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死闘 in木曜4時間目数学

作者: マムー

登場キャラは基本アブノーマルです。注意してください。因みにこの小説のテーマは『レッツ下ネタ』です。それらを考慮してお読みください。

 吾輩は猫である。名前はまだ無い

 嘘である。

 俺は『吾輩』なんて一人称を使わないし、猫でもない。人間だ。

 名前だって親にもらったセンス良いんだか悪いんだかわからない名前がきちんとある。

 だから本来は『俺は人間である。名前はすでにある』とか言わなければならないのだ。こうして比べてみると同じ言葉が使われているのは『は』と、『である。』と、『名前は』だけだ。いや、結構多いな。15文字中8文字同じ文字だ。なんだ、そこまで嘘はついていなかったな俺。

 ……とまあこんな下らない思考を延々と垂れ流している俺が言いたいことはというと、

 暇なのである。

 木曜日の4時間目、数学。

 授業には欠片ほどの興味も湧かない、腹が減って寝ることもできないワーストコンディションの最たる例。辞書に例として載ってもいいくらいだ。いや、そもそもワーストコンディションなんて単語が辞書に載っているかなんて知らないけど。……そういえばベストコンディションって言葉はよく使うけどワーストコンディションの方は滅多に使う機会がないな。なんでだろ。NASAの陰謀か?

 状況説明が3行に達する前にまたもや無駄な思考に浸かり始めた俺だったが、ポケットのケータイのメールの着信を知らせるバイブで現実に引き戻される。

 送信者は、クラスメートの一人。てか俺の隣の女子。てか俺の幼馴染。

 昨今のマンガやらラノベやらの影響で、『幼馴染=フラグ立ってます』みたいな公式が三平方の定理よりポピュラーになっているが、実際はそんな事はない。

 確かに我が幼馴染はまあまあ可愛い。何人からか告白もされているだろう。実際、アイツに告白したという奴の事を何度か聞く。しかしアイツはそれを全て断ってきている。ここら辺は、ずっと一緒にいて逆に告白できなくなった幼馴染に思いを寄せている純情ヒロインなんかともかぶるだろう。

 だがアイツの場合はそれらは全てが、アイツの持つ異常な性質によるものに過ぎない。

 異常な性質なんて言われても分かるわけないだろうし、これまでにその内容が推測できる伏線があるわけでもない。言ってしまうか。


 腐女子なのだ。アイツは。それも極限の。二次元も三次元も両方イケちゃいますレベルの。


 例えるならば、BLを愛しすぎて、将来は男に性転換してヤりたいとか言い出すぐらいの腐敗度だ。例えてないけど。まんまアイツの言っていたことだけど。

 ぶっちゃけ腐女子という言葉でも生温い。腐敗なんてレベルではない。アイツの腐敗度は腐りすぎて腐っていたものが無くなってしまうレベルだ。微生物に分解され尽くされるレベルだ。

 腐女子ってか無女子だ。

 女子じゃ無い(ない)、みたいな。字が違うけれど。

 以上の説明でわかるとおり、アイツの辞書に恋愛の文字はない。仮にあるとしても頭に『男同士の』がついてしまう。よって、幼馴染攻略フラグが立つなんて事は絶対にありえない。

 そんなアイツからのメールの内容は極めて単純。

 

『暇。なんか楽しいことない?』


 どうやら、このワーストコンディションに苦しめられていたのは俺だけではないようだ。横を見れば、机に突っ伏していかにもだるいです、と言わんばかりの姿勢の女子生徒がこちらを見ている。こういうノーマルな仕草をしている時は、『ちょっと勉強が苦手で活発な可愛い幼馴染』なのに。神様はなんでコイツにあんな性癖をつけたんだろう。

 そんなもう2、3年前から考え続けている事を再確認しながら、前の黒板で欠片も頭に残らない授業をしている先生にバレないようにメールを打ち返す。

 内容は極めて単純だ。他人に紹介するほど楽しい事があれば今現在俺は暇していない。

 10文字にも満たないメールを打ち終わり送信ボタンを押すと、程なくして向こうが携帯を開く。とりあえず返信の内容にこちらを一睨みし、しばし考え込む態勢をとった後、何かを思いついたのか、かなりの勢いでメールを作成していく。

