巨大化した恐怖
2階の中ボスはまさかのデカい蜂だった。
その蜂を撃破した俺達は先に進むことにした。
その奥は何だか蜘蛛の巣みたいな糸が沢山ある、露骨にあれが出てきそうな場所だ。
「・・・あの、りえるさん・・・私は蜘蛛とか苦手なんですけど・・・」
「それを私に言われてもね、この先のボスは確かデカい蜘蛛よ?」
「あぁ!やっぱりですか!それだけは勘弁してください!」
明美は蜘蛛が苦手なようだ、なんで嫌いなんだろうか
俺にはイマイチ理解が出来ない、まぁ、ウザったいのは認めるが。
「ふ、ふん!たかが蜘蛛にびび、ビビるなんて、まだまだ子共よねぇ」
とか強がって言ってるが、愛もかなり震えている。
こいつも蜘蛛が嫌いなんだな、全く隠せてない。
「だ、だいじょぶ、く、蜘蛛、蜘蛛なんて、ただの、虫・・・」
そう言うリエさんも結構震えてるんだよなぁ。
どうやらこのパーティーで蜘蛛が大丈夫なのは俺と勇次とりえるさんだけのようだ。
「お前ら、なんでそんなに蜘蛛が嫌いなんだよ、たかが蜘蛛だぜ?」
勇次がしれっとそんな事を言ってのけた、普段なら明美が反発するだろうが
どうにもビビって殆ど動けないようだ。
「そうよね、蜘蛛なんてただウザったいだけでしょうに」
「なんで、お姉ちゃんは、怖くないの?」
「前は怖かったのよ?子供の頃は、でも、いつも母さんよあんたが蜘蛛を怖がってたから
仕方なく私が克服して、蜘蛛を平気になったのよね」
りえるさんはやっぱり出来る姉だったのか。
妹と親の為に苦手を克服するとは、流石だな。
「じゃあ、修介先輩達は何で?」
「俺は虫好きだったからな、と言うか1度たりとも蜘蛛が怖いとか思ったことがないな
まぁ、母さんに頼まれて蜘蛛を潰したときに、その蜘蛛が子どもを沢山生んだときは
ゾッとしたけどな」
「何それ怖いんだけど・・・」
結構昔だけど、今でも覚えてる、新聞を丸めて思い切り叩いたときに
蜘蛛から子どもがわらわら出てきたところを、それ以降退治してくれと言われたら
ティッシュとかで捕まえて外に逃がしている。
「勇次先輩は?」
「俺はガキの頃、蜘蛛の足をもいでたからな、今考えると残酷なことをしてたぜ」
「・・・よく触れるよ」
それ以外に勇次は結構虫に酷いことをしていた、子供の頃だけどな。
よくあるよな、昔の事を思い出したら無邪気に残酷なことをしてた事って。
「さて、そろそろボスね」
「あ、あの、引き返しません?もう素材とかも沢山手に入れましたし・・・」
「あぁ、それは無理よ、仕様か何かしら無いけど後ろが蜘蛛の巣で覆われてるから」
「え?」
後ろを振り向いてみると、確かにさっきまでなかった蜘蛛の巣が沢山出来ている。
本当にここのボスが蜘蛛なんだなと言うのがハッキリ分った。
「うーん、おかしいわね、ゲームの時はこんな仕様は無かったと思うのだけど?」
「今はゲームとか関係ありませんって!もうここは現実世界なんですから!」
「あぁ、それもそうね、じゃあ、リアルであの蜘蛛をみるのか」
「嫌だぁーー!」
明美は大声で叫んだ、それだけデカい蜘蛛をみるのがいやなんだろう。
この調子だと明美、リエさん、愛は戦えそうにないな。
「仕方ないわね、この戦い、私達だけで何とかしましょう」
「ヒーラーが2人ともダウンなんですが?」
「えっと、それは、まぁ、ダメージを食らわないようにしましょう」
「キツい注文っすね」
「お前は中衛だし、まだマシだろ・・・」
この状況、前衛は俺だけか・・・大丈夫か?
まぁ、やるしかないか。
「さて、ここよ」
「いやぁー!みたくないですぅー!」
「じゃあ目を瞑ってなさい!」
「は、はい!」
明美は目を瞑り、耳もふさいでいる。
蜘蛛は鳴かないし耳は良いと思うがな。
「ふ、ふん、く、蜘蛛なんか怖くないし!」
「だ、大丈夫、うん、多分大丈夫!」
2人がそう自分に言い聞かせているとき、目の前でデカい蜘蛛が移動した。
どうやらまだ戦闘する気は無いらしい。
しかし、その姿を見た2人は、更に震え、腰を抜かした。
「やっぱ無理!蜘蛛嫌い!」
「うぅ・・・もう駄目・・・」
「無理なら明美と同じように目を瞑ってなさい!」
「うぅ・・・」
そう言い、2人は目を瞑った。
俺達はその3人を運びながら先に進んだ。
勇次は偵察が主だし、運んでるのは俺とりえるさんだ。
「ところでりえるさん、あいつの名前とか弱点とか教えてください」
「えぇ、良いわよ、名前はヒューマン・イーター、その名の通り主食は人間。
弱点は火で、攻撃手段は蜘蛛の糸での拘束攻撃よ」
ヒューマン・イーター、過去に人間を食し、その味を覚えた捕食者。
彼女は常に人のみを狙い、捕獲した人間をゆっくりと捕食していく。
そして、決して彼女を殺してはいけない、理由は・・・
と言う設定だ、何だか最後の文が非常に気になる、何で殺しちゃいけないんだ?
「さて、見えてきたわよ」
「うわぁ」
俺達がりえるさんが言っている場所をみてみると、そこにはスゲー巨大な蜘蛛がいた。
目とかクッキリじゃん、これは3人がみたら本当に発狂しちまいそうだ。
「さぁ、行くわよ、3人のために、出来るだけ速攻で沈めるわ!」
「殺すのは不味いんじゃ?」
「でも、殺す以外、ここを突破する選択肢はないわ」
「それもそうですね」
殺したら何が起こるのか・・・それは俺も分らない。
だが、まぁ、出来るだけ速攻で倒すか、後ろの3人のためにも。




