次の戦いの始まり
「もう大丈夫、修介、起きて」
「くぅ・・・ん? 視界が戻ってる?」
「回復した、あと少し遅かったら大変だったかも」
「そうか」
あぁ、どうやら俺は少しだけ意識を失っていたようだ。
それにしても、本当に癒子は頼りになるな、しかし、これでもう回復は出来ないか。
でも、まぁ、何とかあの紅いモンスターも倒せたし、大丈夫か。
「ふぅ、死んじゃったらどうしようかと思ったわ」
「また大げさな、それに別に死んでも俺達は」
「えぇ、3回だけ復活できる、でも、3回だけよ、3回死んだらあなたの記憶も何もかも失う」
「まぁ、だから死なねぇ方が良いって事だぜ、全く、無茶しやがって」
「逃げたら被害が拡大するし、戦うしか無いだろ?」
「それもそうか、でも、本当に良く無事だったな」
本当に、あんなタイプのモンスターとはもう2度と戦いたくないな。
周囲に毒をまき散らして、周りに甚大な被害を及ぼす、その上濃い霧を発生させて
不意打ちし放題なんて怖すぎだろう。
「しかし、あのモンスター、最上級レベルよね、あんなの」
「近寄れませんからね、普通は」
「本当に修介君達が居て助かったわ、あんなの私達だけで倒せる訳ないからね
なんせ、誰かが接近しないとドンドン被害が拡散していくんだから」
本当に癒子が居てくれて助かった、それにしてもこのモンスター明らかに正攻法では倒せないよな。
もし、これがゲームだったら絶対に袋叩きにされるくらいのクソバランスだ。
第1形態はクリティカル以外では殆どダメージを与えられないし、HPも高い。
第2形態はあの毒を無効化する手段が無いと足止めが出来ない上に目眩まし効果もある。
そこから猛毒の鱗を周辺に飛ばすとか、絶対にありえない。
「まぁ、とにかくこれで解決ね」
「そうですね、それじゃあ、そろそろギルドに戻りましょう」
「そうね、でもその前にあのモンスターの素材でも剥ぎ取るとしましょうか」
りえるさんのその提案にのり、俺達はあのモンスターの方を向いてみた。
「な! あいつ! まだ動くの!?」
紅いモンスターはまだ生きているようで、ゆっくりと立ち上がり始めている。
「くそ! 随分と粘るのね!」
「冗談じゃ無い・・・こんな状態でもう1回とか洒落にならん!」
「今の状況だ、りえるさんの援護も期待できない・・・リエさんもMPはあまり無いし
癒子の回復ももう出来ない・・・だから、回復もろくに出来ないぞ!」
「ぐがぁ・・・」
紅いモンスターが弱々しく鳴くと、あのモンスターの鱗が再び落ち始めた。
もしかして、第3形態とかあるのかよ!?
「がらぁ!」
そして、落ちた鱗が自分の方に戻っていき、手と足に引っ付き、刃物のようになった。
自身の鱗の色も真っ白に変わっており、防御力はあまり無さそうだ。
でも、あの手足の鱗はさっきの紅い鱗、と言う事はあの鱗には毒がある・・・
だとすると、今の状態で戦えるのはホムンクルスの4人だけ・・・でも、耐久力はあまりない。
回復能力はあるが、防御力が低く、長期戦だと間違いなく押し負ける!
「ど、どうします?」
「逃げるのが1番ね・・・でも、大人しく逃がしてくれるわけが無い・・・」
「状況、悪すぎッスね」
「ぐらぁ!」
あのモンスターが俺達の方に突撃してこようとしている!
「あの馬鹿でかいモンスターをやるんだ! もう暴れさせるな!」
その時、何処からかタワーで当った男の子が姿を現した。
「姉ちゃん! 行くよ!」
「梨々、あまり焦らないでね」
そして、他のホムンクルス達も一斉にあのモンスターの方に突撃していった。
十数人は居るな、そこまで多いとは言えないが、かなりの戦力だ。
「がらぁ!」
「うわぁ!」
「攻撃が早いか・・・でも、負ける訳にはいかないからね!」
「うりゃぁ!」
ホムンクルス達は吹き飛ばされても立ち上がり、再び接近していった。
こういうのを波状攻撃って言うんだろうな。
流石にこの攻撃は厳しいと判断したのか、あのモンスターは空を飛び始めた。
「逃げるきか!」
「くぅ・・・狙いが定まらないけど・・・あぁ、もう! やるしか無いわ! 当って!」
「がらぁ!」
りえるさんの射撃はあのモンスターに直撃しなかったが、羽を擦った。
しかし、それでもあのモンスターは落ちずに、何処かに飛んでいった。
「この! くぅ・・・」
「に、逃げた・・・」
「逃がしたか・・・でも、絶対に仕留める・・・でも、その前に」
モンスターを逃がしたホムンクルス達は悔しそうにしたが、すぐに俺達を取り囲み始めた。
「あぁ、やっぱり戦うのかよ・・・」
「状況、ヤバくないですか?」
「はは! 良いじゃないか! こう言う方が燃えるよ!」
「「「「・・・・・・」」」」
完全に包囲されているこの状況、生き残るには一点突破しか無い。
しかし、りえるさんはあまり動けないし、俺もヘロヘロだ。
それに、真野達が俺達の近くに居る、その気になれば俺達を攻撃することは出来る。
さっきっからずっと4人は黙っているが・・・どう動く?
