのまま地面に倒れた。


「セラ、貴方……」


「あ、大丈夫ですよ。これ、刃の部分潰してあるので、斬れてはないと思います。」


「そういう事では無いのだけど……」


 野犬の群れを1人で片付けてしまったセラは、何でもないように、服のホコリを払っている。

 隣にいるダンデを見ると、目の前の出来事に、あんぐりと口を開けていた。


「お前、怪我はねえのかよ? 何で逃げなかったんだ?」


「だって、逃げたらまたここまで来ないといけないじゃないですか……。なら、倒しちゃった方が早いですし。もちろん、怪我はしてないのでご心配なくです」


 セラは、そう言って、さっさと、緑の光へ歩いていく。慌ててカトレア達も、倒れている野犬を跨いでその後を追った。


 洞穴を少し歩くと、緑の光がある場所で止まった。そこは、瓦礫が積み重なった場所だった。ダンデが瓦礫をどかすと、下には、透き通る様な輝きを放つ、緑の石が落ちていた。


「これが、魔法鉱石……」


「資料でしか見た事がなかったけど、本物はこんなにも綺麗なのね」


「何か、左手がすっごくゾワゾワします。目の前にあるからですかね?」


 三者三様に感動しつつ、ダンデが魔法鉱石をリュックに仕舞う。すると、案内の役目を終えた緑の光が、スーッと消え去った。


 緑の光が無くなった為、ダンデが持ってきた小さなランプで道を照らしながら、カトレア達は元来た道を戻った。

 野犬達が再び襲い掛かる可能性を考え、何時でも魔法が出せるよう構えていたが、野犬達の姿は無かった。恐らく逃げたのだろう。


 洞穴を抜けると、セラがすぐにその場に腰を下ろした。


「ふあぁ、もう昼寝の時間かもです。ダンデさん、おぶってください。」


「はぁ? 自分で歩けよ!」


「えー、せっかく、魔法鉱石見つけたのに?しかも、野犬も倒したんですよ? ちょっとくらい労わってくださいよ」


 セラの言い分に、ダンデは、グヌヌ……と唸った。

 

「チッ! オラッ、とっとと来やがれ」


 渋々と折れたダンデは、その場にしゃがみ、おぶさりやすいように、背中を丸めた。それを見たセラは、いそいそとそこに乗っかった。


「ダンデ、荷物持ちましょうか?」


「フンっ! こんくらいどうって事ねえよ。ほら、野犬が戻ると面倒だから早く行くぞ」


 子ども1人とはいえ、重たいはずなのだが、ダンデは、スタスタと樹海を歩いていく。


(ダンデは、力持ちなのね)


 まだ、小さいけれど頼もしいダンデの背中を見ながら、カトレアも置いていかれないよう、いそいそと歩いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