上級タワー2階の奇妙な部屋
触手のモンスターを撃破して、次の階に俺達は向った。
そこは、教会のような大きな部屋が1つしか無かった。
「・・・何ここ? 随分と雰囲気が変わったわね・・・」
「そうだね、1階とはまるで別世界だよ」
「うん! 1階よりも明るいし! それに凄く広い!」
「そうだな、明るすぎるし、広すぎる・・・不気味だな・・・」
ここはタワーの内部の筈だ、そして、正面にある大きなステンドグラス、あんなの、外から見えたか?
「・・・凄く、不気味」
「そうでしょうか? 凄く明るくて綺麗じゃないですか! ほら、ステンドグラスも綺麗ですし!」
「・・・まぁ、確かにカラフルで綺麗なのは認めよう・・・だが、あの絵は不気味だろ」
ステンドグラスに描かれている絵は、天使が羽をもがれている絵だった。
明らかに教会とかの絵じゃないし、血が鮮明に書かれており、不気味でしかない。
こんな絵を見て、綺麗だとか絶対にあるえない。
「・・・? そんなに不気味ですかね? 何か神々しくないですか?」
「は? お前、大丈夫か!? あの絵の何処が神々しいんだ? 禍々しいの間違いだろう?」
「そうよね、あの絵はあり得ないわ・・・グロテスクよ」
「うん、私もそう思う」
「うちには神々しく見えるんだけどね、胸が大きいからうちの趣味じゃないけど」
「あたしも神々しく見えるなぁ、でも、胸が大きいのは気に入らない」
・・・ど、どういうことだ? 何で俺達3人と、明美達3人で意見が食い違う?
見る角度か? いや、何処からどう見ても俺には天使が羽をもがれているようにしか見えない。
「な、なぁ、真野、お前はどう見えるんだ?」
「神々しい女の人だよ、でも、何だか羽が黒い気がするけどね」
・・・羽? あのステンドグラスには、確かに黒い羽を生やした少女が天使の羽をもいでいるな。
でも、やっぱりどう見ても神々しさなんて感じないな・・・
「私は黒い羽が生えた女の人が見えるよ! 神々しくはない気もするけど、あんなスタイルに憧れるな」
「グロテスクじゃないの、見ない方が良いわよ」
「グロテスク?」
「血が沢山出てるわ、あなたが見るような物じゃない」
「え? 血なんて何処にも流れてないよ?」
「は?」
どうやら、奈々は俺達と同じ物が見えているようだな。
もしかして、人によって見えている物が違うのか?
と言うか、ここまで来たらそうとしか考えられないな。
「美香は?」
「黒い羽を生やしてるお姉さんが見えるよ!」
「血は出てないか?」
「うん、そんなのは全く」
美香は俺達とは違う物が見えているのか・・・一体、どうなってる?
「がう」「・・・お前らは一体何の話をしている? 血? 女? そんな物何処にもないぞ?」
「は? あの正面にある奴、見えてないのか?」
「がう」「あぁ、お前達が見ている場所は何もない壁だぞ?」
「あ! 目が開いた!」
「は!?」
真野がシルスが言った言葉を通訳してくれたほぼ同時に、明美達神々しい物が見えると言っていたメンバーが一斉に大声でそう叫んだ、俺達は当然すぐにその方を見てみたが、目なんて開いてない。
いや、そもそも、そこにステンドグラスなんて見えなかった。
「消えた!?」
「ど、どうなってるの!?」
「そんな! でも、さっきまで確かに!」
俺達はその状況をまるで呑み込むことが出来無かったが、状況はすぐに動いた。
「・・・」
「真野?」
俺が唖然としていると、真野がいきなり俺を抱きしめてきた。
確かに移動の時、こいつは俺を抱きしめてくるが、今は移動中じゃない、それに、ゆっくりと力が!
「うぐ! 苦しい! 止めろ!」
「・・・・・・」
俺は急いで真野の方を向き、大声でそう叫んだが、真野は虚ろな表情をしたまま、力を強めていった。
クソ! 何だ!? どうなってる!
「真野ぁ!」
「・・・・・・」
俺の問いかけにも真野はまるで答えようとはしなかった。
そして、異変はこの程度では終わらなかった。
「真野! 何してるの!?」
りえるさん達が俺の心配をしてくれて、俺の名前を叫んでいる、が、その後ろでは
後方で後衛の全員を守っていたミミさんがりえるさんを攻撃するために斧を振り上げている!
