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第6話 『始まりの街と武器商人』

 痛い――。

 どうやらワープの際に体勢をこじらしたみたいだ。

 

 だがしかし。

 目の前には夢の世界が広がっていた。


 ここが始まりの地か――。


 石でできた道に、木材やレンガでてきた建物が並んでいる。見たところ目立った冒険者は見えない。やはりビギナーが集まる地なのだな。所々大きな建物がある。その建物には特徴的な旗が立てられていた。あれか、ギルドか何かかな。

 近くに武器屋が見受けられ、初心者冒険者で繁盛しているみたいだ。

 見渡してみると街の周囲は大きな壁で覆われている。魔物が侵入するのを防ぐためなのか。


 幻想世界フェアリー・エンドラル

 どこまでが現実でどこまでが作られたものなのか分からない。

 神は魔物の支配とかしていないのか。もしかしたら、魔物は偽造生物ではないのかもしれない。

 この世界が存在する理由として情報収集が必要なのか。


「何しているんですかハルヒト様!?」


 そうか、美少女精霊も連れてきたのだな。


「悪かった」


 とりあえず謝っておく。誰に対しても謝罪することは必至である。

 コミュ障の俺でもそれくれらいの常識はある。何せ某難関大学生だった俺だからな。


「ハルヒト様、どうしてくれるんですか! 始まりの森から出たらチュートリアルヘルパーの精霊は二度と戻れなくなるんです!」

 

 少々小声気味で言ってるのは周りからの視線を避けるためなのだろう。

 ん? 今何と。

 

 ――戻れなくなる?


 ネトゲ廃人大学生ノリが彼女にとって最悪のことをしてしまったというのか。


「でも戻れなくなるってどういうことだ? お前はシステム上のNPCの筈じゃ……」

「NPCであるのは間違いありません。が、神の目が届く場所は始まりの森しかないんです! あっ……」

「それは――すまなかったな」


 最後に美少女精霊が慌てていたのは何故だろうか。

 あれか、プレイヤーに言ってはいけない秘密とかなのか。NPCには奥がありそうだな。

 

「精霊さん――」

「はい」


 よく考えたらこのまま美少女精霊が始まりの森に帰れないのは好都合ではないのか。

 この世界のことを知らない俺の大ヒーローになってくれるに違いない。


「俺と一緒に冒険しないか? この世界を」

「なっ、何を言っているんですハルヒト様! そんなことしたら怒られちゃいます!」

「怒られる? 誰に? もう神様の目は行き届いていないのに?」

「そっ、それは……」


 この美少女精霊は言葉に弱いらしいな。

 彼女は考える。数秒の沈黙の後、口を開いたのは、


「わかりました」

「おっ」

「暫くの間ですよ。このまま一人になってしまうのも困りますし。その代わりこの話は他言無用です。精霊がハルヒト様についていると知られたらとんでもないことになります」

「んじゃあ、大丈夫なのか。今その姿見られているのでは――」

「ご安心を。わたくしの姿はハルヒト様以外認知されていません。まあ、プレイヤーの視覚操作をするのに膨大の魔力(マナ)は消費してしまいますが」

「なるほどさすがは精霊。それにしてもNPCであろうとも魔力(マナ)はあるんだな」


 可愛い精霊がいたものだ。

 わざわざ俺だけのものにしてくれるとはな。おっとこれは自意識過剰だな。

 

 しかし、この美少女精霊。元はヘルパー精霊。

 この幻想世界フェアリー・エンドラル攻略の手助けになるのかもしれん。

 その前に一つやっておかなければいけないことがある。それに俺のことを様付けしてくれている以上、多少の願いは聞いてくれるだろう。


「お前に名前ってのはあるのか?」

「いえ――プレイヤー様のように名前はありません」

「なら、今からお前はリリィだ」


 自分の(架空の)嫁の名前を使ってしまうのは少し引っかかるが、これでリリィちゃんと会えない日々の〇欲を満たすこととしよう。


「リリィ――ですか。悪くないです」


 当然だ。俺の(架空の)嫁だからな。


「てわけでリリィ。とりあえず今から何をすればいい?」

「そこの武器屋で武器を売ってみてはどうでしょう」


 そうか。金か。

 現代社会でも生きていくには金は必要不可欠。金があればそれなりに行動範囲も増えるだろう。悪くないな。


「ハルヒト様――わたくしは疲れてしまったのでしばらく消えますね」

「えっ、ちょっ」


 消える? どこに?

