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世界平和と宝石探し  作者: 月白 紫檀
第一章 隣村にて
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懐かれる体質

不意に視界の下で黒い何かが動く。


「ん?」


ふっと足元に目線をおとす。


「…え?」


そこには、全長1m弱くらいの小型のリザードがいた。


俺の視線に気づくと、ヤツはこちらの顔を見上げ、コクッと首をかしげる。


どうしたの?


そう聞かれている気がする。一見可愛らしい。だがしかし、相手はリザード。トカゲよりも大きい化け物だ。


俺は思わず一歩後ずさる。


すると、ヤツは距離を取られたことに不服なのか、一歩前進してくる。


再び俺が後退すると、ヤツはまた一歩前へ足を出す。


俺が背を向けないようにサササッと後ろへさがると、ヤツは()りずにタタタッ近づいてくる。


…これでは全くもって(らち)が明かない。


目線を他のリザード達に移すと、ヤツらは何やってんだ…とでも言っているかのような視線をこちらに向けている。


それは俺が聞きたいんだけど…


再度、視線を足元にいるヤツに向ける。そして、


「お前は何がしたいんだよ」


思い切って声をかける。言葉が通じるとは微塵(みじん)も思ってないけど。すると、ヤツは首を少し(かし)げた後、


「ギュッ」


と、返事が返って来た。俺に声をかけられたという事だけは理解したらしい。


でも、ギュッ、って言われても分かんないんだよなぁ…


「ギュッギュッ」


俺の靴をブニブニと踏んでくる。蹴っ飛ばしたりしようものなら反撃されそうなので、様子を見ることにした。


暫くして、突然ヤツは俺を見上げる。そして、


「ギュワ!」


「うわっ!」


突然大きな声で鳴く。俺は驚いて後ろに飛び退こうとする―――が、足を押さえつけられていたので、ドサッと尻餅をついてしまった。


「いってぇ…」


何とか立ち上がろうとすると、ズシッと腹に重みがのしかかる。


「う…お、重い…」


「ギュウ!」


俺の上に上半身を乗り上げ、リザードはもの凄く上機嫌に鳴く。この状態で30kgくらいはあるだろうか。全身で乗られても押し潰されはしないが、起き上がることは出来ないだろう。


「ギュウギュウ」


「ウグ…重いってば…」


俺の腹をブニブニと押してくる。どうやら俺で遊んでいるらしい。


「俺はお前のオモチャじゃないんだぞ…!」


そんな俺の声には耳も貸さず、リザードは楽しそうにしている。


そこでふと、疑問に思う。コイツは何故こんなにも人懐っこいのだろう。先程までの緊迫した状態から考えれば、俺はコイツの腹の中にいてもおかしくはないのに。


他のリザード達もそうだ。全くと言っていいほど襲ってくる気配がない。距離が離れたからかもしれないが。


「どいてって」


リザードの体をグイッと押してみるが、びくともしない。すると、それまで俺の腹の上で遊んでいたリザードがこちらを見て、


「ギュッ」


と、少し声を低くし、瞳を細くして俺を睨みつけてくる。まるで、嫌だ、と文句を言っているかのようだ。


いや、文句を言いたいのは俺の方なんだけど…。


何とか降りてもらおうと抵抗してみるが、全くどこうとしない。降りる素振りすら見せない。それどころか段々とエスカレートしている気がする。


暫くそんなことをしていると、


「ギュアッ!」


「ヴッ…!」


ドンッと俺の胸を押してくる。俺は後ろへ倒れてしまわないように耐えた。


「ギュッ!」


リザードは目を細め、俺の反応を面白がっている。その表情を見て、俺は思った。


コイツに何をやっても無駄だ………と。

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