「り、りえるさん! う、後ろぉ!」
「後ろ!? は! ミミ!?」
ミミさんの斧が今まさにりえるさんに振り下ろされそうだ!
こ、このままじゃ! りえるさんが! で、でも、俺も動け無い・・・
「お姉ちゃん!」
「やらせない!」
ミミさんの斧がりえるさんを攻撃する直後に近くに居た奈々がミミさんを思いっきり殴り飛ばした。
普通ならあんな思いっきり殴られれば大声で叫びそうだが、ミミさんは沈黙のままで飛ばされた。
「奈々、良くやった! ぐぅ・・・」
りえるさんの危機は何とか逃れたが、つ、次は俺がそろそろヤバいかもしれない・・・
ほ、ホムンクルスが怪力なのは、分ってたが・・・実際、本気で締め付けられると、や、ヤバい!
「くぅ、し、組み付かれてたら、影走りとかも出来やしねぇ・・・」
「修介君! 梨々がそっち行ったわ! 食らっちゃ不味い!」
「ぐぅ! 済まない! 真野! シルス!」
「がう!」{これは痛いだろうな}
俺の指示が何なのかをシルスはすぐに把握したようで、梨々の一撃が俺に当る直後に、ほんの少しだけ
前に動き、梨々の攻撃は俺に組み付いている真野に直撃した。
「ぐぅ!」
しかし、真野はそれでも俺を離さずに引っ付いていたせいで、俺もその勢いでシルスから
吹き飛ばされてしまった、そして、その勢いで地面に何度か激突、そこで力が限界を迎えたようで
真野は俺か手を離した。
「ケホ! ケホ!」
何とか解放されたが、締め付けによるダメージは結構デカく、俺は少しの間咳き込んでしまった。
正直、殆ど動けそうにない、そんな状況、だが、俺が少しだけ前を見てみるとそこには
俺を狙っている明美の姿が見えた。
「{ファイアー}」
明美はスキル詠唱の言葉だけを喋り、俺に向ってファイアーを放ってきた。
「ぐぅ!」
俺はそのファイアーを寸前で何とか回避して、再び咳き込んだ。
だが、休む暇は無いようで、今度は俺の方に狙いを定めたミミさんが走ってくる。
クソ・・・す、少しくらい、呼吸を整える時間をくれよ・・・
「がう!」{ぬぉぉ!}
ミミさんが俺に最接近しそうになった時に、後ろから走ってきたシルスがミミさんを背中から踏んづけた
その攻撃でミミさんはすぐにバランスを崩し、地面に倒れ込んだ。
「がう!」{のれ! 急げ!}
「分った・・・」
俺は何処からか聞えてきた声に従い、隣で伏せてくれていたシルスの背中に乗っかった。
シルスは俺が背中に乗ったことを確認し、すぐに愛に攻撃されているりえるさん達の方に向った。
「ぐがぁ!」{いま救うぞ!}
シルスはかなりの勢いで隣から愛に体当たりを行なった。
愛は側面からやって来たこの強烈な一撃を防ぐことが出来ずに、バランスを崩し、倒れた。
一応予想は出来ていたが、一切の声も上げずに、無言で倒れた。
「修介君! 良く切り抜けた物ね・・・」
「シルスのお陰で、何とか・・・」
「それにしても、どうしてこんな事に・・・」
「分らない・・・さっきまで普通に話してたのに・・・」
多分、と言うかほぼ確実に明美達がステンドグラスに映っていたという絵の異常が起こったときだろう。
まさか、あのステンドグラスに仕掛けが? そうとしか考えられない。
なんせ、あの時、俺達は確かにステンドグラスが見えていたというのに、今は見えていない。
今は不自然に明るい大きな1つの部屋になっているんだからな・・・
「・・・理由は分るんだけど、どうすれば良いかは分らないわね・・・」
「はい、もうこうなったら、あまり皆にダメージを与えないようにして、原因を探るしかなさそうですね」
「そうね、それしか無いわ」
俺達は暴走している仲間達の攻撃を凌ぎながら、原因を探るしか無くなったと言う事か。
相手の方は一切の加減をしてこない、なのにこっちは攻撃出来ない・・・最悪の状況だな。
とにかく、さっさと原因を探らないと、全滅も十分あり得るぞ。




