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オーバーリミット  作者: 柊木隼人
第二章:双子の王子
29/32

其の二十八 証明

前回から一ヶ月と半分。

長くなりましたがこれからは多分月一程度での更新となる予定です。

まだまだゴールまでは果てしない道のりですが、どうか見ていってください。

コイツキレてるのか!

ぎりぎりと互いにぶつかり合う刃。その均衡はブルレットによって崩される。剣に力一杯を込めて切り払う。女性とは言え通常の15歳の二倍の力ともなれば、バランスさえ崩してしまえば容易である。

それに対しランスリットは起動している三機のアシルレイトの内、一機をブルレットの斜め前方から、もう一機を背後から放つ。

しかし、それは弾き返される。ブルレットは前方からの一機をそのまま体を捻って剣で封じ、二機目は何か見えない攻撃で撥ね返した。

ランスリットは後ろに一気に距離をとる。

「……掠った」

胸のちょうど真ん中辺りにはガードエリクサーのバリアが発生した痕があった。ブルレットに直接斬られたのではない。が、ダメージは確実に受けた。ガードエリクサーの魔力残量が僅かながらに減少している。

それよりあの表情。俺、何かに触れたのか。

ブルレットには先ほどの余裕など無かった。軽口を叩いていた時の顔とは比べられないほどの剣幕。それと一筋の光。

こんなの見せられたら察するしかないじゃんか……!

兎に角一旦退かなきゃならない。体制を立て直す。

ランスリットが後ろに飛び退く瞬間、ブルレットは比較的小さな動きで剣を振り抜く。ランスリットはなんとか防御を間に合わせようとアシルレイトを盾にする。

攻撃は当たらなかった。ランスリットにもアシルレイトにも傷一つ付いていない。

なんだ?剣が消えて……

そう思った次の瞬間には黒い剣が現れてアシルレイトに傷を付ける。

……なるほどそういうことか!

ランスリットはそのままビルの屋上から落下する。

「くっ!逃げられた!」

流石にここから飛び降りれば無事ではすまない。ブルレットは階段で一階まで駆け下りていく。当然一階ではランスリットが待っていた。蒼い剣をその手に握って。

効果が切れたか。厳しいな。

ランスリットがその手に握っているのはコバルトヴルッフ。蒼い聖剣。

「お前の能力は時間制限があるみたいだな」

「まあな。ナイフが最低三本必要やし、設置めんどいねん」

ブルレットは再びナイフを構える。ブルレットの戦闘スタイルの基本形。注意しなければまた武器を封じられてしまうだろう。

しかし先ほどの屋上での戦闘では既に形にしていたアシルレイトは消えなかった。と言う事は形を成していれば使えるということ。だからこそ最も攻撃能力の高いコバルトヴルッフを形にしたのだ。

ランスリットはコバルトヴルッフに魔力を注ぎ込み、魔力を光に変換する。

全力とは言えずとも現状ではかなり強力な選択のはず。そしてブルレットの黒い剣の能力も多分わかった。この状況は有利と見ていいだろう。

ランスリットは剣を構えて踏み込んだ。反射的にブルレットも踏み込む。蒼い剣と黒い剣がぶつかり合う。

単純な瞬間火力だけならコバルトヴルッフの方が高い。そのままランスリットは斬り払ってブルレットを吹き飛ばす。が、同時にランスリットにも複数の斬撃が襲い掛かる。

ランスリットのガードエリクサーの魔力残量は一気に半分まで削られる。

「やっぱりか。お前のその剣の能力は攻撃を“貯金”しておくような感じだろ。今の攻撃もさっき振り回して貯めておいた分。つまり使い切らせてしまえば押し切れるわけだ」

ブルレットは苦虫を噛み潰したような表情を見せる。その目に未だ怒りを宿しながら。

立ち上がってまた一閃、剣を振る。当然攻撃を貯めたのだろう。こつこつと布石を打っていく剣。彼女には似合いの剣だった。それ自体が彼女の性格を表している。明るく努力家な彼女の性格を。

