第12話 いざ、ヨルドの樹海へ
「もうちょっとで、村に着くぞ」
カトレア達が出発してから30分。思っていたよりも早く、目的の村が見えてきた。
ポニーはダンデが乗っている為、荷台にはカトレアとセラが乗っていた。
ポニーをは初めて見た時はこんな小さい子で大丈夫かと思ったが、元々は隣国にいた特殊な種で、小さくても力持ちなのだという。
とはいえ、運搬用の荷台のため、乗り心地が非常に悪く、カトレアは、腰を痛めそうだった。それに加え、膝にはスヤスヤと眠り続けるセラの頭がある為、下手に動く事が出来ない事が余計に辛い。
(こんな事で疲れるなんて、まだまだ修行が足りないわね)
「おい、そろそろそいつ起こしとけよー」
「分かったわ。ほら、セラ起きなさい。もうすぐ着くわよ」
カトレアが揺するが、口をムズムズと動かしたが、起きない。仕舞いには、イヤイヤと甘えるように、カトレアの腹に顔を押し付けてきた。
「ダメね……、困ったわ」
「どんだけ寝汚えんだよっ!」
痺れを切らしたダンデは、ポニーをその場で停め、セラを荷台から放り投げた。
「ふがっ! あれ……、ここは?」
「漸く起きたか、この野郎ぉ……。もう、村に着いたら、そっから歩きだからな?」
「えー、そんなぁ。ダンデさん、おぶってくださいよ。僕、まだ7歳ですよ?」
「うっせえ! 俺だってまだ9歳だよ!」
ダンデが目くじらをたてて怒るが、セラは悪びれもしない。この調子でダンデが怒り続けると、彼の体力が樹海に行くまでに無くなってしまう。
カトレアは、まだ文句を言ってるセラの口を手で覆い、荷台に乗せた。
「もうすぐ着くのでしょ? ほら、行きましょう?」
「チッ、分かってるよ!」
怒り足りない様子のダンデだが、何とか堪えて、再びポニーを進ませ始める。
前途多難ではあるが、上手くいくのか、カトレアは頭が痛くなった。
ポニーと引車を預け、村からしばらく歩くとヨルドの樹海の入口に辿り着く。
木々が鬱蒼と茂った樹海は、かなり規模がありそうだ。そのまま入ると最悪遭難してしまうだろう。
「念の為、買っておいてよかったわね」
カトレアは、リュックの中から『ヨルドの樹海用 位置情報自動探知効果付き地図』を取り出す。
「便利な地図があるってのは聞いてたけど、実際に使うのは初めてだな」
「そうね、そもそも、使う機会がなかったわ」
この『位置情報自動探知効果付き地図』とは、地図に土の魔法が掛けられており、それにより地図上に現在地が表示される効果が追加された物である。主に、山や森に入る際に重宝される地図で、カトレアとダンデは、ヨルドの樹海に行くと決めたその日に魔横丁で購入した。
地図を作成した先人と、このような便利な効果を付けてくれた土の魔法士には感謝である。
「確か、開くだけで良かったのよねーーキャッ!」
地図を開くと、黄金色の粉塵がカトレアに降り掛かる。粉塵は、カトレアの体に付着すると、そのままスーッと消えていった。
「あー、地図に赤丸が浮かんでますよ? 」
「俺らに粉が掛かんなかったって事は、カトレアにだけ効果が付いてんのかもな」
粉塵にむせているカトレアを尻目に、2人は冷静に地図を確認している。こんな事なら、地図を開いた時にどうなるか、聞いておくのだった。
「ケホケホっ、とりあえず、入りましょうか。ケホッ」
地図を片手に、カトレア達はヨルドの樹海へと足を踏み入れた。