 そのメールの内容は、やはり提案だった。

 奴の提案は極めて単純。いや、そうでもないかも。


 『この授業中今後何があっても前を向いてはいけない。前を見るか、声を上げてしまったら負け。っていうゲームをやろう。あ、横向いて相手見るのはアリ』


 要するに、メールとかで相手に前を向かせたりしたら勝ちって事か。

 冗談じゃない。即座に浮かんだ返信内容を打ち込みながら俺は考える。

 授業中にケータイを使っているのがバレれば、どれだけ運が良くても生徒指導室行きは免れない。こんな暇つぶしでそこまでリスキーな事する必要はない。

 これでも今時のケータイ世代。すぐに文章は打ち終わる。


 『お前負けたら処女よこせよ』


 待て、これだと俺が何かにつけて幼馴染の処女を狙う最悪な奴になってしまうじゃないか。

 もうちょっと詳しく先ほどの思考状況を確認してみよう。

 リスキーな事をする必要はない。と考えたまでは同じ、だがその後が重要なんだ。

 授業中にこんなゲームの提案をしてくることから分かる通り、アイツはなかなかお茶目な性格をしている。

 まぁよくいる小学校低学年までは男子達まとめてましたみたいな奴だ。

 もちろん高校一年にもなって厨二病も治りはじめた今は、そんなやんちゃな事はしていない。せいぜい週3で担任の先生と喧嘩し、週4で不良に喧嘩を売るぐらいだ。

 だが、そんなおとなしくなったアイツも、根っこの気性は変わらない。

 ここで奴の提案を断り、その理由がリスキーで危ないからとか言った日にはとても面倒臭いことになる。具体的には根性が足りないとか言って多分駅のホームでいきなり

背中を押される。電車がちょうど来るタイミングで。前にもあったし。

 なので、普通に断るという選択肢は俺の心臓に悪影響を及ぼすという理由で却下された。

 ならばどうするか、むしろ向こうに引かせる。という結論になったのだ。

 

 わかっただろうか、以上が俺があんなバカみたいなメールを理由だ。

 とか考えている内に返信が。


 『分かった。じゃあアタシが勝ったらアンタのケツの穴もらうからね』


 ………………………………え? 

 これから俺は、自分の貞操を守るためのデスゲームへ飛び込む事になるらしい。

 





だがまあそんな風に仰々しく言ってみても、要は前を見なければ良いだけの事だ。アイツの処女なんて欲しくもない俺は、自分から攻め込む必要はない。

メールだってぶっちゃけ見なくても良いのかもしれない。後で絡まれるのが嫌だから見るけど。

その辺りの事情をアイツも分かっているのか、俺からの返信を待たずに次のアイツのメールが来る。


『隣のクラスの麻耶が今度アンタにコクるとか言ってたよ』


脊髄反射のように肩がビクッと痙攣し、思わず顔をあげそうになるがそこはどうにか押し止める。

あ、危ねえ。まさかこんな一文で負けそうになるとは。

さすがに付き合いが長いだけあって、俺の反応しやすいツボをよくわかっていやがる。

つーかコイツ杉田の事名前で呼んでんだな。吹奏楽部の杉田と陸上部のコイツにそんな接点あったのか。


てかこのメールホント?ホントにツインテールをさせたら向かうところ敵なしと言われたあの杉田麻耶が俺にコクんの?その真偽が今何より知りたいわ。


だがしかし重要なのは、このメールの真偽よりもアイツの真剣度だ。(いや、メールの真偽も大事だが)まさかここまでガチで俺のケツの穴狙ってくるとは思わなかった。

これは俺は受け身に周るのでなく、攻めてさっさと終わらせてしまうのも選択肢かもしれない。

 いいぜ、上等だ。

相手の反応しやすいツボがわかってるのはお前だけじゃないってことを教えてやる。


 『一つ上の中島先輩と横溝先輩、実は付き合ってるんだぜ』


アイツの反応も俺と大差なかった。

 肩を一瞬震わせると、頭が数センチ上がり、そこで思い出したように止まる。

 しかし、よほど必死に耐えているのか、肩がわずかに震えているのがわかる。

 ちなみに、さっきあげた二人の先輩は、二人とも学校内にファンクラブができるレベルの有名なイケメン達だ。週7で、つまり毎日コクられているという噂まで立っている二人は、にもかかわらず彼女がいないことから、学校全体の女子の憧れの的となっている。

 そんな二人の特殊性癖をなぜ俺が知っているかと言うと、端的に言えば、二人の学校プレイ中に遭遇してしまったからである。

 あれは酷かった。なまじ二人ともイケメンで、中島先輩の方が中性的な顔立ちをしてるから困る。いくら中性的と言っても男性であることには変わりない。その光景は第三者的にはとても見られたものではなかった。

ただ一つ言うとすれば、横溝先輩、アンタドS過ぎるだろ。中島先輩、アンタドM過ぎるだろ。それだけだ。



 話がそれた。

正直、この情報で勝てないのは計算外だった。わかりやすいBLの種を渡せばアイツはスンナリと軍門に下ると思っていたのだが、甘く見ていたようだ。今畳みかけた所で、身構えているアイツには何の効果もないだろう。