だが、ランスリットも努力をしたからこそ今この力がある。お互いに努力を否定してはならない。そのはずだった。

「そうだよな。俺たちが才能がどうとか言っちゃダメだよな」

きっとブルレットも力を求める理由がある奴なんだ。ならその努力を『才能』の一言で片付けちゃならない。ブルレットも俺と同じ。

ランスリットは左手に魔力を集中しランベルを形成する。アシルレイトまで出しているとなればその本気度は誰の目にも明らかだった。

ただ彼の頭は剣二つ振り回しながら自立機動兵器に指令を出すのはあまり得意ではなく、むしろ剣二つだけの方が魔力の管理が楽なので、アシルレイトはおまけに近い。

けどアシルレイトがあれば選択肢が増える。その選択肢があれば勝てるはず。

一度チャンスがあれば勝てる!

ランスリットにはそれだけの自信があった。当然コバルトヴルッフの攻撃力なら可能だろうが、魔力の消耗は激しい。だから一度のチャンスに賭けるのである。息切れを起こす前に。

彼は走り出す。ただ一直線に。

ブルレットの剣が振り下ろされる。その挙動をランスリットは見てかわす。ランベルの反射神経強化はそれほどのものだった。

ここで一撃っ!

その攻撃は見えない斬撃に弾かれる。流石に簡単には通してくれないらしい。

多分ここで死角から攻撃がくるはずだ。

後ろにアシルレイトを置く。それに斬撃が丁度当たる。

ここで振り返って防ぐ!

更に体を左から反転させて見えない斬撃を弾く。と同時に腰のベルトのアシルレイトを全て起動させる。

一気に決めにいく!

体を正面に向きなおし、ブルレットを視界に捕らえる。

否、捕らえたと思った。

そこにブルレットはいなかった。

刹那。

ランスリットは右からの攻撃にコバルトヴルッフをぶつける。あの一瞬でブルレットは回り込んでいた。そしてブルレットは黒い剣の後ろから銃口を向ける。

その銃口はランスリットの額に一直線。放たれる弾丸にアシルレイトが横槍を入れる。

まさかここまで反応できるなんて!こんなのどうしろって言うんや!?

黒い剣で切り払い再び距離を取る。

一度体制を立て直さなきゃ。これじゃジリ貧になるだけや。

しかしそれでもまだアシルレイトが彼女に襲い掛かる。それも四機同時に。

剣の能力と短銃でアシルレイトの軌道を自分から逸らせる。

アシルレイトを処理し、ランスリットを直視する。そこには相当な速さで接近するランスリットがいた。

胴一閃。それは最後の一撃となった。


「負けた」

ブルレットはガクッと膝を落とす。ガードエリクサーは魔力切れ、エリクサー本体もほぼ魔力切れ。どちらにせよ魔力が無くなれば武器は本当にただの武器になってしまう。エリクサーの魔力切れが間近だったのはお互い様だが、どの道最終的にはランスリットが勝っていただろう。

「一撃でお終いだなんて強すぎや。何したらそんなに強力な武器が……」

ウチにもそんな力があれば……

ブルレットはきっとかなり序盤から不利になっていたのだろう。二人の魔力量に大した差は無かったのだ。戦略の相性だったのかもしれないし、運が味方しただけだったのかもしれない。

「あのさ。悪かったよ。お前のその力はお前自身の今までだったのに才能だなんて」

その素直さが彼の人間的に好かれる理由である。自身の非は潔く認める。それがランスリットだ。

ブルレットはぽかんと口を開けてしまう。どうやら拍子抜けしてしまったみたいだ。

「ウチこそすまんな。お前ほどの力があったらと思ったら、どうしても嫉妬してまうねや。それも才能と半ば諦めてるところもあったんよ」

でもこの試合でもっともっと強くなれると思った。この先に行けるって感じた。だから頑張れる気がする。

ブルレットはいつの間にか口元が緩んでいた。ここで得たものは限りなく大きい気がしたからだろうか。詳しいことは分からないが、何かを掴んだのだ。

「ウチに勝ったんや。絶対負けんな!必ずや。ええな」

「当然!最強の何たるかを見せてやるさ!」

そうランスリットは約束した。ランスリットが突き出した拳にブルレットは清清しそうに拳を軽くぶつけたのだった。

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