第3話 初めての配信②
「うう・・・・・・スースーする・・・・・・」
久は恥ずかしそうに、メリケンサックをつけた手でもじもじとスカートを押さえながら歩いていく。
ただでさえ、スカートを穿くなんて初めてのことなのだ。
このダンジョンに来るまでの間、久はこのスカートで歩いてきたわけだが、本当に頼りないものだった。はっきり言って、腰に布を一枚巻いてるだけだよ。パンツ丸出しで生活してるのとなんら変わりはない。世の中の女性はよくこんな頼りないものを着て生活しているなと思ったわけなのだが・・・・・・。
パンツを穿いていてさえ頼りないのに、今の久はノーパンでダンジョン探索をしている。
「こんなもん恥ずかしすぎる・・・・・・!」
『女の子がノーパンで恥ずかしがってる光景なんて、なんぼ見てもええですからね』
『目が回復する』
『俺ちょっとダンジョン探索行ってくる』
コメント欄は盛り上がってるし、下腹部に経験値がキュンキュン入ってくる感じがする。
(視聴者からエロい目で見られる代わりに経験値を得る・・・・・・なんだろう、なんかこう大事なものを失っているような気がする・・・・・・)
もじもじしながら歩いていく。いつもと違う状態だからだろう。久は大事なことを見落としてしまった。
カチッ
「え?」
そう、罠だ。罠の存在に気づかず、ついうっかり踏んでしまったのだ。
そして、今久が踏んだのは風の罠。下から風が吹きつけてくるという罠だ。つまり──
「きゃあっ!?」
下から吹き上げた風が、スカートをふわっと持ち上げた。
『うおおおおお!!!』
『み、みえ・・・・・・みえ・・・・・・』
『スローだ! スローを使うんだ!』
当然のことながら盛り上がる男ども。
一方の久はぷしゅー・・・・・・と真っ赤になって湯気を出していた。
(め、めちゃくちゃ恥ずかしい・・・・・・)
何が恥ずかしいって、スカートの中身が見えそうになったことも恥ずかしいけど、「きゃあっ!」とか言って女の子っぽい悲鳴をあげてしまったことが一番恥ずかしい。
(男としての尊厳がゴリゴリ削られていくよお・・・・・・)
その後も、風の罠を何回か踏んだり、うっかり転んでしまったりと視聴者へ豊富なサービスを提供し続けた。
『ありがとうございます』
『これなら当分おかずには困らないだろうな・・・・・・』
『こういうのでいいんだよ』
「えっ!? なんかめっちゃスパチャ投げられてる・・・・・・あ、ありがとうございます!!」
その結果、視聴者がめちゃくちゃにスパチャを投げてくれた。ざっと見ただけでもかなりの額だ。
(すごい、こんなに・・・・・・これ、確実に一回のダンジョン探索の実入りより多いな・・・・・・)
久は思わずごくり、と喉を鳴らしてしまう。
(っていやいやいや! いくら実入りがいいからってこんなのを本業にするのは男として沽券に関わる! 惑わされてはならんぞ俺!)
とにかく久は歩いていく。今のところ、他の探索者に会っていないのが不幸中の幸いだろうか。これで他の探索者に見られでもしたら羞恥心で死ねる。
しかし、ここはダンジョン。探索者には会わなくたってモンスターには遭遇するのだ。
《グルルルルル・・・・・・》
ローブを着て杖のようなものを持ったゴブリンが出現したのである。
「! これは、魔法使いゴブリンか・・・・・・」
魔法使いゴブリン。ゴブリンキングと同じくゴブリンの上位種だ。
「これはなかなかの激闘になりそうな予感・・・・・・」
久は自身がノーパンであることも忘れて完全にプロ探索者の目になると、戦闘の態勢を整えた。
魔法使いゴブリンは杖を構えると、早速こちらへ向かって魔法を放った。円錐形の土の塊が久へ向かって飛んでくる。
(くっ、すでに魔法を撃つ準備をしていたのか!)
久は飛んでくる土属性の魔法攻撃を素早く避けた。
『みえ・・・・・・みえ・・・・・・』
『今ちらっと見えた、ような・・・・・・』
『くっ、俺は全然見えなかった!!』
『もっと頑張れゴブリン!』
大盛り上がりし、なぜかゴブリンの方を応援し始めるコメント欄。
(し、しまったそうだった・・・・・・!)