 この勝負に勝つには、やはり不意をついた奇襲しかない。

 しかし考えることは二人とも同じなのか、その後は当たり障りのないメールが続く。つまり、奇襲の策は向こうも分かっているということ。これでは意味がない。

 

………………………やるしかないか。

本当は使いたくない、卑怯すぎる技だが、授業がもうすぐ終わりそうな今、背に腹は代えられない。

その禁じ手に手を出す覚悟を決めた俺は、アドレス帳を開き、アイツの名前にカーソルを合わせると、


そのまま通話ボタンを押した。


普通何の設定も変えていない場合、マナーモードにしても電話が来た場合、バイブが鳴るように設定してある。

これがいつものようにバッグにしまってある状態ならば、バイブがなっても先生にバレることはまずないと言っていい。

しかし、奴のケータイは今、操作ができるようにかなり無防備な位置にある。

 あの状態でバイブが鳴れば、確実に先生の耳に入り、そうすれば先生も、追及せざるを得ないだろう。

 そうなれば、アイツも、何らかの受け答えをする為に顔を上げなくてはならなくなるはずだ。

 これで勝利。もれなくアイツの処女が手に入る。いらないけど。

 あれ?よくよく考えてみれば、俺って別に電話なんかかけなくても授業終了まで待てば勝ったようなもんじゃね?仮に今ここで電話を鳴らして勝利を収めたとしても、得られるのは文字通り、アイツの処女だけなんじゃね?

 まあいいか。あんま気にすることじゃないだろ。


そして、ケータイの発信準備が終わり、いよいよ電話がかかる。

 

にもかかわらず、アイツのケータイは変わらず沈黙を続けたままだった。


 は?

 その予想外の反応。正確には無反応に、心の中で唖然とする。

 我に返ってアイツを見ると、『行き詰ったアンタの考えてることなんかお見通しなの』的な顔。つまりはドヤ顔をしていた。

 チッ、お互いの考えは筒抜け。ってか!

 そのタイミングで、今度は俺のケータイがメールの着信を告げる。奴の反撃か。

 授業自体はあと一分にも満たない。できればこんな地雷としか思えないメールは見ずにこの授業を終えたいが、電車に轢かれるよりはマシなので仕方なく開く。


 『ちなみに麻耶も私サイドでアンタのケツの穴を狙っていたりする』


 「ちょっと待て」


 思わずツッコんでしまった。

 いや、待て待て待て待て、それはないだろう。

 あの杉田が腐女子?てか無女子?それで、俺のケツが狙われてる?

 ウソだ。

 ウソだと言ってくれ。

 何?俺のケツはそんな無女子好みなの?興奮しちゃう尻なの?

 何それ、そんなのいらないんですけど。


 気が付いたら、授業は終わり、先生もいなくなっていた。

 そしてケータイを見つめながら呆然とする俺の横に、近づくアイツ。

 だがぶっちゃけコイツはどうでもいい。それよりも、緊急に差し迫った問題が俺には、

 

 「ショック受けてるとこ悪いけど。アンタしゃべったから私の勝ちね」


 俺の思考は、その言葉で完全停止をかけられた。


 ………………………………………………………………ハ?

 オレノマケ?ナンデ?

 ア、ソウイエバ。

 

 『この授業中今後何があっても前を向いてはいけない。前を見るか、声を上げてしまったら負け。っていうゲームをやろう。あ、横向いて相手見るのはアリ』


 やり場のない絶望を与えられ、真っ白になっていく俺の肩をつかみながらアイツはポケットからこの世に存在するものなかで今最も学校に持ってきてはいけない物――具体的に言えば男性のゴニョゴニョの真似をした黒い塊。体に装着できるタイプ――をちらりと見せる。

 

 「いくら麻耶でも、アンタのケツは上げらんないから。私が先にもらうね。ちょっと屋上行くよ?」


 ろくに抵抗することもできず、俺は引っ張られながら教室を出る。

 

その日の午後の授業は、腰の痛みがつらかった。

 

 その後、先に俺のケツの穴を取られた杉田が逆に自分のケツの穴(女性の場合はア〇ルって言うのか?)を俺に渡そうとして来て中々混沌としてた騒動が起きるのだが、それはまた別の話。話すつもりは欠片もないが。

 


こんな駄作に付き合って頂き、ありがとうございました。m(__)m 指摘、感想その他何でもいいので言いたいことがあったら気軽にお願いします。評価やレビューなんかも嬉しいです。お願いします。m(__)m


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