ショートショート ドロシーと迷いの森
実家でショートショート書くときに暇にしていた妹からお題をもらって、それをショートショートの作品にしました。お題は 犬×猫×森です。 お、お題の通りになってるよね? ね?
「あぁ、どうすればいいの~」
周りが薄暗い木々で囲まれたぶきみな森に、何故かアメリカの田舎生まれであるわたしは迷い込んでいた。
「大丈夫さドロシー、何とかなるよ……この俺様が喋れるようになったしな」
しかも、連れている犬はここに来た時に話せるようになってるし……一体どうなるんだろ?
ここに迷い込むことになる前、わたしとトトはお母さんと一緒に家に居たのだけどその時に大きな音が聞こえて外に出てみると大きな竜巻が近づいてきて、それから逃れるために地下室に逃げようとしたけどトトが机のしたで震えていて見捨てることが出来なかったわたしはトトを連れて行こうと必死に机の下から引っ張ろうとしたのだけど、その前に家が竜巻に巻き込まれて飛ばされてしまったのだ。
そして、目が覚めると、このぶきみな森にわたし達は居た。
「ここって、天国なのかなぁ」
「そんなことはないさ、だって。森の匂いをいっぱい嗅げるから」
「ですよねー……それに、一応立っている感じとかあるし……息してるし」
私はどうしようっと悩んでいると、トトも私の隣でため息を吐く。
「お腹すいたよドロシー」
「何もないよトト、何か果物とかの匂いがしない?」
「そうだね、この森だし歩けば何かあるかも?」
「えっと、近くには無さそう?」
「うん、さっきから嗅いでるけど猫の匂い以外しないよ」
「猫の匂い?」
私はそれって何? っと聞こうとしたところでガサガサっと木々達の間から音がして、音がした方にびっくりして顔を向けた。
「ようこそお嬢さん、こんな気味の悪い森に何のようですか?」
「あ、あなたはだれ?」
現れたのは、黒い服を着たシルクハットを頭に乗せたおじさんで、彼は私に向かってニヤリと笑うとお辞儀する。
「私はただの黒猫と申す者でございます」
「その、ただの黒猫さんが俺達になんのようだい?」
トトは何か怪しい感じがする「黒猫」と名乗るおじさんに警戒心をあらわして、うーっと唸る。
「そんなに警戒心を表さなくても怪しい者じゃないよ、君達をここから良い場所に案内をしてやろうと思ってるだけさ」
「良い場所?」
「あぁ、お菓子も暖かい暖炉もある家だよ、犬の君には肉も用意してある」
「何だかとっても怪しいのだけど……」
「騙す気満々だよな?」
私達はこんなぶきみで人が絶対に住まなそうな場所に家があることを怪しく思っていると、黒猫さんはニヤリと笑って口を開いた。
「来なければ来ないで別に私は良いですよ、それではお達者で」
「ちょ、ちょっとまって!」
「ドロシー!?」
「おや、どうしたのですか?」
「や、やっぱりついていく……」
「ほう、そうですか。では私に付いて来てください」
黒猫さんはニヤリと笑ったまま翻り、歩き始める。私達もそれに付いていった。
「ドロシー、大丈夫なのか?」
「し、知らないよ……だけど置いてけぼりにされるよりはマシ」
「う、うん。確かにそうだな」
私達は黒猫の背中をずっと追いかける。へんなドクロが浮かんでる沼地や壊れかけの橋、襲いかかるカラスっぽい小鳥の群れ等の様々な困難を乗り越えてボロボロになりながら付いていく。不思議なのは黒猫さんは私達と同じ大変な目にあっているにも関わらず一切服とかが綺麗なままな事だ。
「何であの人は大丈夫なのだろ?」
「きっとこの森の事について熟知してるんだろう」
「そ、そうよね」
それから暗い森を進んで少しすると、木々の間に光が見えた。
「さぁ、もう少しですよ」
黒猫さんの少し芝居かかった声を聞いてからようやく着いたと思い、すぐに私とトトは光に向かって走った。
「もう歩くのは懲り懲りだぜ!」
「ようやく休めれるね!」
光に進んで、木々を抜けるとそこは広い草原だった。かなり遠くであろう場所には大きなお城が建っているみたいで、私達のところでは小さくお城が見えていた。
「あれ?」
「ここって……森の出口?」
私とトトは驚いてお互い見合ったあとに後ろを振り向く。すると、そこには頭を掻いて「あちゃー」っと呟く黒猫さんが居た。
「間違えて出口に案内してしまったね」
「え?」
「こんなことがご主人に知られてしまったら解雇にされてしまうね、君達の事は教えないでおこう」
「あ、あの」
「おい、黒猫のおっさん! どういうことだよ!?」
全く状況の分かっていないトトはおじさんに向かって怒鳴る。当然、私も同じ気持ちなのでジッと睨んだ。
「いやー、実はご主人まぁ魔女なんだけどね? そこの家に案内してから君達を魔女の召使いにしようと思ってたんだけど失敗して出口に案内しちゃったみたいだ。いやー、あはは」
彼は軽く笑うと、シルクハットを頭から取る。すると、頭には猫耳が付いていた。本当に猫さんなんだ……
「ここからは自分たちで進んでね、それではアディオス」
おじさんはシルクハットからマントみたいな物を取り出してそれを身体に巻いた。すると、黒猫のおじさんは消えてしまう。
現実には起こらないことが起こって目を白黒にさせていると、トトはため息を吐いて呟いた。
「ここからどうするよ?」
「え、えっと。ここから見えるあのお城を目指して歩くしかないよね……」
「まぁ、先行きの見えないあの森よりかは良いな」
「確かにそうだね、でも……」
私はゆっくりと綺麗な草原に倒れてからトトに一言言う。
「ずっと歩いていたから、少しは休憩したいな……」