コメント欄を見て久は今の自分の状況を思い出した。
久は慌てて、遅まきながらばっと自分のスカートを抑えると押さえると顔を真っ赤にしてゴブリンを睨みつけた。
《・・・・・・?》
ゴブリンは事情が飲み込めずによくわからないという顔をしている。
(すまんゴブリン君、変なことに付き合わせてしまって・・・・・・)
ゴブリン君に罪はないのだ。ただ人をぶっ殺そうと思って出てきただけで・・・・・・。
そう、ゴブリンはただ単純にこっちを殺そうと思っているのだ。久の事情なんて関係ない。そんなもの関係なしに猛攻を仕掛けてくる。
《グオオオオオオ!!》
そう叫ぶと、空中に先ほどの円錐形の土の塊が大量に出現した。
「ちょ──ちょ、もー!」
避けるしかない。避けるしかないのだ。
「あああああーっ!!」
久は避ける。避けるたびにスカートがひらひらしていく。なんかもう完全に丸出しになっている気がする。
『ゴブリン頑張れ!』
『応援しているぞゴブリン・・・・・・』
『もっとひらひらさせろゴブリン!』
「なんでみんなゴブリンを応援してんの・・・・・・!」
その応援が届いたからというわけでもないだろうが、魔法攻撃を避けられまくり擦りもしないことに業を煮やしたゴブリンが
《グウウウウウ・・・・・・》
杖を振り上げ、別の魔法を使うような素振りを見せた。
(まずい! どうやら別の魔法を使うようだぞ・・・・・・なんだ? どんな魔法を使ってくるつもりなんだ?)
久は辺りを警戒する。
すると、久の足元の地面がボコボコと隆起してきた。
「! 下からきたか!」
下からきたゴブリンの魔法攻撃。それは──
「・・・・・・は!?」
三角木馬だった。
三角木馬が土から生えてきた。
久は避けようとしたものの、避けられずにあえなくその三角木馬に跨る形となってしまった。
「んっ、ちょ・・・・・・!」
『でかした』
『非常にいい光景だ・・・・・・死ぬ前にこんな景色を一度は見たいって、俺はずっとずっと思っていたんだ』
『素直にエロい』
「ちょっ、んっ、は・・・・・・ぁ・・・・・・」
久が普通の女の子になっていて、いきなり三角木馬に乗せられたとしたら快感より痛みが勝っていたことだろう。
しかし、久がなったのは普通の女の子ではなくサキュバス。
「や、やばい・・・・・・これやばい・・・・・・んっ♡」
より快感を感じやすいように出来ているのだサキュバスの体は。それに、この状況をエロい目で見られないわけがない。多くの視聴者からエロい目で見られて、久の下腹部にはキュンキュン経験値が入ってきている。
つまりは今の久は二重に快楽を感じているということなのだ!
「ひゃっ♡ ちょ、ちょっと・・・・・・んっ♡」
さらに、三角木馬がなぜかいきなり振動してきた。
『エロい』
『これはエロいな。素敵すぎる』
『大江戸時代』
「ちょ──なんでこれ振動させる必要があるわけ!? ゴブリンこれわかっててやってるでしょ!?」
《?》
ゴブリンは首を傾げた。
「いや絶対わかってやってるって! わかってないふりするなよ──あっ♡ ちょ、やばいやばいやばいやばい・・・・・・やばいからぁっ」
なんか全然そんなふうには見えないけど、敵の攻撃(?)から抜け出せずに何気にピンチな久である。
まあでもこのあとなんとか三角木馬を殴って粉砕すると、ゴブリンも殴り飛ばしてなんとか勝利することが出来たのだった。
◇
そして、配信が終わって。
「んっ♡ な、なんかくる・・・・・・! なにかがあがってくるっ・・・・・・♡」
配信が終わったあとも、久の下腹部には経験値が入ってくる。その度に、久の中で何かが上がってくるような感覚がする。背筋がぞくぞくするような、何かが這い上ってくるような感覚。どうしようもない快感が下腹部から上がってくる感覚。
それは徐々に高まっていき、そして──
「───────・・・・・・♡♡♡♡〜〜〜〜ッ」
久の頭は真っ白になった。
「はっ、はっ、はっ・・・・・・ぁっ・・・・・・」
目の前がチカチカする。深い快感の余韻が久の全身を包む。
「な、なにこれ・・・・・・こんなの、こんなの知らないっ♡」
おめでとう! 久はレベルアップした! これがサキュバスのレベルアップなのだ!
レベルアップはまだ止まらない。それだけ大勢の人に劣情を含んだ目で見られたということだ。
「ぉ゛またくるっ・・・・・・♡」
こうして久の初配信は終わったのであった。男のままでは絶対に味わうことが出来なかったであろう快感の記憶を、久に植え付けて・・・・・・。
執筆中、ずっと何書いてんだろうと思ってました




