上級タワー1階のボス、アグリゲーツ
あの後、何度かあの兎の奇襲を受けたが、対処法が分かっているため、殆ど脅威では無かった。
あいつは単純に最後に言葉を発した物の声しか真似ることが出来ない。
なら、会話をしていれば、攻撃を仕掛けてくるときにその人物の悲鳴が聞えるという事だ。
これなら、すぐにその声が偽物だと分かるだろう、だから、もうあの兎は脅威ではない。
しかし、兎は敵じゃ無くなったが、煩わしいことに変わりは無い。
さっさと次の階へ進むための階段を探さないと。
「階段、何処にも無いわね」
「そうですね、早く見付けたいですよね、あの兎も煩わしいし」
「あ、皆さん! あそこです! 薄らとですけど階段が見えますよ!」
明美が指した方を見てみると、確かに薄らと階段が見えてきた。
しかし、その場にこの階のボスとかはいそうにないな。
「ボスはいないのね、この階」
「そうみたいだね、まぁ、念の為にうちが見てくるよ」
「ミミさん、1人って、危ないですよ?」
「大丈夫さ、ただ階段を見てくるだけなんだから」
「まぁ、そうだけど、一応私達も後ろから付いていくわよ」
「はいはい、勝手にしなって」
ミミさんを先行させて、俺達はその後ろをゆっくりと警戒しながら進むことにした。
しかし、何処にもモンスターはおらず、俺達は何の障害も無く階段近くまで来ることが出来た。
「本当に何も出て来なかったね・・・はぁ、期待してたんだけどね、拍子抜けだよ」
「まぁ、障害が無い事は良いことでしょ? ほら、さっさと行きましょう」
「そうだね」
ミミさんは少しがっかりしながら、階段の方まで進んだ。
「ぎみゅぅぅ!!」
「なぁ!?」
ミミさんが階段を上ろうとすると、足下からいきなり大量の触手が出てきて、ミミさんを完全に捕えた!
馬鹿な!? さっきまで何もなかったってのに!
「あ、ぐぅ・・・こ、この、何処から・・・!」
「ミミ!」
りえるさんは急いでミミさんを拘束した触手を狙い、狙撃した。
その弾丸は確実にその触手を撃ち抜き、風穴を開けた筈だが、すぐに回復した!
「は、はぁ!?」
「みゅるぅぅ・・・」
「貫通攻撃は即座に回復するのか!?」
「ぐらぁ!」「しっかりと掴まれ! 修介!」
「お、おう!」
その瞬間に、シルスが素早く反応して、凄い速さでその触手の方に向って突撃を始めた。
「い、痛! 何刺して!」
「ミミさん!」
「おわぁ!」
俺はシルスが飛び上がり、その触手に最接近した瞬間に触手を斬った。
そして、すぐに触手はミミさんを落下させた。
「キャッチ!」
その後すぐに後ろに乗っていた真野が落下しかけていたミミさんをキャッチして、落下を阻止した。
「みゅるぅぅ!」
「がう!」
そのモンスターはその一連の動作が終わったとほぼ同時に触手で俺達に攻撃を仕掛けてきたが
シルスがその攻撃を蹴り、後ろに飛び下がり、距離を取った。
「流石シルス!」
「がう!」「早くりえる達と合流するぞ!」
シルスは距離を取り、すぐにモンスターに背を見せ、りえるさん達の方に合流した。
「ミミさん!? 大丈夫ですか!」
「お陰様で、大丈夫だよ・・・ただ、力が全く入らないだけだから・・・」
「力が全く入らない? どういうことですか?」
「拘束されてる間に、何かに刺されちゃってね、その後、力が入らなくなったんだ・・・」
「脱力状態ね、この状態だと体に全く力が入らなくなって、攻撃力が1になる
それが、リアルで発動したら、こんな風になるんでしょうね」
「大丈夫なんですか!?」
「毒ではないし、大丈夫よ、ただ、しばらくの間はミミは戦えないでしょうけど」
「みゅるるぅぅ!!」
折角拘束したミミさんを取り替えされて、あのモンスターは心底機嫌が悪そうだ。
「つまり、しばらくの間は俺達だけであのモンスターを足止めしないと駄目って事ですか」
「そうなるわね」
「がう」「異常状態を操る奴か私の友人にもそんなトカゲがいたな」
「バイオリザードだろ? 攻撃したら毒液が出てくる」
「がう」「あぁ、そうだ、良く覚えているな、まぁ、奴よりは弱い方だろう」
確かにそうかもな、バイオリザードは攻撃する度に毒をまき散らす。
でも、こいつは針で刺さないと毒を送ることが出来ない、ま、隠し球とか持ってるかも知れないけど。
「警戒はした方が良いな、隠し球があるかも知れないし」
「がう」「そうだな、警戒するに越したことは無い」
「みゅるるぅぅ!!」
どうやら、あっちもそろそろ我慢の限界のようだな。
それじゃあ、少し俺達は不利な状況だが、戦うしか無いか。
「がう!」「ゆくぞ! 本体に接近する!」
「愛! りえるさん達はお前が守ってくれよ!」
「分かった! 修介先輩! 気を付けて!」
「がぅあぁ!」「最高速で接近する! しっかり掴まれ!」
「よし!」
シルスは俺の返答を聞くと、すぐに凄い速さでそのモンスターに接近を始めた。
「みゅるぅ!」
触手のモンスターは当然ながら、俺達に触手を使った攻撃を仕掛けてきたが
シルスはその攻撃をいともたやすく回避しながら、触手のモンスターに接近していった。
「あと少し!」
俺は真野のその声の後に、手に持っていた剣を握り直した。
一撃で沈めることは出来ないだろうが、結構なダメージは与えてやる!
