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はじまりの一歩

 しかし、なんだろう? ミッちゃんに、何か……こう、違和感っていうか、近視感。


 これがデジャビュ?


 ジーーーーーっと見つめる。

 マジマジ…マジマジ……マジマジマジ……………マジぁチアチアッチチ!!!!!

「目ぇええがああああ!!! オレの目ぇええがああああ!!!」「どうした、ムスカ!?」「いや、オレ、スミスー!」


 オレの目が~! ミッちゃんと目が合うと、神々しさで、目玉焼きのように焼かれる!


「…これがデジャビュ? じゃあないわ!!

このやり取り前々回もしただろ!? ちゃんと、学習せんかい」


 ドワーフ日本人爺の突っ込みがはいる。そういえば、あの時『属性』がどうたら先輩勇者モブたちが言ってたではないか! 大問題だ、俺は焦りだした。


「どうすれば、いいんだ! ミッちゃんが光りものなせいでオレとは相容れない。ミッちゃんと目が合う度これじゃあ、即解散だ!! スピード破局! まさか、二人の間に、オレの健康上の問題が立ちふさがるなんて…」


「人を、魚みたいに言わないでください! 解散なんてしたら、今までの話は一体何だったんですか…。あとスミスさんの健康はそれ以上悪くなりません、そこはご安心ください。

浄化きれいになるだけです。」


「バッカ、安心できるかー!! いいか、奇麗なゾンビは死んだゾンビだけ! 塵になって掃き清められた奴だけ! 心機一転、改名した途端にただの埃になるなんて、冗談じゃねえぞ」


 そうは言っても、ほかに頼れる奴なんていない。

「!! そうだ。教えて、薄いタケルン。年の甲でこの光もの、どうにかなんないの? さっき、オレの世話も喜んでいたしますって言ってたよな。今さらなかったことに以下略~。そもそも、属性ってなんなのよ」


「俺は、臼井うすいたけるだ!! 変なあだ名をつけるんじゃない。あと、そこはかとなく、イントネーションが失礼! なんか世話する気ゼロになってきたぞ」


 そう言って、ドワーフ日本人爺が太い腕でオレの頭を掴んでくる。ちょ、痛いし、頭蓋骨がミシミシ嫌な音を立ててる。ほんのちょっとふざけただけなのに!

 

 これだから昔の老人は、頭が固すぎる。そして、オレの頭も少し柔らかすぎる。オレの肉体は心配事だらけだ。むしろ、安心できる部分がない。


「そんな殺生な! マジすいません、東北訛りがでたようです。まだフサフサでした。」

 

「まあ、今回だけだ。仕方ない、助けてやろう。ほら、これ着けとけ。俺が鍛冶場でいつも使っとる一品だ。少しサイズが大きいかもしれんが、頑丈だ。長さの調節は自分でしろ。」


 タケルンはそう言って、ため息をつきながら、オレの頭から手を離す。そして、おもむろに懐から、アンティーク風のゴーグルを取り出し投げてよこす。


 おお、これはっ!!! なかなか、かっこいい。オレの中二魂が疼くぜ。


 形は、バイクやスノボ用の両目丸ごと覆うバブルタイプではなく、レンズが2つある水中眼鏡タイプだ。レンズの色はスモークだ。

 

 真鍮製のフレームは漆黒で、なにか銀色の文字がびっしり刻まれている。

 目に接する部分と後ろのベルトには、柔らかい動物の皮が使われている。

 瞳部分のフレーム横には、鈍く光る歯車が数個付き、レトロにも近未来的にも見える不思議さだ。

 

 まるでスチームパンク映画の小道具のよう。早速、ベルトを調節して頭に装着してみる。


「世界が変わる、モノクロになったぞ。あっ、ミッちゃんの光の波動が消えてる! 目が焼けない。すげーーー! 何コレ、魔法? かっけー」


 意外と目に負担もこない。サングラス代わりにも使えそうだ。


「いいだろ! 俺が作ったんだ。それはブルーライト70%カット、なんと紫外線は99.9999%もカット出来とる。右側の歯車を回すと、拡大鏡として最大2倍まで大きくすることができる。左側の歯車を回すと、レンズの可視透過率(明るさ)とレンズカラー(見た目)を変えられる」



