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オーバーリミット  作者: 柊木隼人
第二章:双子の王子
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其の三十 戦略

久しぶりの投稿です。柊城です。

夏休みから就職活動が始まり、見事就職先を決めて戻ってまいりました。

本当は9月には決まっていたんですが、伸びに伸びきってしまいました。

これからは普通に更新していく予定です。

試合開始の三分前。全ての用意を終え彼は光の円柱に入る。ステージは『台風の廃都』。彼のその両手に握られているのは銃。それもかなり特殊なものだった。彼はその銃を強風が吹き荒れる虚空に向ける。開始の合図を待って。

「両者、開始地点に着きました。開始まで残り4、3、2…」

合図があると同時にレーダーを駆使し、相手の居場所を割り出す。アレイブにはそれが一瞬あれば可能だ。引き金を引くまでには一通りの計算が終わっていた。


シアは開始と同時に動き出す。留まるよりも見つける為に動かなければ勝てない。何より相手があのアレイブだ。何か策を張り巡らせてくるに違いない。

まずは自分の周りにサテライトビットを展開させて、どうにかして射程内に捉えないと……

刹那。走り出そうとした左脚のふくらはぎに魔力のこもった弾丸が激突する。シアは理解した。既に自分への攻撃が開始していることを。

でも、いくらなんでも早過ぎる。レーダーがあっても動きまでは読めないはず。それなのに周りには数十の弾丸が私を追って来ている。追尾ではなく、『廃都市』特有の崩れたビルの壁に反射させて追わせている。ダメージ自体は大きくないけど、これじゃまともに立ち回れない。

そうしている間にも弾丸は襲い掛かる。動く暇すら与えまいとするように。


アレイブは休む間も無く弾丸を撃ち出し続ける。今日この日の為に無理なく調べられる人材は全員監視対象にしていた。

シアは走る時に態勢を若干前屈みにする癖がある。誤差修正はとっくに済ませた。解る範囲内であればできることは全てやってある。懸念があるならばそれは未だ見たことのない武器。それによって事態がどう転ぶか、僕が対応し切れるならば問題はないが…

シアは過去、このトーナメント以前に三度ほど詩音と自主練習を行っているが、その全ての映像で武器をフォートレスガンナーとサテライトビットしか使っていなかった。

シアの“大罪”のエリクサーは七つの武器を使うエリクサーである。それはまだ“隠している”のか、或いは“使えない”のか。アレイブは前者を想定しながら戦っているが、他の武装がどんな性能を持っているのかは見当がついていないのが現状だった。


二人の戦闘は激化する。しかし、攻撃はアレイブが一方的だった。

シアは見えない場所からレーダーを駆使し確実に攻撃を当ててくるなどという芸当をしてみせるアレイブはかなりの強敵に感じている。角度だけでなく、動きまで予測し、対応させてくる。どう動こうがどこで止まろうが攻撃は止まない。試しに身動きを止めてみたが、30秒間唯の的に成り下がってしまった。

「ああぁーーっ!もうどうすりゃいいのよ!」

向こうの居場所が全く分かんない!弾を追うにも常に移動しながら撃ってきてるみたいだし、これじゃイタチゴッコってヤツじゃない!何か手を打たないと……

シアは向かってくる弾をサテライトビットで撃ち落しながら、逃げ続ける。サテライトビットの弾も当然無限ではない。いくらダメージは少ないからと言っても、このままではじきにガードエリクサーの魔力も枯渇して敗北してしまう。出力を抑えながらとは言え、サテライトビットも魔力を喰っている。

このままじゃジリ貧ね……

「仕方ないか。アトラクトを使おう」

シアは右手を地面に水平にかざすとその下に魔方陣が現れる。魔方陣からはすらりと綺麗な手が伸びて地面に両手をつき、身体を持ち上げる。

「よっと!」

同じ身長、同じ顔、同じオレンジ色の髪。そこに現れたのはシアと全く同じ姿をした人間だった。着ている服も、爪の長さに至るまで完全に同じ。違うところと言えば、武器を持たず、その身体に『魔性の魅力』を備えているところか。

