人は死んだら、どこに行くのだろう。
そんな疑問の答えが、すぐそこにある。
「海の怒りを鎮めねば……」
「生贄を捧げればよいのではないか」
「では、誰に」
穢れを知らぬ清らかな乙女であり、なおかつ子供が産める者。
そんな条件に当てはまる存在など、小さな村には私しかいない。
否、いなくなった、というべきか。
同じ条件を満たしていた村長の娘であるマルテは、急に結婚したのだから。
『ずっと親友でいようね』
そう言った日は遥かに遠く、私を見る顔は奇妙に歪んでいる。
「レリア、生贄となっておくれ」
「この村の救世主となっておくれ」
「お前にしか出来ないのだ」
嘘つき。
マルテにも出来たでしょう。こんな急に結婚させなければ。
彼女と私と、いったい何が違ったのだろう。
村長の娘と、孤児の違いだろうか。
魂を包むこの肉体という名の器は、外見以外何も違わなかったのに。
何を間違えたのだろう。
誰を憎むでもなく、私はただ不思議に思っていた。
精進潔斎の為にと連れて行かれた泉で、水面に映る自分を眺めて一人思う。
これから一月、私はこの泉とその傍にある洞窟で生活し、朝晩この泉に身を浸して清らかな存在へと昇華するのだという。
抵抗する気も起きなかった。ただ、一月後に来る死を待つだけ。
自己犠牲とか、諦めとか、そんなんじゃなくて。
ただ、一度抱いてしまった疑問の答えを知りたくなってしまったから。
――人は死んだら、どこへ行くのだろう――
自サイトのメイン小説『恋愛ゲーム』に出てきた小説です。
あくまでも『恋愛ゲーム』主体での作成ですので、内容が前後する場合があります。ご容赦下さい。