嫌な予感
食事も終わり、その次の日だ、今日もいつも以上に癒子が騒がし。
何だかこいつが騒がしい日って言うのはかなり不安なんだよな・・・
「おい・・・何でそんなに暴れてる?」
「そ、その、何だか、嫌な予感がするの」
「嫌な予感? 音じゃ無くて予感なのか?」
「う、うん」
音じゃ無いって事は、襲撃を食らったわけじゃ無いのか。
「まぁ、気にしすぎなんじゃ無いのか? そんな予感なんて」
「そうだと良いんだけどね・・・」
ま、警戒はしておいた方が良いかもしれないが、今は良いだろう。
とりあえず、さっさと降りるかな。
「あ! 修介君! 起きたのね!」
「え? あ、あの、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「その、昨日の店の結果を管理しないと行けないんだけど、その、会計がね・・・」
「えっと・・・もしかして、どれだけ売れたかっていうのを、俺に計算させるつもりで?」
「そうよ、売り上げ結果は出てるんだけど、どれがどれだけ売れて、材料費が、とかで忙しくてね
正直、私だけじゃあ、難しいのよね」
「リエさんは?」
「寝てるし、リエは計算が苦手だし」
「・・・あ、じゃ、じゃあ、その、クロナも連れてきても良いですか?」
「あぁ、そうね、あの子なら計算とか得意そうだし」
「はい」
「じゃあ、連れてきてちょうだい」
「分かりました」
俺はクロナを何とか説得し、りえるさんの部屋に連れて行った。
まぁ、説得の必要は殆ど無かったが。
「おぉ! これですね! お任せください! 計算は大の得意です!
いやぁ、最近はこのギルドの皆さんと行動を共にしたり、情報を提供してばかりだったから
こう言う計算系の仕事が出来なかったんですよね! いやぁ、嬉しいです!」
クロナは目をキラキラさせながらそう早口で言った。
なんか、クロナの仕事に向ける情熱はすごいな。
俺ならこんな量の紙を見たら、もう嫌だとか思うがな。
「ふっふっふ、さぁ! 行きます! あ、指示はありますか? どんな風にまとめた方が良いですか?」
「そうね、何が何個売れたかって言うのをとりあえずまとめてくれれば良いわ、それだけで」
「分かりました!」
そして、クロナはすごい勢いで書類を見て、それをまとめていった。
これはすごいな、これが民間ギルドの会計なのか・・・こりゃすごい。
「すごいスピードね、これは会計の即戦力かしらね」
「なんで昨日クロナをレジにしなかったんです?」
「いや、ほら、クロナはいつも明美ちゃんの料理を手伝ってたから、そっちの方が良いかなと思って」
「あぁ、そ、そうですね、普段は会計なんてしてませんし・・・」
「そうね」
クロナの計算速度、そして、字を書く時の速さ、圧倒的だな。
「・・・もう、ここはクロナだけで良いですね」
「そうね、でも、一応私は残っておくわ、修介君は降りてて良いわよ」
「はい」
クロナがここまでとは予想外だったな、さてと、俺は解放されて所で1階に降りるかな。
「あ、修介さん、おはようございます」
「あぁ、おはよう・・・なぁ、勇次は? いつも通りか?」
「はい、いつも通りですね、あ、ホムンクルス用の料理は出来てますよ」
「分かった、じゃあ、俺が食わせてくる」
「お願いします」
俺は明美からホムンクルス用の料理を受け取り、グレン達の部屋に入った。
「ほら、あまりがっつくなよ、お前の食費で昨日は大変だったんだから」
「がぅ」
「まぁ、良いぜ、今更食事量を減らすつもりは無いからな」
「がぅ!」
「がぁ」
「なんだよ、お前はさっき食べただろ? 何でもう腹を減らせてるんだよ」
「がぁ」
部屋に入ると、勇次がいつも通り、グレン達の世話をしていた。
しかし、ダイアもかなりここに馴染んでるな、あ、勇次から離れてチャチャと遊びだした。
