暗闇の暗殺者
さてと、上級タワーの入り口まで来たな、そして、梨々がここに来るまでにぶつけた回数は
12回だな、何であんなにぶつけてるのに一向に起き上がろうとしなかったんだ?
「良くあんなに頭をぶつけたのに起き上がらなかったな」
「・・・気を失ってたの・・・だから、あ、頭が凄く痛い・・・」
梨々は少し半泣きになりながら、頭をさすっている。
しかし、意識を失うくらいに頭を打ったのに、軽くさするだけで大丈夫なホムンクルスってスゲーな。
「ま、まぁ、大変だったな」
「うん・・・でも、もう大丈夫だから!」
で、軽くさすっただけで完全回復してやる気爆発させる辺り、頑丈だというのがよく分かる。
普通ならしばらくの間うずくまってそうだけどな。
「それじゃあ、行きましょうか、上級タワーに」
「そうですね」
「うぉぉぉ! ここでも大活躍してみせる!」
「元気ね、あんなに長い間引きずってたのに」
「あはは! 暴れるよ!」
「がぁぅ」「結局ここまで来てしまったか」
「がぁうあぅあぁ」「うーん、頑張ろう!」
「「いえーい!」」
「元気だなぁ・・・これから危険な場所に行くってのに」
「元気なのは良いこと」
さてと、そんじゃあ、危ない橋になるだろうが、行かなきゃならないし、やってやるか。
まぁ、その前に一応持ち物とかを確認しておかないとな。
「最終確認でもしてるの?」
「えぇ、まぁ、危険な場所ですからね、確認は重要だと思いましてね」
「まぁ、そうよね、特にあなたの場合は」
「まぁ、蘇生魔法とかあるんで、最悪の場合は頼みますね」
「分かった、私に任せて」
まぁ、死なないようにするのが1番だけど・・・とにかく荷物の最終確認しないとな。
えっと、薬草、上薬草、回復薬、魔力草、蘇生薬に復活草・・・よし、ちゃんとあるな。
「準備は良いかしら?」
「はい、準備はちゃんと出来てます、確認もしましたし」
「よし、じゃあ、行くわよ!」
「はい!」
俺達は上級タワーの扉を開けて、中に入っていった。
タワーの中は予想以上に明るいとは言え、薄暗いな。
俺達はランタンを取りだし、周囲を照らしながら進むことにした。
「うぅ、やっぱり探検家って何でも入る鞄があってズルいよ」
「まぁ、良いだろう、お前らもちゃんと周りが見えるんだからさ、それに、何も持ってない方が
素早く行動できるし、派手に動けるぞ?」
「あ、確かにそうかも!」
ランタンなんて持っていたら、敵に遭遇したときにすぐに戦えなくなるからな。
大切なアイテムだし、壊れたら困る。
「だから、頼りにしてるわよ」
「おぉー!」
「うーん、こんなに明かりがあるんなら、うちは消しても良い様な気がするんだけどね・・・
それに、確かに薄暗いけど、真っ暗って訳じゃ無いからさ」
「確かにそうなのだけど、不意打ち対策よ」
「まぁ、分かるんだけどね・・・」
りえるさんとミミさんが会話をしていると、後ろから何か大きな物が走り抜けるような音がした。
「な!」
俺達は一斉にその音に反応して、後ろを振り返ったが、そこには何も無かった。
「な、なんの音だったんだ?」
「てりゃぁ!」
俺達がその音に意識が夢中になっていると、梨々のかけ声と同時に
何かが思いっきり蹴られたような音が聞えた。
「梨々?」
そして、俺達がそのかけ声がした方に振り返ってみると、梨々が牙が恐ろしく出ている
兎のような化け物を思いっきり蹴っ飛ばしている姿が見えた。
「な! なんじゃありゃぁ!?」
「どしたの? ってか、なんで皆振り返ってたの?」
「え? お前、音が聞えなかったのか? ってか、それよりなんじゃあの化け物は!」
「皆が何かに反応して、ほぼ同時くらいかなぁ、あの兎みたいなのが暗闇から出てきたんだ
だから、私は急いでその兎を蹴ったんだよ」
ま、マジかよ・・・変な物音がしてほぼ同時に音も無く近寄ってくるモンスター・・・
それも、かなり鋭利な牙を持っているって・・・ヤバすぎだろう。
「まさか、あの音はあのモンスターの罠!?」
「知らない!」
「うぐぅ、か、かなり厄介なモンスター・・・本当に梨々ちゃんが対応してくれて良かった・・・」
「どうだ!」
「と、とにかく追撃を!」
俺達が急いで追撃を仕掛けようと武器を構えると、その兎のキモいモンスターは暗闇に姿を消した。
「く、皆、武器を構えて! 後衛職を中心に円陣組んで!」
「はい!」
俺達はりえるさんの指示でりえるさん、明美、リエさんを中心に円陣を組んだ。
「音に惑わされないで・・・前だけ見るのよ!」
「分かってます!」
「ウザったいけど、仕方ないね」
そして、円陣を組んで少しすると、後ろから大きな金属音が聞え、ミミさんの叫び声が聞えた。
でも、何かおかしい・・・ミミさんの方に行ったんなら、あの人が悲鳴を上げるわけが無い。
あの人の事だ、普通なら来たね! とか言いながら異常な程の速さで反応して相手を攻撃するだろう。
でも、そんな事も無く悲鳴? あり得ない! じゃあ、まさか!
