初心者3兄妹へ戦闘指導
俺はミミさんに引っ張られて新人3人の戦闘指導を行なう事になった。
本当はやりたいことがあったが、連れ出されてしまったし、仕方ないよな。
とりあえず、最初はこの3人の戦い方を見た方が良いだろう。
「まぁ、うん、仕方がないし、指導はする、そうだな、最初は3人であのモンスターと戦ってみてくれ」
「はい!」
そして、3人は俺が指示したモンスターと戦闘を開始した・・・
まず最初に疑問に思ったのは布陣だ、前衛と後衛が遠すぎるような気がする。
でも、もしかしたら3人なりに考えた布陣なのかもしれないし、今は黙っておこう。
「行くぞ! てりゃぁ!」
そして、遥人は更にモンスターに接近した、それだと後衛の射程圏外に出そうだが。
「はぁ! てりゃぁ!」
「当るかな?{フォース}」
花梨が援護のためにフォースを放った、しかし、この射線だと遥人に当るだろう。
「あぁ! 当っちゃう!」
「へ? わぁ!」
花梨の叫び声に反応して、遥人が後ろを振り向いた、そして、フォースに驚愕している。
しかし、フォースは遥人に当る前に消滅して当たりはしなかった。
だが、後ろを振り向いてしまったせいで、遥人はモンスターに背を向けている形になるな。
「ぎゃう!」
「痛! こ、この!」
まぁ、当然その状態での攻撃を回避できるわけも無く、遥人は攻撃に当った。
HPはその一撃で5分の1は持って行かれた、まだ戦えるが、回復した方が良いかもしれない。
「か、回復しないと!{ヒール}」
そして、亜那は回復をしようと試みたようだが、距離的に回復は届かなかった。
「回復できない!」
「うわ!」
その間にも遥人はダメージを食らっている、もう半分は持って行かれたな。
ふむ、これは駄目だな、助けた方が良いだろう。
「ミミさん、そろそろ助けましょうか」
「そうだね」
そして、俺達は素早く遥人の目の前のモンスターを撃破した。
「うぅ・・・」
「うん、全然駄目だな、新人だし無理は無いが」
と言ったが、考えてみたら俺もまだ新人の部類だったな。
確かこの世界に来てそこまで経ってないし。
でも、これだけの違いがあるのか、やっぱりりえるさん達のお陰だな。
「えーっと、まずだな、お前達は前衛と後衛の距離を開けすぎている、それじゃあ援護は出来ない」
「はい」
「まぁ、そうだな、1人1人問題点を挙げていくからよく聞けよ」
「はい」
とりあえず、まずは全員に自分の行動の問題点を認識してもらうことだ
と言ってもあまり長い間戦ってないからそこまで分からないがな。
「まず、遥人だ、お前は猪の様に突撃しすぎだ、あと、後ろを振り向くな
目の前に敵が居るのに振り向くのはちょっとな」
「はい」
まぁ、何だか俺も似たような事をした記憶があるような、勘違いかな。
「次に亜那、お前はもう少し自分の魔法の射程を考えろ、回復系はそんなに射程長くないぞ」
「はい」
回復は戦闘における生命線だからな、回復が無いと前衛がすぐに倒れる。
だから回復の射程はしっかりと考えた方が良い。
「で、最後に花梨、お前はもう少し狙いを定めろ、あと、射程も考えろ」
「はい」
まぁ、今回のあれは射程外だったから助かったのがあるがな。
「んで、最後に全員に言うが、ちゃんと声を掛け合え、その方が意思疎通がしやすい」
「でも、距離があったから・・・」
「だったら近づけ、連携は重要だぞ、特に今の状況だったらな」
「はい・・・」
昔のRPGの時だったら連携が出来ていなくてもまだ何とかなるかもしれない。
でも、今はRPGでも無いし、この世界はゲームでも無い、そんな状態だから連携は重要だ。
