新しくなったギルドの日常
ギルドを軽く見回ったが、後1カ所だけ行ってない場所があったな。
勇次の奴はそこで何をやってるのか興味があるし、ちょっと確認してみるか。
俺と明美は勇次がりえるさんに許可をもらった、倉庫のような場所に入ってみた。
「お、何だ、興味でもあったのか?」
そこはどんなサイズの動物でも入りそうなくらい大きな部屋だった。
少しだけ木々があり、大きな檻や小さな檻、自由に犬が走り回っている大きめの部屋。
ここは動物園かな? と思うくらいだ、まだ動物は少ないが。
「かなりデカいな」
「あぁ、それに、金を払ったら何かこの場所が変わるらしいぜ」
「景色が変わるの?」
「あぁ、森にしたり、草原にしたり、岩場にしたりと何でもありみたいだ
それとこいつらを手懐けるための便利道具とか貰えたりするみたいだし」
普通ならあり得ない機能だな、でも、この世界は元ゲームだし、それ位あっても不思議じゃ無い。
「それによ、ここの機能でいつでもここの動物を出せるみたいだぜ、便利だよな!」
「あぁ、流石は元ゲームって感じだよな」
「だな、あ、こいつがあのライオンだ」
そこにはかなり大きな檻の中に入っているブレイクライオンが居た。
まだぐっすり眠っているようだ。
「ブレイクライオンは寝てても威厳があるな」
「ん? ブレイクライオンって言うのか、ふーん、でも、呼びにくいな」
「長いからな、じゃあ、何だ? 名前でも付けるのか?」
「そうだな・・・よし、ブクブクにしよう!」
「ぶ、ブクブク? 止めとけ、威厳の欠片も無い」
「なに!? 俺のネーミングセンスが残念とか言うのか!?」
そこまで言ってないが、まぁ、多分少しだけ自覚があるんだろう。
「あぁ、そうだ、残念だろ」
「何だと!? じゃあ、お前が付けてみろよ!」
俺に振ってくるのか、まぁ、良いだろう、しかし、どうするかな。
ブレイクライオンだし、そこら辺を残しときたいが・・・
「じゃあ、グレンでどうだ?」
「グレンだと・・・普通だな、本当に普通だ」
「普通が1番だ」
「あ、私もグレンの方が良いと思いますよ、だって、ブクブクって、可愛くもかっこよくも無いですし」
「がは!・・・わ、分かったよ・・・明美ちゃんがそう言うなら、グレンで」
明美の一言で決まったな。
「てか、なんでグレンなんだ? 俺によく分かるように教えてくれ」
「こいつはブレイクライオンだろ? だからブをグに変えてグレ最後にライオンのンを入れただけだ」
「こんな簡単な名前付けに負けただと・・・無念だぜ」
「お前は最初の二文字を連続させただけだろ、俺よりひねりが無い」
「ハッキリ言うな!」
まぁ、ブレイクライオンの名前も決まったし、そろそろ部屋に戻るかな。
「じゃあ、俺はそろそろ戻る」
「じゃあ、私はそろそろご飯の準備をしてきますね」
「あ、あぁ、分かった」
そして、その日は明美の作った飯を食って、寝た。
少し1階が騒がしかったが、多分グレンが暴れたんだろうな。
それにしても、隣にあの妖精が居ると何だか安心して眠れるな。
これも癒やしの妖精の能力なんだろうか、だとすると、睡眠不足の人に良い効果が期待できそうだな。
「ふぅ、よく寝た」
「あ、し、しゅ、しゅう、しゅう」
何だか耳元から声が聞える、まるで赤ん坊が頑張って声を出そうとしている感じの声だ。
それに、耳元って事は・・・まさかあの妖精か?
「しゅ、しゅう、しゅう」
「も、もしかして、この声はお前か?」
「あい、あい」
マジかよ! 成長スピード速いな、まだ2、3日位しか時間が経ってないのによ。
「しかし、良くそんなに言葉を覚えたな」
「あい、あい」
そろそろこの妖精にも名前を付けた方が良いのか?
