暴走した力達
「それでは、細かくお話ししましょう」
俺達はクロナにギルド、シルバーバードの細かい話を聞くことにした。
「シルバーバードは最近現われたかなり力のある大手のギルドです」
「大手のギルドなのか?」
「はい、最初は小さなギルドだったという話を聞きましたが、確かギルドマスターの方が
かなり暴走している人物で、詳細は不明、ですけど、暴れていると言う事は明白な事実です」
やっぱりギルドマスターが暴走していると、ギルド全体が暴走するんだな。
それは、まぁ、当たり前。
「今までやって来た悪行は調べた限りでは窃盗、殺害、誘拐、強盗等々ですね」
「何それ、そんな事をしてるの?」
「はい、彼らは今までの探検家の方達からは考えられないほどの悪事を働いています」
「そうか・・・じゃあ、あれだな、例えるならマフィアとかやくざとかだな」
「やくざ? まふぃあ? そんな言葉があるんですね」
NPCはやくざとかマフィアとかって言う言葉は知らないんだな。
「まぁ、あれだぜ、色々と悪いことをする奴らって事だ」
「そうなんですか」
勇次が何とか簡単な言葉でやくざとマフィアの事を教えた。
そして、その説明を聞いて、クロナも納得したようだ。
「あ、話に戻りますね、シルバーバードのメンバーは私が調べた限りでは100人ほどです」
「100人!? ギルドに所属できる最大人数ね」
「はい、そうです、でも、シルバーバードの息が掛かった探検家の方は結構いるんですよ
だから、ギルドに所属している人数は100人ですけど、実際はそれ以上だと私は思っています」
「ふーん、やっぱりそう言う組織は人数が多いんだ」
「そうなんですよね、だからもしもシルバーバードに敵対した場合
その人物はこの街全体を敵にしたような物ですよ」
・・・俺、完全に敵に回したよな・・・絶対に。
じゃあ、もしかしたら俺も狙われの身になっている可能性があるかも知れない・・・
もし、そうなったらホーリーアップルの全員に迷惑をかける可能性がある・・・
「・・・・・・しゅ、修介、その、大丈夫かな?」
「ま、まぁ、大丈夫だろう、あれだけで完全に敵対したとは限らないし」
俺と真野は少し動揺しなが小声で会話をした。
その様子にはりえるさん達は気付いていないようだ。
「なるほどね、悔しいけどこの街で生きていく以上、シルバーバードとは敵対しない方が良いのね」
「そうなりますね、数が多いですし、下手に敵対するとねちっこく追っかけてくるそうですよ」
「敵対って、どんな感じになったらなるんだ?」
「詳しくは分かりませんが、多分、少しでも逆らったら敵対してくると思いますよ
聞いた話ではシルバーバードは少しでも逆らった相手を容赦なく潰すって聞きました
ですけど、その逆らった相手がどうなったかは分からないんですよ、どんな容姿の人だったとか
そういうのを誰に聞いても分からない様で、不思議ですよね」
それって、つまり逆らった奴は3回殺されたって事だよな・・・
やばいかもしれない。
「・・・そ、そうか・・・じゃあ、俺は真野と一緒に少し用事を済ませてくる」
「あれ? 何か用事があったの?」
「いや、その、思い出したんで、それじゃあ、真野、行くぞ」
「うん」
「そう、まぁ、早めに帰ってきなさいよ」
「はい、分かってます」
俺は真野を連れてギルドから出て行った。
正直に言えば皆協力してくれるかも知れないが、あまり皆を巻込みたくはないからな。
数で勝っている相手とホーリーアップルが本格的にぶつかっちまえば不利だ。
ちぃ、しかし、ゲームだった頃はPKとかは出来ないはずなのに、この世界では出来ちまうんだな。
「抜け出したは良いけど、どうするの?」
「とにかく3日ほど身を隠すとしよう、それで何も無かったらホーリーアップルに戻る」
「うん、分かった」
俺と真野はとりあえず近くの廃墟に移動して、そこで3日間ほど寝泊まりすることにした。
身を隠せそうな場所がここくらいしか無かったしな。
「かなり過しにくそうだが、我慢してくれよ」
「分かってるよ、我慢する」
俺達がその場所に移動してから、1日が経過した。
周囲は依然変わりなく静かだ、俺達がここに居るって気付いていないのか
それとも俺達が敵対したわけじゃ無いと認識されたのか。
どっちにせよ、平和なのは良いことだ。
「特に何も起ってないね」
「あぁ、このままであと2日ほど経てば良いが」
「うん、そうだね・・・」
「さて、それじゃあ、飯を食いに行くかな」
「分かった」
俺達は料理を作る事が出来ない、俺のサブは鍛冶屋だからな。
真野はそもそも探検家じゃ無いし・・・全く困ったもんだ。
これで見つかる危険性があるし、出来るだけ早く食って、隠れないと。
「ここで良いな」
「あ?」
「げ!」
俺達が入った店に、運悪く昨日会ったシルバーバードの男が居た。
それに、今回は仲間と一緒に行動している・・・
「あいつだ!」
「ちぃ! 運が悪い! 逃げるぞ!」
「うん!」
「待ちやがれ! シルバーバードに喧嘩売ったこと! 後悔させてやる!」
あの男と一緒に居た奴らも走って追いかけてきた。
これは完全に敵対しているよな! クソが!
「おい! あそこだ!」
「前からも!」
「なんでこうなるの!?」
その上、正面からも奴らが来て、俺と真野は完全に包囲されてしまった。
前後合わせて・・・20人か・・・これはキツいかもな。
「くぅ・・・」
「へ、これで終いだなまぁ、俺達はテメーらが完全に屈服するまで殺しまくるがよ!」
「俺らはお前らに構ってる暇は無い・・・大人しく帰ってくれるんだったら別にお互い怪我はしないぞ?」
「はぁ? この状況で何抜かしてんだ? この人数差だぜ? 2人で何とか訳ないだろ?」
「じゃあ、恨むなよ!{アースクエイク}」
俺は少し前に覚えたスキル、アースクエイクを放った、この技はテンペストよりも範囲は広い。
しかし、多段攻撃で、ダメージは魔力では無く攻撃力で出る。
その為、防御力が高い相手にはあまり効果は無い。
だが、俺が使えば広範囲+防御無視+多段ヒットで相当なダメージを稼げる。
こんな左右で囲まれている状態ならばテンペストよりも破壊力はある!
「な! 何だと! うわぁ!」
俺のアースクエイクを受け、俺達を取り囲んでいた奴らは全員倒れた。
それも、全員器用に1だけ残してぶっ倒れているな。
多分、トドメを刺さない限り、命を落とすことは無いのだろう。
でも、俺は3回死んだらどうなるかと言う事を知っている。
それなのに、こいつらを殺すのは、命を狙われていたとしても出来ない。
記憶から完全に消え、存在その物が無くなるんだからな。
「・・・よし、今のうちに離れるぞ」
「トドメは刺さないで良いの?」
「3回死んだら全部が完全に終わるからな、記憶には残らないとは言え、それは忍ばれる」
「ふーん、まぁ、いいや、私は修介の決定に従うよ」
「よし、じゃあ、こっから離れるぞ!」
俺と真野はそこに転がっているプレイヤー達を無視して、別の隠れ家を探した。
その時、後ろをチラッと見てみたが、NPCの人達が何人か集まっている。
救護か何かだろう、まぁ、あの人達は関係ないはずだ、とにかくさっさと別の隠れ家を探そう。




