依頼組、薬草採取
ホーリーアップルの財政難を救うために依頼を受けたのは良い、うん、それは良い。
でも、メンバーがもの凄く不安だ、前衛3、後衛3とバランスは良いんだがな。
「楽しみだね、どんなモンスターが出てくるのかな」
「モンスターは出て来ない方が良いですよ、あくまでこの依頼は採取依頼ですから」
「でも、モンスターも出てくる可能性が高いから報酬が高いんだろう?」
「そうですよ、でも、出来れば戦いたくないんで、それと、もし出てきたらしっかりと指示に従って
行動してください、またギガンテス戦の様に痛い目に遭いたくは無いでしょう?」
「分ってるって、流石にギルドから追い出されるのは困るからね」
ミミさんはそう言い、笑った、うーん、本当に大丈夫なんだろうか?
あの時の記憶があるせいですごく不安だ、で、でも、もう痛い目には遭ってるし、多分大丈夫だろう。
「もしもモンスターが出てきたら、どうするの?」
「そうですね、逃げれそうなら逃げるのが良いでしょう」
「あなたもそう思うのね、私もよ」
「何弱気な事を言ってるんだい? 戦うだろ? 普通は」
「状況を見て、初心者3人を連れてる、戦う、のは、危ない」
「そうかい、まぁ、うちはあんたらに従うさ、そうしないと追い出されちまうからね」
追い出されるというのはミミさんの良い足枷になってるみたいだな。
それが無かったら絶対に戦うって言うだろうし。
そして、作戦会議をしながら歩いていると、ようやく目的地に到着した。
「うん、ここね」
「よし、じゃあ採取をしましょう」
「さて、薬草はどれだ?」
「薬草、匂い分るよ、こっち」
「お、癒子分るのか」
「うん、こっちだよ」
癒子はドンドン奥の方に進んでいく、結構奥の方にあるんだな。
そして、ある程度奥の方まで行くと、癒子が止まった。
「ここ、ここにある」
「ん、ここか?」
癒子に言われた場所で周囲を軽く見渡したが、何処にも薬草らしき物は無い。
「何処にも無いぜ?」
「妖精さん可愛い」
「亜那、先輩達みたいに探さないと」
「あ、ごめん」
亜那、遥人、花梨は薬草を採取したことが無いと行っていたな。
だったら、あの3人の捜索はあまり期待は出来ないかもしれない。
やっぱり、ここで1番期待できるのは癒子の嗅覚だけか。
「それで、何処だ?」
「ちょっと待って」
そう言うと、癒子は目を瞑り、鼻を動かし始めた、匂いを嗅いでいるんだな。
まぁ、薬草の場所を把握するのは癒子に任せて、俺達は周囲の警戒をしておこう。
「よし、じゃあ、癒子が探している間、俺達は警戒を強めておこう」
「私達じゃ、見つけれそうに無いからね」
「分ったよ、警戒するね」
そして、しばらくの間、周囲を警戒して観察していたが、モンスターの姿は無い。
グロウブはモンスターの群れがどうたらと言っていたが、足跡も無いし、それは無さそうだ。
もしかしたら、見つけるのが非常に困難だから報酬額が高いのかもしれない。
もしそうなら、癒子がいてくれて本当に助かった、こいつなら薬草の場所を探れるはずだしな。
「癒子、見つかったか?」
「もうちょっと、あ、見つけた! こっち!」
「お、見つけたか!」
俺達は再び癒子の後を付いていき、何だか色が少し変な切り株に案内された。
「何だ、これ?」
「この中、そこに薬草がある」
「き、切り株の中だと? そりゃあ、普通に探しても見つからないよな」
「そうだね、切り株の中を探すなんて発想、そう簡単には出て来ない」
「そうですよね、本当に癒子がいてくれて助かった、ありがとうな」
俺は癒子の頭を軽く撫でた。
「えへ、えへ、えへへ、褒められた、嬉しい」
「わぁ、可愛いな、妖精さん、私も撫でないなぁ」
「うちも撫でてみたいよ、でも、癒子ちゃんは私が近寄ると隠れちゃうんだよね・・・何でだろうか」
「私、ミミのこと、好きになれない」
「何でさ!?」
「ミミ、修介困らせた、だから嫌い」
「がはぁ! きょ、強烈!」