「スミスさん、なんだかすごく怪しい人みたいです…」「変質者感が凄いな、比例してゾンビ感は減ってるが」「この異世界、ブルーライトカットに、はたして意味はあるのでしょうか」



 盛り上がる老人と中年を尻目に、ミッシェル達は若干引き気味だ。


「まだあるぞ。目のフレーム部分回せるから、回してみろ」


言われた通り、両目のフレーム部分を回してみると…。


「えええええっ、目のフレーム部分が七色に光りだした!!」


 ランダムに色が変化していく。もの凄く派手だ。一気にスチームパンクからクラブのパリピに変身だ。発行色はなんとフルカラー!! 350色以上! なんて、無駄機能! この人、鍛冶場で一体何してんだろう。



「スミスさん、大道芸人さんみたいです…」

「あんなの、ダンジョンで着けたら魔物の恰好の餌食ね」「阿呆か」



「まあ、パリピ機能モードはおいといて。ねえタケルン、ミッちゃんの光カット機能に闇魔法とか、かけてあるの?」


 ワクワクしながら聞いてみる。やっぱ、この文字は呪文だろうか? 魔法はやっぱ、あったんや!


「いや、そんな特別な魔法はかけとらん。しいて言うならば、日食グラスの機能で減光フィルターを付けておった。いやあ、不要いらん機能かと思っとったが意外と役に立ったな。」


 なんだそれは、ミッシェルの光属性は太陽光的なアレだったのか!? 小学校で、「直接目で見ちゃいけません」って、注意されるやつじゃん。誰か必ず、日食を肉眼で見ちゃう馬鹿いるよな。


「光の属性は、もともと精霊や神にまつわるものだ。ごくまれに、人も持つことがあるがレアだな。

 逆に、魔物達は基本、闇属性だ。闇属性を生まれつき持つ人もいるが、これも珍しい。また、光属性は闇属性に対して強い。対して、闇属性は光属性に弱いが、地属性に対しては強い。人間は地属性だ。

 しかし、例外もあるし、種族など絡むと単純にはいかん」

 

「ようは、ミッシェルちゃんは地と光の2属性持ちだったんだ。お前さんは、天性のものかゾンビだからか闇属性のようだ。これ以上の属性についての詳しい話は、神殿の神官にでも聞け。どうせ神殿には、冒険者の転職儀式に行かなければならん。俺達も明日、新米どもを連れて神殿に行くつもりだった。」


 神殿がハローワークらしい。あんまり、生前の記憶から気は進まない。(ゾンビ的にも)しかし、冒険者には必要な場所らしい。


「ゴーグルありがとうございました。お代はいくらになりますか?」


 最初はゾンビ差別でムカついたが、結構世話焼きのいい人だった。オレは、頭を下げながらお礼を言う。


「代金はいらん、どうせ俺の中古品だ。餞別にくれてやろう。それより、神殿に行って冒険者として本当にやっていけそうなら俺の店に来い。武器なら大抵置いてある。自慢じゃないが、城下で一番でかい店だ。支度金あの大臣から貰ったんだろう。2人の武器を見繕ってやる。」


「おじさん、色々ありがとうございました。必ずお伺いします。その時は安くしてくださいね。」

 

 ミッシェルが太陽のような笑顔で、礼を言いつつ値下げ交渉をする。ゴーグル越しでも眩しい笑顔。なかなか、したたかな、しっかり者みたいだ。





 一旦ここでオレたち二人は、勇者たちとお別れだ。一緒に来た勇者たちもいづれ離れ、それぞれ別の道を行くだろう。また、いつか会い、助け合うこともあるかも知れない。そうなれば、いいなとちょっと思いながらオレは手を振った。


 横目に、ミッシェルを見る。そう思えたのは、きっと彼女のおかげだろう。感謝しつつ、オレたちの道を歩き出した。

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