「じゃあ、そうだな、俺が指示した布陣で戦え」
「はい」
俺は3人に布陣と各々の役割を指示した、この布陣は簡単に言えば前衛をそのまま前に送り
後衛を左右に分け、配置する布陣だ。
これなら花梨の魔法が誤って遥人に当たる危険性も低くなるだろう。
「よし、じゃあ、やるぞ!」
「おー!」
そして、3人はモンスターと相対した。
数は今回の方が多いな、でも、多分この布陣なら大丈夫だろう。
「数が多い、なら、修介先輩が言ってたとおりに範囲攻撃だ!{カマイタチ}」
ふむ、俺が言ってたことを実践したんだな、カマイタチは敵の群れを一気に弱らせるために使う。
俺が使ったら雑魚必殺の攻撃になるが、普通は弱らせるだけだ。
「素早く狙う{フォース}」
花梨がフォースを放った、さっきは遥人に当りそうになったが、今回はしっかりと魔物に当った。
結構ぶれがあったが、それでも当てられたんだ、上出来だろう。
「私はいつでも回復できるように、待機をして、別の敵が居ないか確認」
ふむ、ちゃんと俺が教えた役割を果たそうとしているんだな。
そして、ちゃんと周囲を見渡し、敵が来てないかを確認しているな、うん、良い調子だ。
「うわぁ!」
流石に遥人もダメージを食らったか、数が多いし仕方がない。
「任せて!」
そして、ダメージと同時に素早く亜那が回復を行なった、良い感じだぞ。
「ありがとな! よし! 食らえ!{カマイタチ}」
「ぎがぁ!」
そして、遥人のカマイタチで魔物は全滅した、うん、見事だ。
「よっしゃぁ!」
「うん、流石だな、よくやった」
「ありがとうございます!」
よし、これで戦い方の基本は覚えただろう、後はミミさんが何とかしてくれるかな。
じゃあ、俺はそろそろ戻って、色々とやらないと。
「じゃあ、これで後はミミさんが引き継いでくれるだろう、俺はそろそろ戻らないと」
「ふむ、そうだね、でも、もう少しここに居ないと駄目だと思うよ」
「何でですか?」
「ほら、後ろ明らかにヤバいのが居るだろ?」
「は?」
俺達はその言葉に驚き、後ろを振り向いてみた、そこには巨人が居た。
巨人は確かレアモンスターだが、レアの割にはとんでもない攻撃力に体力、そして凶暴性がある。
要するにだ、初心者を絶対に殺すために用意したモンスターだろう。
ゲームでも悪意しか感じないが、その上今の世界は現実、更に悪意が増す。
「良かったじゃないか、レアモンスターだよ」
「いや、あのモンスターは初心者殺しでしょ?」
「そうだね、絶対に殺すためのモンスターだ、悪意しか感じないよ」
「ぐらぁ!」
「クソ! これは避けられないか、お前らは逃げとけ!」
「え!? で、でも! 先輩方は今前衛しかいないんじゃ!」
「そうだな、でも、お前らじゃ役には立たない、だからりえるさん達を呼んできてくれ」
「俺達だって戦えるぞ!」
「無理だ、良いか、お前らが今できることは援軍を呼ぶことだ! いけ!」
「く、くぅ・・・わ、分かったよ!」
そして、3人は戻っていった、正直あいつらを庇いながらこの化け物を倒すのは無理だ。
まぁ、あいつらが居ないからって倒せるわけじゃ無いがな。
「さて、これで勝利条件は簡単になったね」
「はい、援軍が来るまで耐えれば良いんですから」
「あぁ、じゃあ、頑張ろうか、良いかい? うちの足を引っ張ったらいけないよ?」
「そっちこそ、無茶な戦いをして俺の足を引っ張らないでくださいね」
「ふ、行くよ!」
「はい!」
「おぉー!」
さて、今日はやっぱり大変な事になりそうだな、やれやれ。