 と、りりィはそう言い残して大気の中に消えていった。

 あれ。さっきまで礼儀正しかった美少女精霊はどこに。まあ、必要になったらまた呼び戻せば来るか。


 まあ、要らない武器を売却して新しい武器を購入する方が効率が良さそうだ。近くに見える武器屋に行ってみることにしよう。



「いらっしゃい。兄ちゃんさっき始まりの森からワープしてきたね? 新参者かい?」

「まあ、そういう者だ。アンタはNPCか?」

「NPCではないぞ。俺はただの武器商人だ」


 NPCではないのか。プレイヤーの商売か。

 表通りに建っている武器屋だ。詐欺商売なんて泥臭い真似はできないだろう。


「NPCには頭の上に青い矢印が浮かんでいる。それが目印だな」

「なるほど――すまない」

「いいってことよ」


 さっさと目的を果たそう。

 青い矢印――リリィにはそんなものはなかったが。


「武器を売却しに来た」

「かしこまり! 武器を見せてくれ」


 頭の中でメニュー画面と念じ《アイテム》を選択。そして、アイテムスロットから木の剣と銅の剣を取り出した。

 まあ、チュートリアルで貰った武器なんて高い値段はつかないだろう。


「これだ」

「うむ。木の剣は200ソナー、銅の剣は600ソナーといったところだな」


 おお。案外思っていたより高値が付いた。

 といっても、1ソナーの価値がどれ程のものかは俺にはわからない。


「じゃあ、それでよろしく頼む」

「おうよ」


 目の前に空間ウィンドウが現れ、メッセージが表示された。



『800ソナーを受け取りますか?』



 この世界ではお金の実物はないのか? 硬貨や紙幣はないみたいだ。

 あれだな。電子マネーみたいなやりとりか。

 俺は空間ウィンドウの右下の『〇』をタッチし、800ソナーを受け取った。

 

 これで所持金は2450ソナー。武器を購入する上で2000ソナーはくれてやってもいいだろう。


「武器を購入したいのだが、2000ソナーで買える程のお勧めの武器はあるか?」

「そうだな、武器は何を使っている?」

「両手剣で」

「ほう、闘士(ウォリアー)か」


 ここで遊び人(ドリーマー)ですとか言ったら痛い目で見られるのは間違いない。

 それに俺が今わかっている装備可能な武器は両手剣だ。下手にダガーや杖とか買ったら後々厄介だ。


「この武器なんかどうか?」


 と、武器商人に提示されたのは一本の両手剣。

 青緑(エメラルドグリーン)的な色で輝いていてかっこいい。


「それは?」

「ブロンズソードだ。強力な攻撃力故に物理攻撃10%上昇のスキルがついている。本当は2150ソナーで売りたいところだが、新参者のアンタには1500ソナーで売ってやってもいいぜ」


 なるほど。

 物理攻撃10%アップはかなり大きい。十回斬ればプラス一回だ。それに割引きが効いているしここで買うべきだ。特別価格だよ?


「よし、それを買おう」

「毎度あり」


 空間ウィンドウを使って1500ソナーを武器商人に渡すと俺の手にブロンズソードが渡された。

 しばらくはこの剣で狩りをしてみるか。


「一つ聞きたいんだが、近くに防具屋はあるのか?」

「防具屋ならこの大通りをずっと行ったところにある」


 武器商人に軽く一礼した後、俺は静かに去っていった。


 次は防具屋にでも行ってみるか。

 そのあとで道具屋にも寄っていきたい。

 ん? さすがにあるよな――道具屋。

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