ヤバくなる状況
あの吸血鬼が姿を消したとは言え、ピンチなのは変わらないんだよな。
ミミさん達には追いかけ回されるし、あの吸血鬼の不意打ちも怖い。
それに、消えるときに言った言葉、あの言葉がひたすらに不気味だ。
なんか、上級タワーはいつぞやのホラーダンジョン並に怖い気がする。
「・・・」
「くぅ! あぁ、なんで無言なのよ! 怖いわ! 無言ってだけで怖いわ!」
「無言で襲いかかってくるとか、本当にホラーですよね」
「それも、仲間がだから、本当に、嫌だ」
無言で追いかけ回してくる仲間に、不気味なことを言い残して姿を消した吸血鬼。
完全にホラーだ、このタワー、1階もそうだったが、マジやばい。
「ふふ、避けてみぃ!」
さっきまで姿を消していた吸血鬼が、いきなり正面に現われて、俺達に攻撃をしてきた。
「げ! シルス!」
「がう!」{任せろ}
シルスはその攻撃に即座に反応し、左方向に避けた、シルスに乗っていない俺は右だ。
行動が終わりかけたときに、俺はその攻撃の射線を確認して、分ったことがある。
この攻撃、俺達を狙った攻撃だけじゃない! 俺達が避けた後、後ろに居る明美を狙った攻撃!
明美は暴走しているんだ! 多分、避けようとはしない!
「く、クソがぁぁ!」
俺はその事に気が付き、俺は急いで射線上に戻り、その攻撃を盾で防ごうとした
だが、距離が開きすぎてる! 盾を正しい状態で構えてたら防げない!
こ、こうなったら! 腕が少しくらいダメージを受けようと関係ない!
腕を伸ばしてでも、止めてやる! ま、間に合ってくれ!
「間に合えぇ!」
俺の腕はギリギリでその攻撃に届き、何とかその攻撃を防ぐことが出来た。
「うぐぅ!」
だが、威力はかなりの物で、俺が伸ばした腕は、接触と同時にはじき飛ばされた。
俺ははじき飛ばされた腕に引っ張られて、少し回転しながら、吹き飛ばされた。
「修介君!」
「ふ、やはり儂のもう一つの狙いに気が付いたの、逃げたことで仲間を失ったという罪悪感を
与えようと思ったが」
「やっぱり、お、お前、酷いな・・・」
「じゃが、結果として犠牲など出ずにお主を撃ち落とせた、これで儂の勝ちじゃ」
さっきまで離れた場所にいたはずなのに・・・この吸血鬼、いつの間にこんな近くに・・・
「ふふ、では、貴様の血をいただこう」
吸血鬼の少女の顔が目の前まで迫ってきた・・・こんな状況だってのに、体は動かない・・・
「うりゃぁ!」
「ぬお!」
俺はあと少しで噛まれそうになっていたのだが、俺の頭の上に乗っかっている
癒子が吸血鬼に強力な蹴りを入れた、その不意打ちを受けた吸血鬼は少し退き距離が離れた。
「吸血鬼! 修介君から、離れなさい!」
「む!」
少し離れた場所に退いた吸血鬼めがけて飛んできた弾丸が吸血鬼の胴体を貫いた。
吸血鬼の少女はその衝撃で俺から離れて、その血が流れている胴体を押えた。
「むぅ、小さな護衛と遠距離攻撃か、厄介じゃな」
そして、冷静な口調でそう呟き、撃ち抜かれた場所を押えていた手を離すと
胴体から流れていた血がぴたりと止んでおり、撃ち抜かれた怪我も完治している。
あの一瞬で、あそこまでの回復速度・・・ホムンクルスでも、あり得ないぞ!
