決着、ギルティ・ジャック
ギルティ・ジャック、沢山の人々を殺してきた狂気の殺人鬼。
その罪を償うため、永遠にタワー内でタワーを曝こうとする奴を殺してきた不死身の化け物。
あくまでゲーム内での設定でしかなかったはずだが、それが今、目の前にいる。
不死身という言葉を信じるしかないほどの生命力で。
「おらおら!!どうしたよ!!」
ジャックは叫びながらナイフをブンブンと振ってきた。
これを捌くのは結構キツい、クソ!なんでこいつは不死なんだよ!
「クソ!不死身とかずるいぞ!」
俺はその攻撃をなんとか捌く事が出来た、しかし、それでも攻撃はやまない。
「テメーも似たようなもんじゃねーか!クソッタレの化け物さんよぉ!」
俺達はこの世界では死なない、いや、レベルが高い奴限定だが。
この世界は元ゲーム、操作キャラの死亡=そのキャラの消滅だと誰もやらない。
いや、やる奴は居るかもしれないが、基本的には居ないだろう。
そんな仕様だとこのゲームはここまで人気じゃない。
「は!流石にお前みたいに化け物じゃねーよ!」ガン!
「チィ!」グラ
「そら!」ザシュ!
俺は弾いた瞬間にギルティ・ジャックの胴体を突き刺した。
相手が人間なら、その場所は心臓だろう、しかし。
「クク、不死身の化け物に突きとはな!馬鹿が!」
「ぐ!」
ギルティ・ジャックは平然と動き、俺に短剣を腹に突き刺してきた。
普通なら致命傷だ、だが、この世界は元ゲーム、俺もプレイヤーキャラという
化け物になってる、この程度の傷じゃあ、HPを100ちょっと持ってかれるくらいだ。
「痛えっての!」
「当たり前だろう?腹に刺したんだからな!」
ジャックは再びこちらに向かって走り込んで来やがった、せめて少しは怯んで欲しい!
あぁ、クソ!不死身の化け物にどうやって勝てってんだよ!
首でも落とせば良いのか?それでも死にそうにないんだが・・・
「なんとか支援したいけど・・・」
「あたしが行く!」
「止めなさい、あなたじゃ相性が悪いわ」
「なんで!?防御は得意よ!」
「相手が速すぎる、動きが遅い騎士だと防ぎきれないわ」
「じゃあ、修介先輩に全部任せろって言うんですか!?」
「いいえ、そうじゃないわ」
「?」
あたしはりえる先輩が目をやった方向を見てみた。
すると、そこには弓を構えている勇次先輩が居た。
「・・・修介・・・気付いてくれよぉ・・・」
「?・・・し!」
「あ!?笑ってんのか?はは!お前も楽しくなってきたんだな!」
「そうだな!最高だぜ!」
俺は後ろにいる勇次にジャックが気が付かないようしながら
攻撃を凌ぎつつ、こいつを勇次の射線上まで誘導した。
「やっぱ!戦いは殺戮なんぞよりもおもしれえよな!」
「まぁ、殺戮なんかよりは面白いだろうな、だが、これは戦いだ、ルールなんざ無いぞ?」
「知ってるさ!勝った者が正義!ルールなど必要ない!」
ギルティ・ジャックがそう言った直後、勇次の矢が飛んできた。
ドス!と言う音がジャックの方から聞えてきた。
「な・・・しまった・・・」
その矢を受けたジャックは力が抜けたように、ゆっくりと倒れた。
「ふぅ、何を仕込んだんだ?」
「痺れ薬だ、不死身の化け物に毒なんて意味ないからな」
「こ・・・の・・・」
ジャックは痺れている体をゆっくりと引きずって、こっちに近寄ってきた。
「悪いな、ここで下手に消耗はしたくないんだ」
「く・・・そ!、もっと、俺と・・・戦い、やがれ!」
「不死身の化け物とこれ以上戦えるかよ」
こうして俺達はギルティ・ジャックの動きを封じ、その間に後ろの階段を駆け上がった。
それにしても、初級タワーの第1階層であんな化け物相手とか
この世界、鬼畜過ぎるだろう・・・
「修介、お疲れ様、疲れたでしょ?」
「えぇ、そりゃあ、もう、不死身の化け物ですからね」
「そうよね、それに、魔法まで効かないんだもの」
「確実に、強化、されてる」
「えぇ、魔法無効の相手なんてゲームの時は居なかったし」
「それに、どうやら設定ってのが現実化してるみたいっすね」
「その様ね、となるとこの先かなり苦戦しそうだわ・・・」
りえるさんは頭を抱えている、まぁ、俺もその理由は大体検討が付いている。
このゲーム、つまりランクタワーのモンスターの設定はぶっ飛んでるのが多い。
闇の力を持つとか、光で全てを浄化する、とかの設定があるモンスターが後半には沢山居る。
もし、その設定が具現化したら、勝てる訳ない、みたいなのもあったりするからな。
「はぁ、ランクタワーのモンスター説明文がもうちょっと軽い奴だったらね」
「どんなのが居るんですか?」
「そうね、1つ例を挙げてあげるわ、それは、エターナル・グリフォンとかね」
エターナル・グリフォン、永遠の命を持つグリフォン、常に主の命をその身に刻み
主以外のいかなる者を拒絶する、その力は莫大であり、命を奪うことに特化している。
鋭利に伸びたその爪は、相手の全てを掴む非情の爪だ。
と言う説明文だったはずだ、何か、全体的に恐ろしい設定だよな。
もし、この設定が具現化したら勝てないんじゃないかな。
「凄いでしょ?勝てると思う?」
「いや、無理ですね」
「勝てる気がしない」
「でしょ?」
「でも、こうなると武器とか防具とかの設定も具現化するんじゃないですか?」
「あぁ、それはあり得るわね」
現に俺が今持ってる刀、愚狼の剣は相手に怯むことが無くなると言う説明があったが
実際俺はあいつ相手でもそこまで怯んでなかった、やはり、装備の設定も
具現化しているみたいだな。
「だとしたら、クリムゾンシリーズなんて装備出来ないわね、あの武器の説明は怖いし」
「そうですね、自分を傷つけてでも血をほしがるとか、全ての生き物の生命を奪うとか」
「そうよね、効果は凄いのだけど、作らなくてよかったわね」
「ですね」
もし、あの装備を持っていたら、仲間だろがお構いなく攻撃してたんだろうな。
あぁ、怖い怖い、装備の説明とかしっかりと読まないとな。
まぁ、それは良いか、今はこのタワーの2階の攻略に力を入れよう。




