第3話 パーティー
「レイナはどうしてギルドで一人でいたの?」
ふと思い出して聞いた。
レイナがちょっと俯いて呟く。
「私が一人で抜けちゃったの。パーティーのメンバーはみんないい人たちだったんだけどね」
「どうして?」
レイナはちょっとバツが悪そうに言った。
「みんなは慎重な人たちで、思うようにレベルが上がらなかったのよ。それで、気づいたら私ばっかりレベルが上がってて」
レベルの上がる元となる『存在力』は、魔物を直接倒した人しか得られない。レイナがパーティーメンバーを庇って魔物を倒したとしたら、レイナと他のメンバーのレベル差は開いていく。
「私は早く2層に行きたいって思ってたんだけどね、みんなはまだ十分なレベルじゃなかったから」
それでお互いに申し訳なくなってギクシャクしてしまい、レイナが抜けたということらしい。
まあ、よくある話だ。パーティー内でレベルや技術に差がありすぎるとパーティーを組む意味は大きく減ってしまう。もっとも、僕はほとんどパーティーを組んだことがないので詳しい事情とかは知らないけど。
こういう時なんて言ってあげればいいんだろう。
かけるべき言葉が見つからずしばらく歩いていると、進む方から微かに物音が聞こえた。
「1体敵だ。レイナ、今度は僕がやるよ」
「わかった」
またドブネズミだ。あんまり装備を汚したくないので、近くに他の敵がいないことを確かめてから離れた位置にいるドブネズミに剣をぶん投げた。
剣は剣先をドブネズミの頭に向けたまままっすぐ進んでいき——
ドブネズミの頭に突き刺さり、ドブネズミは絶命する。
「よし、死んだな」
「……」
「どうかした?」
「……いやいや、…………ええー、なにそれ」
レイナの方を振り返ると、レイナはちょっと引いた様子でこっちを見ていた。なんでだ。
「なんかまずかったかな?」
レイナは少し苦笑いした。
「悪くは無いけどさ、凄いけどさ」
「?」
「いや、なんていうか……」
「なに?」
ドブネズミに刺さった剣を右手で引き抜く。
「カイ、あなたちょっと変わってるって言われない?」
……。
「言われたことないな」
しばらく剣を投げるのはやめとこう、と真剣な表情で考えている僕を見たレイナは、なんだか楽しそうに笑っていた。