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第3話『憂鬱な月曜日に祝福を』

 月曜日。

 憂鬱な一週間の幕開け。僕の通っている高校は私立だ。お金はかかる上に、偏差値もそれなりに高い。

 入るのだって苦労した。別に将来の夢なんて立派なものは持っていない。ただ家から近いからという理由だけで今の高校を選んだ。


 最初はどうせ一人だし、一人暮らしを始めてみようかと思ったが、そんな簡単にこの家を手放す気にはなれなかった。それに今は週に一度帰ってくる叔母さんの家でもある。


 縛り付ける気は無いと、父さんも叔母さんも賛成してくれたものの、結局一人暮らしはやめることにした。


 学校から近いと言っても、電車で二駅。十分程度だ。

 そこから徒歩五分と言ったところか。電車に同じ高校の制服を着ている人はちらほら見かけるが、僕の数少ない友人はこの電車に乗らない。


「はぁ……」


 電車に揺られながら、僕は無意識にため息を吐いていた。

 カバンからスマホを取り出し、時間を確認しようとロックを解除した。

 見ると、叔母さんからメールが来ていた。


(酔いそう……)


 乗り物酔いしやすいタイプなので、基本的に電車で小説は読めない。多分タイトル読んだだけで吐いてしまう気がする。


 とはいえ、叔母さんからのメールが気になるので、つい開いてしまう。


『聞いたよ。なつくんオタクやめるんだってね。ぷぷ、あれだけあたしの言葉は無視してたのにね。どういう風の吹き回しかな〜』


 この人……。確かに叔母さんに言われた時は断っていたけど、だからといってあかねさんに言われたからではない。

 何度も言うが自分の中で見切りがついただけだ。そろそろ将来のことも真面目に考えないといけない時期だしね。


 まだ文章の続きがあるようだ。

 画面をスライドさせようとしたけど、酔いが強くなってきたので、深呼吸して一旦読むのをやめる。そして窓から空を見た。

 こういう時は遠いものを見るといいらしい。


 僕の気分は沈んでいるが、空はこれでもかと言うほど晴れている。

 白い雲を見て、ある人が脳裏を過ぎる――あかねさんだ。


 あの人の真意が未だに掴めない。僕のことを好きだと言ってくれているが、それすらも謎なのだ。

 何度訊いても十年前の約束は教えてくれない。


 それでも、料理は美味しいし、家事は完璧にこなしてくれている。


(今日も来てくれるんだよね……あかねさん……)


 なんて考えていると、酔いが少しだが弱まっていた。叔母さんからのメールももう少しで読み終わるので、さっさと読み切ってしまう。

 覚悟を決め、僕はスマホの画面に視線を戻した。


『それと、あかねちゃんに言われたフリーマーケットの申し込み、しておいたからね。時間的にも出店募集数的にも、ギリギリセーフで登録できたみたい。

 出店料金は売上から貰うから!


 そ・れ・か・ら、可愛い妻を困らせちゃダメだからね!』


 最後の一文が妙に腹立たしい。叔母さんまで妻とか言っているのか。

 結婚できる歳でもないし、する気もないってのに。


 そろそろ目標の駅に着くので返信はせず、一先ず無視することにした。電源を落として、カバンの中のポケットに入れる。


 改札を抜け、駅前に出ると数少ない友人が僕を待っていた。


「おはようさん、夏斗」

「おはよー、なつっち!」


 腕を組みながら僕に挨拶を投げかけたのはクラスメイトで友人の結城(ゆうき)康太郎(こうたろう)。その隣で体を大きく使って手を振る低身長の女の子は康太郎の彼女の姫野千聖(ひめのちさと)だ。

 康太郎とは高校一年生からの友人だが、千聖とは二年生でクラスが同じになってから仲良くなった。


「ごめん、お待たせ」

「どうした? 暗い顔して」

「いや、別に大したことじゃ――」

「ない、か? ばかか夏斗は。そういうやつほど何か抱えてんだぜ?」


 僕の前を歩いていた康太郎は振り向くと、僕の内心を見透かしたように強く言う。


 康太郎はクラスでもよく目立っていて、男女共に人気が高い。それもおそらく、こうやって色々と察しがいいところも関係しているんだと思う。


「なつっち、もしかして振られたの?」

「なんで僕が誰かに告白した前提なの! まず好きな人もいないって!」

「ありゃま、違った」


 僕のことをなつっちって呼ぶのは千聖くらいだ。最初の頃は距離感を掴めずにいたが、康太郎と同様、話しているうちに自然と仲良くなった。


 さっきも言ったが、康太郎と千聖は付き合っている。バカが付くほどのカップルだ。

 そんな二人は、よく僕の心配をしてくれる。


「本当に大丈夫だから。二人ともありがとう」

「なつっちがそういうならこれ以上の詮索は良くないね! よし、せっかくだ! こういう気分が沈んだ時はゲームをするべし! 今日の放課後はなつっちの家でゲームだ!」

「そうだな。ちーの言う通り、今日はゲーム三昧といこう」


 バカップルの間で勝手に話が進められている。なんで慰めているやつの家に押し入るんだよ。


「はぁ、別にいいけど」

「やっほー! なつっちの家でゲームだー!」

「ちー、テンションが高いぞ」


 喜ぶ千聖の頭を撫でながら、康太郎は申し訳なさそうに表情をこちらに向け、「すまんな」と視線にメッセージを込める。


「もし何かあれば俺が相談に乗ってやるから。今日は千聖の言ってる通り、羽目を外して一緒にゲームしようぜ。その方が気分も上がるだろ?」

「そうだね。どうせ家に帰っても一人だ、し……」


 何か忘れているような。そんな気がしてきた。

 家に帰ったら一人? あれ、本当に一人か?

 確か昨日から僕の家には家政婦さんが来るようになったんだよね?

 しかも家政婦というのはあかねさんのことだ。もしあかねさんがうちの家政婦になったって学校中にバレたら……。


 とはいえ、二人は僕のために遊ぶことを提案してくれた。断るのもなんだか、気が引ける。

 とはいえ、あかねさんに今日は来ないでなんて言えない。


 というか、あかねさんの連絡先を知らないから伝えようがない。どうすればいいのだろうか……。

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