「だらぁ!」
「みゅぅぅ!」
シルスがその本体の近くを横切った一瞬、俺はその触手のモンスターを斬った・・・筈だ。
しかし、何だか手応えが妙だと感じた・・・妙というか、まるで手応えが無かった。
だが、あのモンスターは確かに苦しんでるし、ゆっくりと倒れている・・・
「やったぁ! もう倒せそうだよ!」
「・・・あ、あぁ」
「ん?」
確かにもうそろそろあいつは倒れそうだ・・・だが、俺はどうしても違和感しか感じない・・・
触手のモンスターの本体はゆっくりと倒れ込んだ、と、同時に靄が掛かったように消えた!
「消えた!?」
「みゅるぅぅ!」
「がう!」
消えたと同時に、目の前から鳴き声、そして、俺達の周りは完全に触手に包囲されていた!
シルスはその状況に瞬時に気付き、後方に後方に抜け出そうとしたが、もうすでに包囲されている!
この状況だ、どれだけシルスの反射能力や身体能力が高かろうと、抜け出すことは困難、いや、不可能!
「修介先輩! 真野! シルス!」
「うわぁぁ!! つ、捕まっちゃうよぉ!」
「がうぁぁ!」{うかつだった! まさか、擬態などが出来るとは!}
「消費がヤバいし、あまり使いたくは無かったが・・・{ロイヤルフイム}」
俺はその状況で、瞬時に新しく覚えたスキル、ロイヤルフイムを放った。
この魔法は発生点を自由に設定できるし、仲間に当らないように魔法を使うことが出来る魔法だ。
「みゅぅぅ!!」
俺のロイヤルフイムを受けた周りの触手達はかなりの高熱にやられてか、1本、また1本と破裂した。
「がう!」「今だ!」
シルスはそのチャンスを逃すこと無く、すぐにその場から離れ、包囲を脱した。
「よ、良かった、危うく私達一気に捕まっちゃうところだった・・・」
「あぁ、ロイヤルフレイムを覚えてて良かったぜ」
これがなかったら、絶対に捕まっていただろうな。
テンペストは自分を中心に撃つことは出来ないし、ストームは正面だし。
まぁ、俺だけ助かる方法なら他にもあったんだけどな。
「みゅ、みゅるぅぅ!!」
心なしか、さっきよりは弱っている気がする、本体に当てたっけ? 俺の攻撃。
「あなた達! 良かった!」
「修介先輩! さっきの炎! 格好良かったよ!」
「さぁ! 後は私が暴れちゃうから! 2人は下がっててね!」
そんな声が聞えて、後ろを振り向いて見ると、梨々がもの凄い勢いで俺達の方に走ってきていた。
「梨々! 1人で突撃しても勝てないわよ!」
「私1人でも大丈夫!」
「でぇい! ちゃんと協力しろぉ!」
その行動に珍しく真野が怒り、梨々を組倒した。
「いたぁ! 何すんのさぁ!」
「1人でどうこうなるわけ無いじゃん! 大人しく協力しろぉ!」
「そうよ! この馬鹿!」
「お姉ちゃんまで! わぁぁ! 何でみんなして、私の邪魔をするのぉ!?」
「「暴走してるから!」」
モンスターを目の前にして、こんなコントが出来るホムンクルス組スゲーな。
どんなメンタルしてるんだよ。
「がう・・・」{随分と余裕だな}
「ん? あ、いや、違うか」
さっき、何か何処からか声が聞えたが・・・まぁ、気のせいだろう。
「みゅるぅぅ!」
「修介君! 後ろよ!」
りえるさんの叫び声が聞えて、俺はすぐに後方を振り向いて見た。
触手が俺の方に伸びてきている、しかし、すぐに銃声も響き、その触手を撃ち抜いた。
「みゅるぅぅ!!」
触手は正面から弾丸を受けたためか、再生することなく砕けた。
そして、触手のモンスターの本体が少し叫びながら暴れ回っている。
「ちぃ、やっぱり距離を取った方が良さそうだな」
「梨々を急いで運ぶよ! ダイアちゃん!」
「がうあぁぅ」
「わぁぁ! また引っ張ってぇ!」
「みゅぅぅうぅ!」
「この!」
俺達は突進してきた梨々を全員がいる場所に急いで運んだ。
「とにかく作戦を考えないと不味そうよね」
「はい、そうですね」
「じゃあ、その間の時間稼ぎを私はしてきます!」
「明美先輩、あたしも手伝うよ!」
「うん、ありがとう!{召喚、アイスドッグ}」
「キャウン!」
「触手が来たら迎撃して!」
「アン!」
作戦を考えている間、明美と愛があの触手の注意を惹きつけてくれるようだ。
なら、急いで作戦を考えないとな。




