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うっすらと意識が回復していく。
閉じていた瞼を静かに開けると、そこに写ったのは見知らぬ天井。どうやら床の上に倒れていたようだ。
「ぅ……一体何が……あったんだっけ?」
頭を軽く振りながら起き上がると、胸のあたりに違和感を覚えた。
「え? これって……さっきの金メダル? 俺……首にかけてたか?」
いつの間にか金メダルが括りつけられた組紐が首かけられていた。立ち上がり紐を外そうとするが、どういうわけか外れてくれない。
「おいおい、まさか呪われたアイテムとかじゃないだろうな……?」
どれだけ力を入れてもやはり外せない金メダルに戦慄する。
「ああもう……どうしろっていうんだか」
別に体調に変化はない。重さもそれほどないし、慣れてくれば違和感もなくなるだろう。とりあえず金メダルについては後で考えることにした。
「そういえばこの本の中身はまだ見てなかったな」
金メダルが置かれていた白い本。それを手に取って表紙を開いてみた。
――――ようこそ、我が隠れ家へ。
最初に記述されていたのはそんな文字だった。
まず始めに驚嘆したのは、ここに書かれた文字が日本語であること。ということは、記述者は日本人ということになる。自分と同じように、召喚された者の可能性が高い。
そのまま続きを目で追っていくと、そこには驚くべきことが書かれていた。
『まず初めに記そう。この世界は恐らく、いや、間違いなく君にとっては異世界であろう。そしてこの本を手にした者こそ、我が待ち望んだ後継者だと』
「……後継者?」
気になるワードがあったが、やはりここは異世界で間違いないらしい。なら見知った〝扉〟という文字はどういうわけだろうか。
『様々な疑問が脳裏に渦巻いているだろうが、そのすべてを語るほど時間は残されていない。故に必要なことだけを伝えることにする』
ツッコミたい箇所もあるが、とりあえず続きに目を通してみることにした。
そして分かったのは、自分がコレを記した者の後継者になったこと。先に意識が飛んだのは、その力を受け継いだ影響だという。
『君が受け継ぎし力。それが――』
そこに記された文字を見て記憶に焼き付ける。
「――――《メダル魔法》」
無意識に呟いていた。
『これで君は、この世界で稀有な存在――〝魔法使い〟と至った。そこで君には是非ともやってもらいたいことがある』
やはりと得心する。どうやら魔法とやらは、異世界でも特別な力らしいが、そんなものを代償も無しに与えるとは到底思えない。そこには必ず理由があって然るべきだ。
そしてこの本の記述者は、一体何を自分に望んでいるのか。
『それは――――――ある子を守ってやってほしい』
ある子……ということは子供……。
もしかしたら、この記述者の実の子供だったりするのかと思っていると、次の記述には今すぐある場所にある本棚に向かって欲しいと書かれていた。
今は指示通りに動くことにして、記された本棚へと向かう。そこで一番下の右端に置かれた赤い本を抜き取り、その奥を探るとまたも一枚のメダルがあった。
「今度も……〝扉〟のメダルか」
しかし入口と違い壁に埋め込まれているというわけではなく、こうして手に取っている。
そしてこのメダルを持って、机がある場所へと戻り、その下を探れとあったので、机を移動させて確認してみると、ちょうどメダルが嵌め込められる窪みを発見した。
その窪みにメダルを嵌め込むと、入口の時と同じように突然床に亀裂が走り、扉のように開き始めたのである。
「……これが魔法ってわけか。凄いもんだな」
たった一枚のメダルで、自在に扉を生み出せるというのだから。
開いた扉の奥には、下に続く階段が設置されていて、その先に進めという指示があった。
「はぁ……こうなったらなるようになれだな」
肩を竦めつつも階段を下りていくと、その先には開けた場所があり、さらに奥には巨大な植物らしきものが見つかった。
「うわ……何だこの植物。見たことないが……」
大樹の根のようにも見えるが、その色は鮮やかな桜色だ。ところどころに花の蕾らしきものも幾つか生えていて、さらに目を引くのは根の中央部分。
樹液の塊のような……透明感のある物体が嵌め込まれていて、そしてその中に浮かんでいる存在に息を飲んだ。
「…………守って欲しいっていうのは、この子のことか」