「俺の方か!」
俺は暗闇から音も無く現われた兎のモンスターに反応して剣で応戦した。
兎のモンスターはその攻撃を回避できずに直撃、そして、吹き飛ばされて
もう一度暗闇に姿を消した。
「修介君!? どうしたの!」
「俺の方に来ました! 攻撃したけどすぐに消えた! それに、俺達の声も真似できる!」
「あの虫のモンスターと同類!? 嫌なんだけど・・・」
「あ、あぁ、擬態してこない分、まだマシだけど・・・厄介だな」
「まぁ、分かったわ! 要するに仲間の悲鳴とかが聞えても振り向いちゃ駄目よ!」
「くぅ、最近、こんなウザったいモンスターが多くないかい? 嫌になるね・・・」
「そうよね・・・嫌になるわ・・・それに、よりにもよって兎なのよね、私、兎大好きなのに・・・」
「あの気持ちの悪い顔をみて、兎とは思わない」
「ま、そうよね、姿が似てるだけ、あれよね、バニーガールとかと同じ感覚で見ることにするわ」
こんな状況で、そんな事を言うんだな、もしかして、俺達を支えるために言ってるのかもな。
「そうそう、バニーガール、あのコスプレだよ」
「バニーガール、うちはそんなに好きじゃ無いね、生えてるわけじゃ無いし」
「まぁ、付けですからね」
「でも、りえるはあれだね、本当に生えてるから良いね」
「い、一時の気の迷いよ、今は少し後悔してるんだから」
「キャー!」
りえるさんが色々と話している最中にりえるさんの悲鳴が聞えた?
そうか、そうだな、あの会話は嘘の悲鳴を見分けるためか!
「来たね! おりゃぁ!」
ミミさんのかけ声と、地面を思いっきり叩いた音が聞えた。
「仕留めた!?」
「確かに当てたんだがね・・・どうやら、まだ動けるらしい」
「全く、厄介ね、にしても、ターゲット以外には声は聞えないのかしら」
「なんだい? 聞えなかったのか?」
「えぇ、皆はどう?」
「あたしは聞えなかった」
「私は聞えたよ? りえるの声だったね!」
「私は聞えなかった・・・」
どうやら、ホムンクルス組には聞えたようだが、探検家組には聞えなかったようだ・・・
でも、俺は探検家なんだが、聞えたんだよな・・・ウェルザが言ってた奴の影響かもな、これは。
「まぁ良いわ、会話を続ける、これで悲鳴も関係筈よ」
「あぁ、そう言う意図があって会話をしていたんだ、あたしは何でこんな状況で会話してるのか
疑問に感じていたんだけど」
「そうなの?」
「そうですよ、私も集中してたから、なんで話してるのか、分からなかったんです」
「ミミとリエは?」
「私は気づいてた、お姉ちゃんがこんな時に意味の無いことをするわけ無いし」
「うちは気付かなかったな、とりあえず会話をしていただけだよ」
「ふーん、修介君は?」
「俺は気付いてました、最初は訳が分からなかったんですけど」
「うおぉ!」
ん? あぁ、今度は俺の声か・・・何でその相手が話しているときに聞えてくるんだ?
タイミングが良いのか? それとも最後に声を出した相手の声しか真似できないのか?
「あたしの方!」
「盾で打ち上げて!」
「うん!」
大きな金属の音が聞えた。
「そこ!」
そして、何発かの銃声が響いた、この距離で銃声を聞くのは耳が痛くなると思ったのだが
何でか知らないが、あまり銃声は大きくなかった。
あぁ、そうか、りえるさんの武器は不意打ち特化の武器だから、あまり銃声は大きくないのか。
「よし! 仕留めたわ!」
「本当ですか?」
「えぇ」
俺達はその言葉の後に円陣を解除して、その兎のモンスターの方を見てみた。
うん、確かにその兎のモンスターは倒されている。
「さてと、それじゃあ、剥ぎ取ったら行きましょうか、物音には注意してね」
「分かってますよ、それはもう、さっきので十分痛感しました」
「そうでしょうね」
俺達はその兎の素材を剥ぎ取り、この階の探索を再開した。




