第7話『迫られる数多の選択』
僕の部屋の人口密度が高い。
部屋の大きさは八畳。別にリビングにもテレビは置いてあるので、ゲーム機さえ持っていけばできる。
だが、今の僕にそんなことを提案する余裕はない。
「こ、康太郎! なんのゲームするか決めてなかったよ! どうするの!?」
「そういえばそうだな。栞田が好きそうなものを選べ」
「え、ちょっ!」
それだけ言って、千聖の元へと行く康太郎。
(友達より彼女を優先するのか! これだからリア充は!)
内心で文句を言いつつ、あかねさんのような初心者でも楽しめるゲームを探す。
この中でゲーム未経験者はあかねさんだけだと思う。『女神様』がゲームをしている姿を想像できないしね。
千聖も康太郎もゲームが好きで、よくゲームセンターでデートするらしい。
康太郎の得意なゲームのジャンルはFPS。ちなみに千聖はこう見えて、頭を使う戦略系のゲームが得意だったりする。
「どれにしようかな……?」
テレビ台に並べられたたくさんのゲームソフトを見ながら、僕は小さく呟いた。
FPSも戦略ゲームも、初心者には難しいと思う。というか、戦略ゲームなんて僕の家にはないんだけどね。
「なぁくん、どうしました?」
「あ、いや。どのゲームをしようかなって。あかねさんが楽しめそうなのを探してるんだけど、中々見つからなくて、はは」
あかねさんには夢中になるくらい、ゲームを楽しんでもらわないと、こちらとしても約束を聞き出せない。
だからこそ、実に悩ましい。
「そういえば、あかねさん。あの二人の前で僕のこと『なぁくん』って呼ぶの、躊躇わないんですか?」
「もう結婚のこともあの二人にはお話したので、呼び方くらい別に隠す必要はもうないかな、と」
「お話っていうか、あれは勝手にあかねさんが口走っただけだよ……」
「既成事実は大事ですよ、なぁくん」
結婚どころか、まだお付き合いもしていないのに、僕の知らないところで話がかなり進んでいる。
というか、あかねさんが進めている……。
「もしかして、僕のお父さんも知ってる感じ……?」
「え? お父様から聞いてないんですか?」
(なに、その言い方。もしかして父さん知ってるのか……)
「お父様と叔母様、あとなぁくんのお母様からも了承はいただいてます」
「げっ。母さんまで……? なんで勝手にそんなとこまで行ってるんだ……」
父さんにはあとで連絡しておくとして。
僕の母さんまで了承するとは。十年前に家族ぐるみで何かあったのだろうか。
やはり、仮に十年前の約束が『結婚』だったとしても、それはあくまで『小学生がふざけ合って交わした約束』に過ぎない。それを僕の母さんが鵜呑みにするはずがない。
「あかねさんのお父さんは……?」
「もちろん了承をいただいていますよ」
「Noぉおおおおおお!」
気になる。十年前の約束が気になって仕方がない。
思わず、叫んでしまった。
「いきなりどうした、夏斗」
「い、いや別になんでもないよ」
突然叫んだせいで、康太郎に怪訝な表情を向けられた。
僕の返答に「ふーん、そうか」と答えると、康太郎はすぐ千聖の方へ向き直った。
さすがに康太郎とはいえ、あかねさんとのこれからについては相談できない。
それに、もしかすると父さんは十年前の約束を知っているのかもしれない。
もちろん父さんが知らない可能性もあるので、プランAはこのまま決行する。
――よし、なんのゲームにするか決まったぞ。
テレビ台からソフトを取り出し、それをゲーム機に入れた。
「みんな、できたよ」
もちろん四人に対応してるゲームを選んだ。ゲームのリモコンはちゃんと四つある。
なんで四つあるのかというと、元々うちには二つしかなかったのだが、康太郎が去年の僕の誕生日にプラスで二つ買ってくれたのだ。
おそらく僕の家に彼女を連れ込み、一緒にゲームをする将来を見越しての布石だったんじゃないかと、今になって僕は思う。.....リア充爆発してください。
くれたリモコンが二つなのは康太郎の良心か何かだと思う。知らないけど。
とはいえ、こうして四人でできるのも、康太郎が買ってくれたおかげだ。僕としても感謝はしている。
とりあえず僕はテレビの電源をつけ、ゲームで遊ぶ準備を進めた。
僕が選んだゲーム。そう、それはス〇ブラだっ!