第2話 ヘタレ
「先輩、クリスマスなんですが、わたしの家でパーティーしましょうよ」
わたしは電話ごしに先輩を誘う。先輩は無言のままだ。
「あれ、聞こえてますか?」
わたしはあえて先輩をからかうかのようにそう問いかける。
「……」
目標沈黙だ。先輩、ビックリしすぎて倒れちゃったかな?
「ああ、大丈夫ですよ。親ならその日はちゃんと仕事で外出中です」
「むしろ、もっとダメだよね、それ」
親にはちゃんと許可をとっていることは内緒だ。だって、そのほうがおもしろいから。
「手料理ふるまいますよ~。よかったですね、先輩。可愛い女の子とドキドキクリスマス。さらに手料理つき。いまなら手数料、ジャパンネット負担」
わたしはまくしたてる。ヘタレな先輩はこれくらいしないと、乗ってこないのだ。
「わかったよ」
先輩は渋々了解した。でも、どこか嬉しそうだった。
「ありがとうございます。先輩、大好きですよ。愛してます」
「おまえな。またそうやってからかって」
わたしは一呼吸おいて、少しまじめにこういった。
「からかってませんよ。本気です」
「ぐっ、切るぞ」
<ツーツー>
先輩は慌てて電話を切ってしまった。あいかわらずのヘタレだ。
でも、わたしはとても幸せだった。つい2か月前までは、この言葉をまじめに言うことすらできなかったのだ。それを言葉にして、相手に届けることができる。それはとても嬉しいことだった。
「先輩の本音も聞きたかったな~」
わたしは誰もいない部屋で、先輩をからかった。
<ブーブー>
携帯が鳴った。先輩からスタンプが送られたきたのだった。
それは可愛いクマが赤くなって、わたしが欲しかった言葉を届けてくれていた。
「I LOVE YOU!」と。