「久し振りだね、何だか人数も増えているようだけど、僕のこと、覚えてる?」
「あぁ、忘れないよ、怪力少年」
「そう身構えないでくれ、今回は偶然だよ、偶然」
こいつは油断ならないからな、そもそもこんな状況で身構えない方がおかしい。
「姉ちゃんと兄ちゃんの敵にもう一回会える何て嬉しいかも」
「だからそんな好戦的な態度を取らないの、誤解される」
「とにかくだ、今回は何のようだ? 真野達か?」
「そうだよ、あと、協力の申し出って奴かな」
「協力の申し出だと?」
「あなた達が? どういうことかしら?」
「さっきのモンスター、まぁ、それ以外にも色々と居るね、僕たちはそいつらを仕留めたいんだ」
モンスターを仕留める? 見た目は違えどこいつらにとっては同族のような物なのにか?
「何でかしら? 理由を教えて欲しい」
「あいつらはね、本来居るはずのない化け物だ、そのどれもこれも被害を拡大させる害悪なんだよ」
「害悪だと? まぁ、確かにあの毒霧は害悪その物だがな」
「そうさ、あいつらは害悪その物だ、だから僕たちにとっても脅威その物なんだ」
「ふーん、だからそいつらを仕留めたい、だから協力しろと?」
「そうだよ、協力しないって言うんなら、それはそれで良いんだけどね」
何というか、こんな状況でそれは完全に脅迫だよな。
「しかし、街を襲撃してきた様な連中が何でまた協力何てよ」
「君達探検家? だったかな、まぁ、君達以上に脅威な連中だからだよ
それに、君達は強いだろ? だから、協力した方が良いと思ったんだ、この話は
君達にとってもあまりマイナスじゃ無いと思うけど?」
「どうします?」
「・・・そうね、確かにその通りよ、私達としてもあんな災害モンスターを放って置くわけには行かないわ」
「じゃあ、協力してくれるって事で良いのかな?」
「そうよ、ただし、もう街の襲撃は無しって事で、それが出来ないんなら流石にね」
「安心してよ、僕たちもあのモンスターを倒すのに手一杯だ、だから、襲撃はしないよ」
「そう、信頼して見るわね」
りえるさんとホムンクルスの少年はお互いを見ている。
そして、少年は先の行動をした。
「それじゃあ、僕たちはこれで、出来るだけ情報を回すよ、この2人でね」
少年は奈々と梨々を指さし、そう言った。
「あと、君達はどうするんだい?」
「わ、私は・・・私は残りますよ、結構気に入りました」」
「俺も残る」
「私も」
「私も残ろうかな、ダイアちゃんもあそこが好きみたいだし」
「・・・そうか、分かったよ、じゃあ、精々死なないようにしてくれよ、それじゃあ、引き上げる」
少年は手を上げて、全員を撤退させていった。
なるほどな、あいつが司令官なのか。
そして、奈々と梨々の2人が俺達の方に少しだけ近寄ってきた。
「今回から伝達を任された、自己紹介は別に良いかな?」
「そうだね、他の皆には私が伝える」
「くぅ・・・まさか敵と協力するなんて・・・何だか悔しいけど、兄ちゃんの指示だし、従う」
「あまり身構えないでって言ったのに・・・まぁ良い、これからよろしく」
「こ、この協力が終わったら! 絶対に倒してやる!」
2人はそう言い残すと他のホムンクルスと同じ様に帰って行った。
挨拶の為だけに来たのか。
しかし、妙な事になったな、今度からあんなモンスターを相手にしていくって事だろ?
やれやれ、先が思いやられる。




