少しだけ頭を出した真実
よく分らない男の子に目を付けられて戦う事になるとはな。
明らかに攻撃力も高く、普通じゃ無いってのによ。
だが、逃げるのも出来そうにないし、戦うしかないか。
「どうしたの? そんなに悩んでさ」
「普通は悩むっての、怪力の子どもが目の前にいたらよ」
「へぇ、そうなんだ、じゃあ、僕たちの仲間を見たら君達は皆固まるんだね」
「は? どういう意味だ?」
「僕に勝ったら少しだけ教えてあげるよ」
こいつに勝つか、かなり苦戦しそうなんだがな。
「じゃ、行くよ!」
「あたしが止める!」
突撃してきた男の子の前に愛が立ちふさがった。
しかし、何だろうか、よく分らないが、変な不安が頭をよぎる。
よく分らないが、このままだと愛がヤバい!
「馬鹿だね、盾なんて意味が無いって」
「え?」
「だって、盾を掴めば、相手の腕をもげるから」
男の子は愛の盾を思い切り掴み、強く引っ張り出した。
「う、ぐぅぅ!!」
「この!」
俺は前に出て、男の子に攻撃を仕掛けた。
「あぁ、惜しいな、あと少しでこの人の腕をもげたのに」
「大丈夫か!?」
「うぅ・・・だ、大丈夫、ありがとう、修介先輩」
盾を使うタイプの前衛職とこいつの相性は最悪だ。
特にタワーシールドみたいな重く、動き辛い盾を使う奴との。
「前衛は俺がする、愛は後ろでりえるさん達を守ってやってくれ」
「わ、分った」
愛はゆっくりと後ろに下がり、りえるさん達と合流した。
「大丈夫?」
「す、少し腕が痛いだけ、大丈夫」
「とにかく明美ちゃんかリエ、回復してあげて」
「分った」
「勇次君は少し前に出て、もしもの時に修介君をカバーできるように」
「分かったっス」
「でも、下手に近寄りすぎないで」
「了解です」
勇次が少しだけ前に出るみたいだな。
確かに相手は化け物、正直俺1人で抑えきる自信は無いし、勇次がいるとありがたいな。
「お兄さんは盾とか使わないんだ」
「持ってないんだよな」
「そうなんだ、じゃあ、僕の攻撃を受けないように注意してね、死んじゃうから」
「言われなくとも分かってる」
「じゃ、行くよ!」
男の子は地面を蹴り、一気にこっちに接近してきた。
下手に攻撃したら掴まれるし、全く最悪だぜ。
「そら!」
俺は少しだけ横に動き、縦ではなく、横に斬りかかった。
縦だと簡単に掴まれそうで少し不安だったしな。
「あ、縦じゃないんだ、予想外」
俺の攻撃は男の子の胴体を確実に捉えていた。
しかし、男の子は素早く後方に下がった。
だが、俺の攻撃は深くはないにしろ、かなり手応えはあった。
「・・・まさか斬られるとはね、うん、お兄さんは強いね」
「あの体勢から下がるとか、お前は何もんだ? 人間じゃないのは明らかだが」
「そうだなぁ、教えてあげるよ、僕はホムンクルス、人間が作り出した人間を越えた人間だよ」
「ホムンクルス!? レイジ・ホムンクルスやクリムゾン・ホムンクルスと同じのか!?」
俺がそう返すと、男の子は大きく笑い出した。
「違うよ、あんな失敗作じゃない、僕たちは人間の最大の失敗作だよ」
「は? どういう意味だ?」
「人間にとって、人間を越えた人間は最悪の失敗作だったんだ
頭も優れ、肉体も優れ、再生能力も何もかもが人を越えた、寿命もない老いもしない
そんな最大の失敗作・・・君達以上のね」
俺達以上の失敗作? どういう意味だ、確かに俺達はプレイヤーだ
再生能力、耐久力、攻撃、身体能力、頭脳も人間だし・・・
もしかして、俺達もこの世界ではホムンクルスなのか?
「俺達もホムンクルスだとでも言いたいってのか?」
「それは違うかなぁ、君達は元は意思のない人形だったし」
「ど、どういう意味だよ」
「残念だね、ヒントタイムはもうお終い、さぁ、続きを」
男の子が再び構えようとした時だ。
後方から大きな銃声が聞え、気が付くと男の子の腹部から血が出ていた。
「うーん、痛いなぁ、流石は銃だよ、でも、不意打ちは酷くないかな?」
血の量は尋常じゃないほど出ていた、普通の人間なら間違いなく死んでいる。
しかし、男の子は普通に会話をしている。
「よく分からない奴相手に堂々と戦う訳ないでしょ?」
「それもそうか、じゃあ、僕は帰るね、流石に痛いし」
「待ちなさい!」
「あぁ、最後に言っておくけど、僕の仲間は皆子どもだよ、じゃ」
男の子はそう言い残すと地面に大きな穴を開け、下に逃げていった。
「逃げたわね」
「結局何だったんスかね?」
「さぁね、でも1つだけ分かったわ」
「何ですか?」
「あの子が言ってた仲間、その子達を追いかければ私達は帰られる方法を見つけられるって事」
あの子の仲間を追いかけるか、確かにそうすれば何か分かりそうだが
間違いなく戦わないといけなくなるだろうな。
あんな化け物みたいな奴らと同時になんて可能性もあるし。
「まぁ、新しい目標は決まったけど、今はこのタワーを最後まで登りましょうか」
「はい」
俺達は先に進むことにした。
そして、階段前には大きな化け物がいた。
「あれは、ホムンクルスね」
「最初に何か付かないんですか?」
「付かないわ、最初のホムンクルスって事らしいし」
ホムンクルス、世界で初めて完成したホムンクルス
最初だと言うが、純粋に攻撃、HPが高く、圧倒的な耐久力を誇る。
しかし、人類には醜い化け物は必要なかったのだ。
と言う説明だったかな。
「まぁ、こいつは結構簡単よ、オークの上位互換とでも思えば良いわ」
「じゃあ、基本戦術はオーク戦と同じですか?」
「えぇ、そうよ」
「今度こそ、あたしがしっかりと前衛をしないと・・・」
「えぇ、期待してるわ」
謎の男の子の後には普通のモンスターか、まぁ、オークの上位互換なら大丈夫かな。
俺達は一斉にホムンクルスに接近た。