「うぅ・・・ダイアちゃん、もうあの人に懐いちゃってるよ・・・」
「お? 言葉が分かった、と言う事は、修介か」
「それで気が付くんだな、音とかじゃ無くて」
「そうそう、俺はあまり周りを見ないからな!」
「自慢げに言うことじゃないだろうに・・・ま、良いか、お前ら、飯だぞ」
「うん」
俺はホムンクルス達に飯を食わせた、うーん、そろそろ拘束を解いても良いかもな
あの体勢だとしんどそうだし。
「うぅ・・・ご飯は美味しいんだけど、腕が痛いよ・・・」
「お、俺は痛くないし、全然痛くねーし!」
「そうか、痛くないなら、お前はそのままにしておくか」
「ど、どういうことだよ!」
「いや、そろそろその体勢は痛いだろ? 食い込んでさ、だから外そうかと思って」
「良いのか? こいつらの拘束を解いても?」
「このままだと、その内こいつらの腕にかなりキツい型が出来そうだしな
それに、いくらホムンクスでも、この檻は壊せないだろ?」
「うーん、まぁ、そうだろうな、流石に」
「と言う事で」
俺は男のホムンクルス以外のホムンクルス達を拘束していた鎖を解放した。
「あぁ、痛かったよ・・・」
「よし、じゃあ、この状態で1つ聞こう」
「な、何さ」
「言わないよ! 何も言わないよ!」
「そうだそうだ!」
「基地とかそう言うんじゃ無いが、なんで俺に攻撃を仕掛けなかった?」
「「「え!?」」」
「ほら、俺はお前らを入れた檻の中に入って、拘束を解いたんだから、攻撃しようと思えば出来そうだが」
俺がその質問をしてみると、城で取っ捕まえたホムンクルスはそっぽを向き、それ以外は下を向いた。
「なんだ?」
「い・・・いやぁ、その、気が付かなかった・・・」
「べ、別に攻撃する気が無かったわけじゃないからね! ちょっと腕が痛かったからだよ!」
「そ、そうそう、そうだよ!」
ふーん、そうなんか、まぁ、愚問だったな、ここはギルド内、ここで攻撃してもすぐに制圧される。
と言うか、この中だと俺達はダメージ食らわないから、不意打ちしても絶対にワンサイドゲームだ。
それが分かってたから攻撃しなかった、と言うのが普通に考えられるし。
あと、普通に腕も痛かっただろう。
「分かった、必要ない疑問だったな」
「そうそう!」
「お、おい!」
「なんだよ」
「い、いや、その、俺の拘束も解いて欲しいんだけど・・・」
「・・・お前は腕が痛くないんだろ?」
「た、確かにいたくねーよ! でも、ほら、毎日お前に食わされるのは嫌だし! それにお前も嫌だろ!」
「別に問題ないぞ? ただ食わせるだけだし」
「お、俺が嫌なんだよ!」
ふーむ、ホムンクルスにもプライドはあるんだな、普通に痛いって言えば解放するのに。
でも、まぁ、ここはこいつの顔を立ててやるか。
「分かった、確かにお前に毎日食わせるのはしんどいからな」
「そ、そうだろ!?」
「はいはい、解放してやる、一応言うが、攻撃すんなよ?」
「しねーよ!」
俺は男の子のホムンクルスの拘束を解放した。
「あぁ、よかった・・・」
「じゃあ、後お前ら、逃げようとか思うなよ?」
「しないよ・・・すぐにまた捕まるのが分かってるし」
「3対2で負けたからね・・・全員でかかってもすぐ捕まるのは目に見えてるし」
「そうか、それなら大丈夫か」
「あと、解放してくれた礼に良いこと教えてやるよ」
「なんだ?」
「良い事って言うか、不安なんだが、ちょっと嫌な予感がするんだ」
「嫌な予感? そういえば、朝に癒子も同じ様なことをいてったな」
「俺達ホムンクルスは堪が鋭いからな」
「あ、あの事言うんだ、じゃあ、私が教えるよ」
「お前、何か知ってるのか?」
「うん、あのね、今日から多分4日後かな、ここにとんでもない数のモンスターが来るよ」
「「はぁ!?」」
こ、このホムンクルス、もしかして、ここにモンスターを呼びやがったのか!?