うーん、癒やしの妖精だろ・・・そうだな、癒子とか? いやしますって感じで
良いような気もするし、よし、癒子だな。
「うん、じゃあ、お前は今日から癒子だ、わかりやすいだろうし」
「りょ、りょこ、むー、りょう、こ」
まだあまり喋れないみたいだが、癒子は3文字だがギリギリ呼べるんだな。
とりあえず、このことを皆にも話しておいた方が良いだろう。
多分、もう一回のリビングに集まってそうだし。
「おい、皆」
「あぁ、修介君、おはよう」
「お、おは、おはよ」
癒美も挨拶をしようと頑張って居るみたいだが、りえるさんには聞えてないだろうな。
なんせ、まだ覚えたてで殆ど声も出ていない、だから耳元でもそこまで苦じゃ無いんだよな。
「何だかその妖精、喋ってない?」
「はい、喋ってます、まだ殆ど言葉は発せませんが」
「本当? すごい成長スピードね」
「それと、一応名前も決めたんで話しますね、こいつは癒子にしました」
「そう、癒子ね、良い名前だと思うわ」
「ありがとうございます」
その後、皆に会って、こいつの名前と、こいつが喋れるようになったことを話した。
皆、同じ様に癒子の成長スピードに驚いていた。
そして、俺達は皆1階の大広間に集まった、まぁ、これはいつものことだ。
そこで、俺は今まで少しだけ疑問に思っていたことをりえるさんに聞いてみることにした。
「あの、りえるさん、1つ質問良いですか?」
「良いわよ」
「なんで兎の耳を付けてるんですか?」
俺が少し前から疑問に思っていたことだ、性格からしてそんなのを付けるような人じゃ無さそうだし
だから、少しだけ気になっていた。
「え、えぇっと、あれよ、これを付けていると、不思議と何でも出来るような気分になるって言うか」
「お姉ちゃん、嘘は駄目、可愛いからでしょ?」
「あ! 言わないでよ!」
りえるさんは顔を赤くしてリエさんにそう言った。
「確かに可愛いっすよね、うさ耳! まぁ、俺はうさ耳だけじゃ無く、毛も耳全般が好きですけどね」
「う、うぅ・・・気にしてるのよ、ここが現実になって耳を外したいけど外せないし。
ゲームの頃は問題なかったのよ!? でも、実際この体になって、気になってるのよね」
そう言いながら、りえるさんは自分の耳を軽く撫でた。
「帽子で隠そうとしても横から垂れるし、まぁ、黒色で目立たないのが唯一の救いね」
「りえるさん、その耳可愛いですよ? そんなに隠そうとしないでも良いのに」
「駄目よ! 駄目! 確かに気に入ってはいるけど」
「りえる先輩、大丈夫! 可愛い! 実はあたしも耳を付けてみようかなと考えてたし」
やっぱり毛も耳ってのは人気なんだな、この会話でそれが分かった。
「そういえば、尻尾、尻尾は生えてるんッスか!?」
「一応ね、ズボンで隠してはいるけど、ちょっと違和感があるのよ」
「・・・尻尾も黒なら出したらどうです? 軍服も黒ですし、目立ちませんよ?」
「あ、確かにそうかもしれないわね、後で出してみるわ」
「尻尾、耳、少し楽しみだぜ」
そういえば勇次は獣っ娘が大好きだったな、だからこんなに反応したのか。
それにしても、こういう尻尾とか耳はずっとそのままなんだな。
まぁ、外見が何度も変わってたら怖いが。
「まぁ、今日はもう解散ね、上位職を試したくても勇次がグレンを手懐けないと駄目だからね」
「努力しますよ、一日中付きっ切りであいつをなんとしても手懐けて見せます!」
勇次は力強くそう言った、こういう所は良いところかもしれないな。
さて、勇次がグレンを手懐けるのはいつになるのやら。