表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/20

プロローグ

 濡れた髪を海風になびかせ、少女は荒波の打ち寄せる断崖の上で、遠くの空を見つめていた。


 視線の先には大きな月と小さな月がふたつ並んで浮かび、うす水色の空に溶けてしまいそうなほどぼんやりと輝いている。


 そのふたつの月のわずかな隙間に向かって、黄金色に輝きながら羽ばたいていくものがあった。


 しかし少女の瞳には、ふたつの月も金色に羽ばたく何かも映ってはいなかった。


『あれは何だったんだろう』


『こんなこと言ったって誰も信じてくれないに決まってる』


『だいたい竜ってなによ? そんなのありえない』


『わたしだって信じられない…』


『でも…』


『それでも、あれが夢だったはずなんてない………』


 少女は首から下げたネックレスをはずした。


 細い鎖の真ん中には金で装飾された緑の石のペンダントが通されている。


 その石は太陽の光を受けてみずから輝いているように見えた。


 少女はしばらくその石を見つめていたが、ゆっくりと目を閉じ両手で優しく包み込んだ。


 手のひらにほんのりと温かみを感じた。


 そして指の隙間から緑の光があふれ出していることに気がつくまで、時間はいらなかった。


 ふたつあった月はひとつに重なり合い、白くくっきりと輝きはじめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