作戦会議
民間ギルドの紹介で、隠れ家に移動した俺達。
確かにここなら、しばらくの間隠れて動くことも出来るだろう。
「それでは、食事とかは私達が用意します」
「ありがとう」
クロナはそう言うと、部屋から出て行った。
「さてと、安全な場所も確保できたし、作戦会議をしましょうか」
「そうっすね、作戦なしで行動じゃ、無謀っすよね」
最初は作戦会議か、まぁ、妥当だろう。
「まずは情報ね、修介君、真野ちゃん、お願いね」
「はい、分かってます、でも、まずは何処から話すべきでしょうか?」
「そうね、まずは相手の勢力を教えて頂戴」
「はい」
勢力か、結構な数がいたよな、その事を話すかな。
「相手の戦力は正直言って不明ですね、至る所にいる」
「そうなの? やっぱり、ずいぶんな戦力なのね」
「はい、店の中や、街中、至る所にいました」
「だから、のんびりラーメンも食べられ無かったんだ、美味しかったのに・・・」
「ですけど、数以外はさほど脅威ではありません、単体では容易に勝てるレベルです」
「なるほどね、やっぱり数だけなのかしら」
「えぇ、チームワークもイマイチで、あまり後衛職はいませんでした」
実際、殆ど後衛の攻撃は受けていないからな、強いて言えば隠れ家を襲撃されたときくらいか。
あの女の子と、多分、上から来ていた奴らの誰かにも後衛職はいただろうな。
そうじゃないと、あんな範囲攻撃を出来るわけ無いし。
「後衛職は少ないのね」
「はい、ですけど、後衛職がいないわけでは無いので、警戒はした方が良いです」
「そうよね、じゃあ、もし戦うとなると、周辺警戒をしながらじゃ無いと駄目かしら」
「そこは俺に任せて欲しいっす、これでもサブは偵察者っすからね」
あまり目立たないが、勇次って偵察者だったっけ。
と言うか、こいつが偵察者をした事ってあったっけ? 記憶が無いな。
でも、俺達を助けてくれたときには気が付いたら屋根の上だったし、使ったんだろうな。
「まぁ、そうね、戦う時の周辺警戒は勇次君に任せるわ
でも、1人では限界があるでしょうし、警戒はしておくわ」
「俺、そんなに信頼ならないっすかね?」
「そうじゃないわ、範囲が広すぎるからよ」
「そうだぞ、街中で戦うってなると、相当な範囲だ、警戒はしておいた方が良いだろ」
「そうだな、じゃあ、俺は隠れてる奴を探す感じでやっていくぜ」
「それが良いわね、不意打ちは怖いから」
不意打ち対策は勇次に任せておくか、不意打ちは普通に脅威だからな。
「それじゃあ、修介君、続きはあるかしら?」
「あぁ、はい、あの、俺達を襲ってきた女の子がいましたよね?」
「えぇ、あの時空を飛んでいた子ね」
「はい、あの子はかなり厄介だと思います、立ち回り方とかが他の連中とは違って上手い」
「そうかしら? ウイングはMPを継続消費する、それをあんな無茶な扱い方で使ってたのに?」
「そうなんですか? でも、あの子はずっと空を飛び続けていたような気がするんですけど・・・」
俺と真野が必死に逃げていたときも、ずっと空から俺達を探していた。
そんなに消費が激しいんなら、あんな長い間滞空できるはずがない。
「あの、あの魔法はどれだけ消費するんですかね?」
「レベルが最大だった場合でも精々2分かしら、かなり扱いにくい魔法で使われないか
あまり使われてないから、正確な時間は分からないんだけど」
「2分? 冗談でしょ!? あの女の子、絶対に10分以上飛んでましたよ!?」
「そんなはず無いわ・・・仮に最高値の2000でも、5分が限度よ?」
「でも、ラーメン屋での騒ぎの後も飛んでましたし・・・」
結構遠くを飛んでいたから、もしかしたら見間違いかも知れないが、そんな扱いにくい魔法を使って
空を飛んでいる奴が他にいるとは思えないし・・・
「・・・・・・何だか、少し話がおかしくなり始めたわね・・・」
「どういうことなんでしょう」
「でも、1つだけ心当たりがあるな、あたしは」
「そう、私も同じ」
「・・・まさか、そんな馬鹿なことが・・・でも・・・可能性はあるわね」
りえるさん達が俺の方を見た、実際俺は良い例だろう。
1つだけの数値がぶっ飛んでいるプレイヤー、俺の場合は運だが
前に夢でボーダーが言っていたな、この世界ではあなた以外に能力が壊れた人物がいますと。
「恐らく、その女の子は修介君と同じ様に、何処かの数値が壊れてるわ」
「そうでしょうね、そして、その壊れたいる数値って言うのは」
「MPですかね、だとしたら、実質いくらでも魔法を使えるって事でしょう」
「それに、そうだったらウイングの魔法とも相性が良いわね
安全圏からいくらでも攻撃が出来る、地味だけど厄介な能力ね」
「それで、唯一それに対抗できそうなのが、りえるさんですか」
スナイパーの射程は相当ある、しかし、相性が良いわけではない。
距離が離れたら、それだけ狙いを定めるのが難しくなるし、着弾に時間が掛かる。
そんで、空中では素早く動くことが出来る、本当に厄介な・・・
「そうね、私なら当てることは出来る、でも、当てるのは難しいわよ?」
「分かってますよ、距離があって、小さい目標、その上その目標の移動速度は速い」
「そうそう、パーフェクトスナイパーなら狙いを定められるけど、動いてる相手だとね
距離が近かったら当てられるでしょうけど、距離がある場合、ほぼ当てるのは不可能」
「動きが止まっていたらどうなんですか?」
「それなら可能ね、と言っても着弾するまで動かないことはそうそう無いでしょうね」
相手が長い間止まるなんて事、そうそう無いはずだ。
じゃあ、ウイングを使う前に倒すのが無難だろう。
でも、もしも空を飛ばれたら? 課題が多いな。
「課題が多いわね、それに、情報も足りないし・・・」
「なんだって良いじゃないか、簡単に言えば一撃で倒せば良いんだろ?」
「それが出来るんなら、それが1番よ、でも、それが難しいからこんな会議や情報収集とかをしようって
言う話をしているんじゃ無いの」
「情報収集は私達に任せてくださいよ」
「クロナ? いつ帰ったの?」
「少し前ですよ」
「そう、でも、情報収集なんて任せても良いの?」
「私達民間ギルドとしては、シルバーバードを潰すためなら、無茶はしますよ」
クロナは俺達にそう豪語した。
「でも」
「大丈夫ですよ、グロウブさんもあなた達への協力は惜しまないと言ってますから
それに、あなた達じゃ情報収集は難しいでしょ?」
「確かにそうね・・・私達は警戒されているし・・・」
「うちは情報収集をしないでも、殴り込めば良いと思ってるんだけどさ」
「全滅するから絶対に駄目よ」
ミミさんは相変わらず無茶なことを言うよな。
「ま、まぁ、とにかくですよ、私達が何とか情報を集めてきますから、それまで待っていてくださいね」
「分かったわ、お願いするわね」
「はい、お任せください」
さて、クロナが情報を持って帰って来るまで、待っておくかな。
しかし、あの女の子が俺と同じカンスト能力の持ち主だったとはな・・・
もしかしたら、シルバーバードって、そんな能力を持った奴がまだ居るとか・・・
はぁ、本当に、皆には迷惑を掛けてしまうな・・・




