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プロローグ
某自主文集に載せていただいた作品です。正直、これまでの作品とは内容がかなり違います
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客席のほうからは気品が漂う独特な話し声が微かに聞こえる。コンサートを前にして、紳士や淑女のお客様が雰囲気を重んじて、小さな声で話すことで出来上がるこのコンサート前の雰囲気は、こんな立派なステージに立たせてもらうことが増えた今でも、いい緊張がこみ上げてくる。俺は手に持ったヴァイオリンを見た。こんな風な大事なコンサート前はあの一年間と……彼女を思い出す。そうすると、心が落ち着いてヴァイオリンと向き合うことができる。君のおかげで俺は世界的に有名なオーケストラを背にコンチェルトを弾くことができるのだから……。