増える仕事
食事を終わらせ、俺たちは再び虫のモンスターを殲滅するために、ギルドから出ることにした。
すると、ギルド管理所の入り口付近で座っている奈々の姿が見えた。
「奈々?」
「あ、何処行ってたの?」
奈々は俺たちに気が付くと、小走りで走って近寄ってきた。
そうか、奈々はギルドの事なんて知らないからな、忘れていた。
「ギルドに戻っててね」
「ギルド? そう言えば、周りの人達が何かそんな事を言っていたような・・・」
「そうね、ギルドは探検家達の集団みたいな物よ、ここの奥の魔法陣からいけるの」
「魔法陣? あぁ、あのよく分からなかった奴か、そこから行けるんだ」
「えぇ、ただ、そのギルドに所属している探検家の同行が無いと無理よ」
「へぇ、そうなんだ」
奈々はその話を聞き、少し納得したように手を叩いた。
「まぁ、それは良いとしてよ、私達を探していたようだけど、どうしたの?」
奈々はりえるさんのその質問を聞き、ハッとしたような表情の後、少し真剣な表情になった。
「あぁ、うん、あの虫のモンスターが居るでしょう?」
「えぇ、今から倒しに行こうと考えてて」
「実は、私が報告に行ったら、お兄ちゃんが、じゃあ、僕たちホムンクルスで倒しておこうって
そう言ったから、あなた達は休んでいても大丈夫だと思う」
ホムンクルス達があの虫のモンスターを倒してくれるのか。
確かに俺たちだと一気に攻勢を掛けることが出来ない、下手したら同士討ちなんてあり得る。
だから、真野達の同行が必須だが、俺たちは6人しかホムンクルスが居ない。
その上、俺たち以外のギルドはホムンクルスを信用はしないだろう。
だとすると、俺たちだけで殲滅ってなる、それは時間も掛かるし、捜索が難航するだろうしな。
「・・・そう、でも、なんでホムンクルス達が?」
りえるさんは、ホムンクルス達のその行動に疑問を抱いたらしく、理由を尋ねた。
「私達はそのモンスター達を殲滅したいし、あなた達って言う、凄く強い協力者を消耗させたくない
多分、それが理由だと思う、でも、安心して、私達があなた達の近くに居る、だから、敵意は無い
もしも、ホムンクルスの仲間達が攻撃をしたら、私達を殺しても構わない」
奈々は真剣な眼差しで俺たちにそう力説してきた。
「・・・随分という奴だな」
「で、でも、梨々だけは、殺さないであげて・・・えっと、ほら、人質として貴重だから、もしもの時は
その、私だけを殺して・・・」
「姉ちゃん! 何言ってるの!? 殺されるのは私だよ!」
「違う! わ、私が!」
もしもの時にどっちが犠牲になるかで、2人が喧嘩を始めた。
姉妹だから何だろうな、そりゃあ、家族が殺されるかも知れないわけだし・・・
まぁ、良い姉妹愛なんだけどさ、ここであんなに大声でしないで欲しいな。
「お、おい、あの2人、結構物騒なこと言ってないか?」
「あぁ、死ぬとかどうとかって」
「何してるんだ?」
周りには他の探検家が居るんだからな。
「お前ら、死ぬとかどうとかって言う物騒な話は止めろ」
「そうだぞ、死ぬとかどうかなんざ、周りが迷惑してらぁ」
「うぅ・・・だって、梨々が・・・」
「お姉ちゃんが悪いんじゃんか・・・」
「あなた達の姉妹愛は分かったけど、起きても無いのに騒がないの」
「そうだ、と言うか、お前らの兄貴は可愛い妹達を裏切るような奴なのか?」
「「違うよ!」」
おぉ、綺麗にハモったな、同時に反応とは、やっぱり姉妹だな。
「じゃあ、喧嘩しないで良いだろ?」
「確かに・・・そうかも知れない」
「さっきまであんなに喧嘩していたのに、すぐに元の調子に戻りましたね、流石は修介さん」
「そうでも無い」
奈々と梨々はお互いの手を握って、お互いに謝っている。
喧嘩してもすぐに仲直りだな。
「見苦しいところを見せてすみません」
「いや、気にするな」
「とりあえず、あたし達は殲滅に行かなくても良いって事?」
「うん、あなた達はゆっくりと休んでいて、後は、のんびりしていた私達が倒す」
「そう、じゃあ、私達は街の復興の方に力を入れるとするかな、殲滅が終わったら教えて頂戴ね」
