表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オーバーリミット  作者: 柊木隼人
プロローグ
1/32

プロローグ 其の零 ≪第二次悪魔の終日≫

(さかのぼ)ること三年前。

たった一つの戦争で二人は離れることになった。


戦争の理由は簡単なことだった。

貴族同士のいざこざである。

国同士の立食パーティーで口論になったらしい。


そしてその戦争は一人の少女から幼馴染の少年を奪った。

両目の色が違う少年は一人。戦地に立たされた。


やがて戦争は終結した。

たった一ヶ月という短い間に、大量の死者を出した戦争だった。

少女が泣いた。

生き残った人の話によればその少年は敵の兵器によって跡形もなく消し飛んだらしい。

右目が黒く、左目が碧色をした虹彩異色症(オッドアイ)の少年だったと言う。

少女は絶望した。

少女が知っている彼で間違いなかったから。


戦争の決着はあっけなかった。

貴族が互いに雇った暗殺集団に殺されたのだ。


しかし、悲劇は簡単に終わってくれるほど甘くなかった。

一晩にして戦場に門が開いた。出てくるのは化け物、異形の怪物共だった。

化け物共は人を喰う。

骨を砕き、(はらわた)を引きずり、血肉をすすった。

やがてそれは少女とその家族にも分け隔てなく迫った。


少女とその家族は逃げ回っていた。

白い髪の男に連れられて。

男はこの化け物と戦える力をもっていた。

先ほどはこの男に助けられたのだ。


男は戦争での生き残りだと言う。

そして男は信じられないことを口にした。

「黒と碧の目の少年が戦っている」と。


男に連れられて来たのは国境の平原だった。

一昨日まで戦場だった場所である。

そこには黒い門があった。

化け物は門の中から出てきていた。

しかし、それ以上に少女の目を惹きつけるものがあった。

それはその門に向かって前進しながら化け物を切り倒している黒髪の少年の姿だった。

男はこう言った。

「あの少年は一人で行ってしまったが、あの数には一人では到底勝てないだろう。お嬢ちゃん。力をもらってくれないか?私たちではこの力は使えない。受け取りを放棄してもかまわない。決めるのは君だ」

少女は迷わなかった。


間もなく少女は戦場に飛び出していった。

手にしたばかりの力を持って。

少女が少年に追いついたとき、少年は驚きその足を止めた。

少女が振り向いたことを確認した少年は彼女の顔を見つめ、微笑んだ。

そして少年は走り出す。二人にはその一瞬だけで十分だった。


化け物を何体倒したのかわからなくなったとき、彼らはようやく黒い門にたどり着いた。

少年は背丈ほどもある大剣を二振りの剣に分解し、門から出てくる化け物を踏み台にしながらその二振りの剣で門を切り裂いていった。

そして彼は門の上に立ち、剣を再び合体させ飛び降りながらその門を両断した。


「すごいな。見込み以上だ。これほどの量の化け物を殺すなんてな」

そう言ったのは白い髪の男だった。

少年は立っていた。彼は化け物になったのだ。

大量の化け物を殺せる更なる化け物に……。


少女は少年に問いを投げかける。

「どこかに行くつもりなの」

少年は彼女の問いに微笑む。

そして歩き出す。

少女はもうひとつ問う。

「戻ってくるよね」

少年は答える。

「はい。約束します。必ず戻ります」


白い髪の男が呟いた。

「あの左目、少年の母を思い出すな。なんとも懐かしい」

風が吹き、少女の黒い髪がなびいた。

男は日の落ちる空と何もなくなった平原を見つめ、ようやく安堵あんどの表情を

見せた。


後にこの出来事は、『第二次悪魔の終日(デモンズ・ラグナロク)』と呼ばれるようになる。

初めまして。柊城隼人です。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

この小説は僕の処女作となっています。

あたたかい目で見ていただけたらうれしいです。

また、よければ感想なども書いていただけたら幸いです。

更新は毎月22日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