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第15話『アルバム』

「えっと、十花ちゃん何かな」

「別に」

「冬音も僕に何か用……?」

「別に何も無いよ、お兄ちゃーん」


 買い物から帰ってきた。

 あかねさんと千聖は叔母さんの手伝い。

 それを他所に、ソファーでネット小説を読む僕をジーッと眺めている二人の少女がいる。


 一方は、僕の通う高校で学内三大美女の一人とも謳われる千聖の妹、十花。

 もう一方は、僕の妹の冬音。中学三年生だが、どこか大人びていて、十花にも引けを取らない端整な顔立ちをしている。


「十花ちゃん十花ちゃん。これ見て〜」

「なにそれー」


 なんやかんや言って、十花はすぐに冬音と仲良くなっている。

 男嫌いなだけで、性格がひねくれているわけではないようだ。実際こうして年下と仲良く話しているわけだし。


「お兄ちゃんのアルバム」

「ぶふっ!」


 僕は思わず吹いてしまった。

 冬音がどこから持ってきたか分からない僕のアルバムを、十花に見せている。


「ちょ! 冬音! 勝手に僕の部屋に入ったのか!」

「可愛い冬音に見られて困るものでもあるの? それとも……」

「あー、分かった! 好きにしろ!」


 冬音の笑顔が怖い。

 突然帰ってきて、僕と同じ高校に通うと言ったり、大好きだとか言って結局罵ってきたり。冬音の考えていることが全く読めない。


 もしかしてツンデレ? いや、順番がおかしい。デレてからツンって、それツンデレなのだろうか。


 そんな意味不明なことを考えている間に、冬音はアルバムの中を十花に見せていた。

 僕の幼少期から中学卒業までが載ったアルバムだ。中学二年生からは黒歴史しかないけど多分時間的にもそこまでいかないはずだ。


「うわ、なんで夏斗眼帯なんてしてんの?」

「ほんとだー! お兄ちゃん眼帯してる!……キモ」


 アルバムをいきなり最後らへんから見始めるやつなんていますか。冬音の語尾の小さな呟きは一先ず無視しておく。

 それよりも、十花に僕の黒歴史が見られてしまった。最悪だ。穴があったら入りたい。


 ちなみに僕の呼び方は、スーパーの帰り道で決まった。

 千聖の言い聞かせにより、キモキモ弁当というあだ名はなくなったものの、代わりに呼び捨てで呼ばれるようになった。

 先輩だというのに……。


「その時たまたま目が腫れていてね、はは」

「でも中学二年生の間、ずっと眼帯してるけど?」

「……キモ」


 正直に打ち明けよう。僕は中学二年生の時は、重度の厨二病を患っていた。

 どちらかというと寡黙キャラを通していたので、周囲に変なことをベラベラと言っていたわけではない。

 ただ謎の行動をしばしば……いや、かなりやっていた。


 眼帯もその一部だ。たまたまAmazonで見つけ、代引きで買った懐かしくも恥ずかしい思い出がある。


 そんな記憶はあるのに、大事な記憶は消えていると来た。僕の記憶力は本当に当てにならない。


 と、そんなこんなしているうちに、食卓に食材が運ばれてきた。肉に野菜、他にもたくさんの具材がお皿の上に綺麗に並べられている。


「もう少しで完成ですよ、三人とも。それと冬音ちゃん、私もあとでなぁくんのアルバム見てもいいですか?」

「うん! いいよー!」

「ダメダメ! あかねさんだけには本当に見せられないから!」


 何故か分からないが、あかねさんだけには死んでもアルバムを見せたくないと思う。


「なんでですか、なぁくんの意地悪」

「拗ねてもダメなものはダメだって!」

「もういいです、あとでこっそり見ますし」


 そう言って、少し頬を膨らませると、あかねさんはもう一度キッチンの方へと戻っていった。


 大きな鍋を運ぶのは僕の仕事だ。食材が運ばれてきてから、五分後くらいに僕の仕事がやってきた。



「何年ぶりかな! こんな大人数でご飯なんて!」


 席に座ると、叔母さんが嬉しそうに声を上げた。

 それから、叔母さんの合図でみんなが手を合わせた。


「遠慮せずにいっぱい食べてね!――いただきます!」


 叔母さんの声に、僕たちも声を合わせた。


 それにしても今気付いたけど、この中に男は僕だけ。しかも中には全生徒が認める三大美女の二人もいる。

 ……なんか、居た堪れない。

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