ミミさんが癒子の一言で、地面に膝を付けた、言葉の刃って強力だな。
まぁ、うん、良い薬になれば良いな、さて、切り株を壊すとするか。
「中に薬草があるんだよな?」
「うん、中にある」
「じゃあ、あまり力を込めすぎると中身が・・・キックで良いか」
「それだと、壊れないような気がするんだけど?」
「まぁ、物は試しですよ、剣で殴って中身がボロボロになったら悲惨ですし」
「そうだね、壊れたら直せないしね」
「そうです、じゃあ、行きますよ!」
俺は切り株を少し強めに蹴ってみた、すると、クリティカルが発動し、切り株が壊れた。
そして、中身の薬草はギリギリでダメージを食らわなかったようだ。
「あ、危ねぇ、そういえば俺の攻撃って全部クリティカルだったっけ」
「わ、忘れてた、もしも剣で殴ってたら中身の薬草も壊れてた」
「まぁ、何がともあれこれを採取して、よし、後2つだな、じゃあ、癒子、頼む」
「うん、探すのは任せて」
そして、俺達は癒子の案内でもう一個を破壊し、採取した。
そして、最後の1つの場所までやってきている。
「これを壊して採取すれば完璧だな」
「兄ちゃん、俺にもやらせてくれ!」
「ん? 何でだ?」
「兄ちゃんが切り株を壊してるのを見て、やってみたいって思ったから」
ふむ、折角の好奇心だ、ここはやらせてみるのが良いかな。
遥人はまだレベルが低いし、それなら問題は無いはずだ。
でも、一応リエさんにも相談してみるか。
「リエさん、どうしますか?」
「良いと思う、挑戦、は、大切」
「分りました、じゃあ、遥人、やってみろ」
「はい!」
そして、遥人は刀を取り出した、まぁ、俺みたいに蹴りで壊すのは無理だよな。
俺の場合は確定クリティカルだから切り株を壊すことが出来るが、普通は蹴りで壊すのは無理だし。
「よし、てりゃぁ!」
遥人は呼吸を整え、切り株に向かって剣を振りかざした。
しかし、一発で切り株を破壊することは出来なかった。
「く、もう一回!」
「お、少しヒビが入った」
「今度こそ! はぁ!」
遥人の全力の一撃が切り株に入り、切り株は壊れた。
しかし、どうやらダメージが少しだけ薬草にも入ってしまったようだ。
「あぁ、薬草が・・・」
「まぁ、少しだけだし、多分大丈夫だろう」
「うん」
そして、俺がその薬草を採取しようとしたとき、変な違和感を感じた。
その薬草から妙な匂いが発せられている。
「何の匂いだ?」
「薬草の匂いじゃない、修介、嫌な予感がするよ」
「ん?」
癒子そう言うと、周囲から大きめの足音が聞えてきた。
「これは、ヤバいんじゃ無いか!?」
「大きな揺れ・・・」
「3人とも、警戒して」
「なんだい? ようやく戦闘かな?」
そして、その足音がかなり近くまで来たとき、俺達は完全に包囲されていた。
「こいつらは、何処から来やがった!?」
「もしかして、匂いに釣られて?」
「お、俺のせいだ、俺が薬草に傷を付けちゃったから・・・」
「後悔は後だ! 円陣組め! 後衛の3人は真ん中に!」
「分ってる」
「ミミさん! 後衛の3人を守るように戦いますよ!」
「あまり移動は出来ないのか、嫌なもんだね」
「遥人! お前もちゃんと守れよ!」
「あ・・・あぁ・・・」
「後悔は後だと言ったはずだ! 今は仲間を守ることに集中しろ!」
「う・・・兄ちゃん、分ったよ!」
「亜那は遥人の回復を最優先にしてくれ、リエさんは」
「あなた達2人の回復でしょ? 分ってる」
「そうですか、でも、出来れば俺よりもミミさんを回復してください、俺には癒子もいるし
自分を回復するヒーリングもありますから!」
「分った」
さて、この絶体絶命の状況、一応作ったけど、使わなかった作られた盾を使うしかないよな。
回避が出来ないこの状況で、俺は何処まで耐えられるか、いや、それ以上にだ
俺以上に防衛手段が乏しいミミさん、レベルが低くて力不足の遥人。
この2人の方が心配か・・・クソ、最悪の場合、あの手を使うかな。