そしてそれが出現した瞬間から、弾丸はシアではなくその“彼女”を狙うようになった。

「じゃあ御主人。囮行ってくるわ。何かご要望はある?」

“彼女”は普段のシアと何ら変わらない見た目でそうシアに問う。

「いえ、いつも通りでお願い。それとサテライトはそっちが持って行って。弾は今補充しておいたから」

「了解。攻撃は全部引き受けるわ。頑張ってね」

そう言ってシアと“彼女”は別れる。シアは反対方向を向いて再び走り出すのだった。


反応が増えた……

それを目の当たりにした瞬間、アレイブは両手を大きく広げ銃をそれぞ別の方向へ撃ち出し始めた。

やっぱり隠してたか。この新しい武装がどんな性能なのか見極めなきゃきっと勝てない。

アレイブは銃を撃ちながら思考を巡らせる。

反応が増えたってことはまず人型の武装。レーダーに映るってことは反応を偽る必要がないということ。この時点で囮として使う武装である可能性が高いな。

そして囮だとするなら……

そこまで考えた瞬間、台風の中でも聞こえるほどの爆発音が遠くで響き渡る。

「やっぱり派手なのを好むか……。陽動した方が連携はとりやすいからな」

向こうの行動は見えてるし、シアだってこっちがレーダーで見てることくらい承知してるだろう。飛び込むのは危険か。しかし、それ以上にシアの新しい武装の性能をデータに残しておきたい。

よし……!

「敢えて陽動に乗ってみるか!」

アレイブは嬉々とした表情で爆発があった場所へ向かうのだった。


“アトラクト”

それはシアの姿を模した自身での攻撃能力を持たない武装である。あらゆる攻撃をその一手に引き受ける為の武装で、自我を持つ。魔力によって発動する『魔性の魅力』は相手の心に多かれ少なかれ影響を及ぼす能力で、心理的にも自分を狙わせるような働きがある。

アトラクトは自身で攻撃すると必ずそれを外すという呪いにも思える特徴がある。攻撃能力を持たないというのはこれのことだ。シアがサテライトビットを持って行かせたのも、自身で攻撃能力を持たないというその特徴を考慮してだった。

そのアトラクトに敵を陽動させ、自分と一緒に挟み撃ちする。単純だが、この状況下ではかなり効果的な戦術だった。

「さあて、どう出るかな……」

アレイブがこの誘いに乗るかどうかがシアにとっての攻撃の可否になる。痺れを切らして出てくるか、攻撃してくる場所を突き止め本人と対峙するか、もしくは敢えて誘われて出てくるか。いずれにせよこちらからは未だ手出しは出来ない。しかし、この反撃の一手で場合によってはこの不利を覆せるかもしれない。ここで力を示すことが出来れば、彼女は……


舞台設定


現代とは違う地球の遠い未来。人類は様々な困難を乗り越え二つの大陸に安住した。

97年前に突如見つかった物質、『エリクサー』。研究結果からエリクサーは再び人類に争いの火種を落としたが、天敵『グレイド』の出現により争いは終幕を告げる。人類は協力することを選び、グレイドを撃退することに成功したが、被害は大きかった。


西暦3952年。篠月詩音が一度離れてしまった幼馴染に再会するところから物語は始まる。


人物紹介

【篠月詩音】

本作のヒロインの一人。子供の頃、親の都合で屋敷から出られず、友達欲しさに胡散臭い魔道書に手を伸ばした結果として、何の因果か記憶を失くした桐無刹葉を召喚してしまう。

姉のように慕っていたメイドの愛吏に料理、戦闘術を仕込まれている。

人に優しくを信条にしており、明るく正直な性格。やることに悪気が無く、天然である。嘘が下手なので言いたくないことは黙るが、判る人には判ってしまう。

何処かで試作されたエリクサー、“インフィニティ”に適合した。


【桐無刹葉】

本作のヒーローの一人。よく記憶を喪失する。鈍感属性完備。

人生で幾度か記憶を失っている少年。しかし必ず最後には取り戻している。

天然なのか計算なのか分からない部分があるが、勘違いはそこそこ多いようだ。

碧と黒の虹彩異色症。顔立ちは中性的。あまり知られていないが実は八重歯である。

柔和で優しく正直者だが、嘘は上手いので吐く時は吐く。現状ではかなり改善されているが3年前は感情を切り離して引き金を引くことができた。

詩音同様、愛吏(曰く師匠)に様々なことを教わったが、とある事件にて一度離れてしまう。

その後、3年の時を経て再び詩音の前に現れる。記憶を失くして……

何処かで試作されたエリクサー、“ゼロ”に適合した。

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