そんな気がしていたんだ
総じて、「そんな気がしていた。」
私のこの漫然とした喪失感は、いったいどこに収まるべきなのかわからない。
あまり笑ってくれなくなったことや、あさっての方向に視線が泳いだり、眉を下げるとすぐに抱きしめてくれることもなくなった。
私は、彼から与えられていたはずの、そしてそれらで満たされていたはずの、
ひとつひとつをゆっくりと、けれど確実に、削ぎ取られていた。ときめきもまなざしもぬくもりも。乱雑に齧られしゃぶられ尽くした後の、ほとんど芯だけが丸々残った林檎のような私たちの関係を、なんとか、捨てないまま取っておいたのは、きっともうお互いは関係なかったね。
いろんな手を使ってごまかしたり暈したりして守った箱は、蓋を開けてみるともう腐りきった、クソみたいなものしか転がってなくて、私は発狂した。
そこにあったがらくたを、あたかも「楽しい!」に見立てて何構わず箱にぶち込んだ。ぶち込んでむりやり鍵をかけてまた抱え込んだんだ。
日記帳を見ると、バカみたいに几帳面に書いていたのは私だけだった。
放られたこの手に残されたのはあの林檎の残りカスで、捨てられるはずがなくて、だってそれは私の心だったから。
「そんな気がしていたよ。」バイバイ。