「報告は別のホムンクルスが来るらしいから、私達はあなた達に同行するの」
「へぇ、奈々達も一緒に来るんだ! じゃあ、頑張ろうね!」
「そうだね」
これで俺たちは6人のホムンクルスと一緒に行動することになった訳だ。
何か、その内ギルドのメンバーがプレイヤーよりもホムンクルスの方が多くなりそうだな。
「さて、とりあえずギルド管理所に報告してくるわ」
りえるさんはギルド管理所の受付の人の方まで近寄り、色々と報告した。
俺たちはその間近くのソファーに座って、のんびりすることにした。
それから少しして、りえるさんが少し動揺したような表情でこっちに来た。
「お、お待たせ・・・」
「りえるさん? どうしたんですか? 何か動揺しているような気が・・・」
「えっとね・・・何か、ギルドランクが上がったわ」
「そうなんっすか! じゃあ、もっと豪勢になるんッスね!」
「祝うべき所だよ? なのに、なんで姉ちゃんは少し動揺しているの?」
「いや、何か知らないけど、ギルド対抗バトルのポイントが入っていてね・・・
それも、結構なポイントが・・・」
ギルド対抗バトル? 俺たちはそんな対抗バトルなんてやってない気がする。
なんせ、ずっとモンスターを倒すために追いかけていたんだから・・・
「対抗バトルなんてうちらはしたっけ?」
「してないのよね・・・だとすれば、考えられるのは、シルバーバードとの戦闘
そうなるとよ・・・荒れるわよ? この街・・・」
「ど、どういう意味ですか?」
「ギルド対抗ポイントは対抗戦をする場所に行かなくても街で戦えば手に入る
そうなると、勝率が低い対抗バトルをしなくてもポイントが手に入る
なら、街で不意打ちなり弱い奴相手に攻撃を仕掛ければ・・・」
「ぎ、ギルドは大きくなる・・・と?」
「そうよ」
ヤバいぞ・・・色んな意味でヤバい・・・やっと少し落ち着いてきたと思ったのに・・・
また新しい課題が追加されてしまったわけだ・・・
「こうなってくると、もう私達で色々と規制していかないともうこの街は終わるわ」
「・・・あぁ、課題が増えちゃったんだ・・・」
「大変なことになって来ましたね・・・」
「これじゃあ、あまりレベルを上げていない人が・・・消えて言ってしまいますよ」
「あの、あたし達だけで何とかするって具体的にはどうするの?」
「もう、ルールを作るしか無いわ、そして、そのルールを守らざるおえない状況を作る」
「守らざるおえない状況?」
「えぇ、街での戦闘、それを行なった場合は、攻撃をする、その攻撃を指揮する場所を作って
そして、3回死んだらこの世界から消える、この事を発表していくしか無い」
確かにそんな事を発表されたら、街で戦闘するなんてしなくなるだろう。
ギルド対抗バトルは倒されても殺された扱いはされないから、ポイント稼ぎはギルド対抗バトルに戻る。
そうすれば、不意打ちとかで殺されて消滅する人物がいなくなる。
「確かにそうですけど、俺たちの勢力じゃ、とてもじゃないけど無理でしょ?」
「私達にはあの戦いを共に戦ってくれた大きなギルドがあるでしょ?
バーンソニック、ジャッチメント、オーシャンズ、この3ギルドに協力を申し込む!」
りえるさんは本気だ、本気でそのルールを追加するつもりだ・・・
「姉ちゃん、本気?」
「本気よ、意地でも説得するわ、そうね、修介君、あなたも付いてきて頂戴」
「俺ですか? まぁ、良いですけど・・・何で俺なんです?」
「あなたはあのギルド戦争で1番活躍した、奇襲、モンスターの撃破、私達の救出
あの3人はあなたに結構な恩がある、一緒に付いてきて貰えば、可能性が上がるわ」
やっぱり、ちゃんと考えているんだな、りえるさんは。
そう言えば、この人が勝ち目の無い勝負を挑んだ事なんて無かったっけ。
「・・・分かりましたよ、勝利への道のりが見えているというのなら、付いていきます
俺たち全員、同じ気持ちだと思いますし」
俺は少しだけホーリーアップルのメンバーの方を見た。
皆、迷いは無いような表情を見せている。
「そう、じゃあ、付いてきなさい、それじゃあ、あの3ギルドのマスターの所に向うわよ!」
「はい!」