「もう1発!」
「おぉ、怖いのぅ」
吸血鬼の少女はりえるさん達を挑発するように怖いと言い、姿を消した。
しかし、消える直前の表情は、完全に笑っており、全然怖がっていそうになかった。
「くぅ! 逃がした! でも良いわ! 修介君! シルスに乗って!」
「で、でも、3人も乗せたら・・・速さが」
「大丈夫よ、私が降りる!」
「後衛なのに降りたら追いつかれますよ!」
「スナイパーは前衛ほどじゃないけど、足は速いのよ、ほら、文句言わない! 奈々」
「うん」
りえるさんはシルスの背中から降りて、奈々に俺を引き上げさせた。
「り、りえるさん、無茶だ・・・」
「大丈夫、私が守るから」
俺を引き上げた後、奈々もシルスから降りて、りえるさんの近くに立った。
「そう、心強いわね」
「そうでしょ? 優秀なホムンクルスの護衛だからね」
「じゃあ、あのホムンクルスの迎撃をしないとね」
りえるさん達が降りたとほぼ同時に、後方から追いかけてきていた真野と梨々が2人に飛びかかった。
「梨々! いい加減に! 元に戻りなさい! この馬鹿!」
奈々はこっちに飛びかかってきた梨々よりも上の方に飛び上がり
脳天に全力のかかと落としを食らわした、それを受けた梨々はすごい勢いで地面に叩き付けられた。
「ちょ!? 奈々!! それ、死んだんじゃないの!?」
「良いから、りえる、早く目の前の真野を!」
「く、分ったわ、まぁ、ホムンクルスだし、多少痛くても大丈夫でしょ{ショックスナイプ}」
りえるさんは飛びかかってきた真野に素早く照準を合わせ、引き金を引いた。
ショックスナイプを受けた真野は後方に吹き飛ばされて、ぶっ倒れた。
ショックスナイプだし、気を失うのか?
「死んでないわよね?」
「大丈夫、私達はそんなにヤワじゃない、意識は失うだろうけど」
「うぅ・・・い、痛い、頭が割れるくらい痛い・・・」
脳天に強烈な一撃を貰った梨々が頭を押えながら喋りだした。
「喋った!?」
「うぅ、私だって、言葉くらい話せるよ・・・って、あ、あれ? 何でそんな真剣な表情してるの?」
「あ、い、いや、あなた、自分がどうしてたか、覚えてないの?」
「ん? どうしてたか? それ位覚えてるって! 大きな絵を見てたの・・・あ、あれ? あの絵は?」
どうやら、暴走していた頃の記憶は無いようだな・・・でも、意識は戻ったようだ。
じゃあ、もしかして真野の方も!?
「うぅ、お腹痛い・・・」
「真野!?」
さっきりえるさんに狙撃された真野の方も、ゆっくりと立ち上がろうとしている。
しかし、2人の後方を走っていたミミさんが真野を狙った。
「ん? ひゃわぁぁ!」
ギリギリで意識を戻した真野はミミさんの攻撃を寝ている状態で回転しながら回避した。
「え、え? 何で? 何で攻撃されたの!?」
「真野! こっちに来い!」
「へ? へ? うぅ、わ、分ったよ!」
真野は状況を理解できていないようだったが、俺達の方に走ってきた。
それとほぼ同時に後ろにいたミミさんが、さっきまで真野が倒れていた場所に斧を振り下ろした。
あと少し動くのが遅かったら、真っ二つにされてたかもしれないな・・・
「はぁ、はぁ、ど、どうなってるの!?」
「どうやら、神々しい絵? とやらを見た人が操られてるようなのよね」
「え? じゃあ、私も操られてたり?」
「そうよ、操られてたわ、いきなり修介君に抱きついて苦しめてたわ」
「私、そんな事をしてたんだ・・・でも、苦しめてたの? 抱きしめただけで?」
「とんでもなく力が強かったからな、苦しくてな」
「そうなんだ・・・」
真野は少し複雑そうな表情を見せたが、あまり細かい事を考えてる暇は無い。
「とにかくよ! 今は逃げるわ!」
「え? あ、うん、分った!」
2人を正気に戻したからと行って、現状では逃げる以外の有効だがない。
本当に、厄介だな、でも、とりあえずこの状況を打破する方法は分った。
あの吸血鬼が姿を見せたときに倒し切れれば・・・でも、すぐに傷が治るのは厄介だな。
そしてもう一つ、操られた仲間を助ける手段も分った、気絶させれば良いんだな。
まぁ、あまり攻撃は出来ないから、状況は大して変わってないんだけどな。




