表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百円拾って転生した俺が、チート能力でエリート様をざまぁする〜スキル【状態編集】でどんな強敵も豆腐化〜  作者: うはっきゅう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/5

第二話:【ステータス、豆腐】

 黒天竜が光の粒子となって消え去った後。

 俺、リアンは欠伸をしながら冒険者ギルドの扉を開けた。目的は一つ、討伐報酬の受け取りだ。


「……」

「……」


 シン……と、あれだけ騒がしかったギルドが、まるで時間が止まったかのように静まり返っていた。全ての冒険者の視線が、恐怖と、畏怖と、そして少しの好奇を混ぜた色で俺一人に突き刺さる。


(うわ、めんどくさ……)


 前世の社畜根性が染みついた俺にとって、注目を浴びるなんざ苦痛でしかない。

 さっさと金を貰って帰ろう。そう思った矢先、カウンターの奥から、ドワーフ族特有のがっしりとした体躯の男――このギルドのマスター、ボルガンが血相を変えて飛び出してきた。


「き、貴様……いや、リアン君!  ちょっと奥に来てくれたまえ!」


 有無を言わさず、ギルドマスター室に連行される。

 ボルガンはゴクリと唾を飲み込み、震える声で尋ねた。


「単刀直入に聞こう。……君は、一体何者だ?  あの黒天竜を、どうやって……?  あの状況、ハッタリや小細工でどうにかなるレベルでは断じてなかったぞ!」


(そりゃまあ、ステータスを書き換えただけだからな……)


 説明するのも面倒だ。俺が「小石を投げたら死んだ」と事実を告げると、ボルガンの額に青筋が浮かぶ。


「ふざけるのも大概にしたまえ!  こちらは街の存亡がかかっていたのだぞ!」


 ドガァン!  と、その時。

 ギルドマスター室の扉が、乱暴に蹴破られた。


「ボルガン!  黒天竜を討ったという小僧はどこにおるか!」


 現れたのは、やたらと派手な装飾の服を着て、垂れた目と突き出た腹が不快感を煽る、絵に描いたような俗物デブ。この街の領主、グルーマン子爵だ。


「子爵様!  なぜここに……」

「とぼけるな!  貴様のギルドがSランク冒険者でもない雑魚を使い、偶然にも竜を仕留めたという報告が入った!  そいつが使った古代の魔道具アーティファクトは、この私が管理するのが筋であろう!」


 ああ、なるほど。手柄と、俺が使った(と勘違いしている)アイテムの横取りか。あまりのテンプレ展開に、逆に感心するぜ。

 子爵は俺を値踏みするように睨めつけると、フンと鼻を鳴らした。


「なんだ、こんなガキか。おい、小僧。お前が竜を倒すのに使った魔道具を差し出せ。そうすれば、我が騎士団の末席に加えてやらんでもないぞ?」


 高圧的な態度。俺が断ることなど微塵も考えていない、王者の風格(笑)だ。

 俺はスキル【状態編集】を、子爵に向けてそっと発動させる。



 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 名前:グルーマン・ド・ヴァイユ

 称号:強欲の豚、税金泥棒

 状態:不倫中メイドと、軽度の痛風

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



(うっわ、役満じゃねえか……)


 俺はわざとらしく、深いため息をついた。


「嫌です」

「な……に……?」

「あんたみたいな胡散臭いデブの下で働くなんて、冗談じゃないんで」


 子爵の顔が、みるみるうちに豚レバーのような色に変わっていく。


「き、貴様あああ!  この私を誰だと思っている!  無礼にもほどがあるぞ!  者ども、こやつを捕らえよ!」


 子爵の後ろに控えていた重装騎士たちが、一斉に剣を抜く。

 ギルドマスターのボルガンが「お、おやめください!」と慌てて間に割って入った。


「子爵様!  ギルド内で冒険者に手を出すことは規則で……!」

「黙れドワーフ!  私の命令が聞けんのか!  私が纏うこの【ミスリル魔光鎧】は、並大抵の攻撃など通用せんのだぞ!  この小僧が何をしようと、傷一つつかんわ!」

 子爵はそう言って、自分の着ているキラキラした鎧を、ドヤ顔で叩いてみせた。


 なるほど。あれが奴の自信の源か。

 俺は再び【状態編集】を発動。ターゲットは、その鎧。



 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 名称:ミスリル魔光鎧

 防御力:25,000

 材質:最高級ミスリル銀、魔光石

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



(へえ、確かに一級品だな。……まあ、関係ないけど)

 俺は、そのステータスを、チョイと書き換えた。



 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

 名称:ただの豆腐

 防御力:1

 材質:遺伝子組み換え大豆(昨日の特売品)

 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐



 編集完了。所要時間、0.08秒。


「はーはっはっは!  どうした小僧!  私の鎧を見て恐れ慄いたか!」


 高笑いする子爵に、俺は憐れみの目を向けた。


「なあ、あんたの騎士さんよ。その鎧、本当に硬いのか?  ちょっと突いてみなよ」

「な、何を……」


 騎士の一人が、俺の言葉に戸惑いながらも、子爵の命令で、持っていた槍の柄で子爵の胸当てを軽く「コン」と突いた。

 ――その瞬間。

 ぐにゃり。

 最高級ミスリルで作られたはずの鎧が、まるで熟れた柿のように、ぐにゃりと歪み、無残にひしゃげた。


「「「「…………え?」」」」


 騎士も、ボルガンも、そして鎧を着ている子爵本人も、何が起きたのか理解できていない。

 騎士がもう一度、今度は恐る恐る指で鎧を突いてみる。

 ぷに。

 その指は、まるで湯葉を突き破るかのように、ズブリと鎧にめり込んだ。

 そして、鎧は形状を保てなくなり、ドロドロ、べちゃべちゃと崩れ落ち、床に白いペースト状の何かをぶちまけた。後には、派手な下着一枚になった、醜いデブが一人。


「ひ……ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


 子爵は悲鳴を上げると、腰を抜かし、泡を吹きながら気絶した。

 静まり返るギルドマスター室。

 ボルガンは、床に散らばった“豆腐だったもの”と俺の顔を、信じられないものを見る目で見比べている。


「……リアン君」

「はい」

「……君のランク、特例でSにしようと思うのだが」

「いえ、結構です。Fランクの方が、目立たなくて楽なんで」

 俺はそう言い残し、気絶したデブと呆然自失のギルドマスターを部屋に残して、廊下に出た。

 すると、廊下の壁に寄りかかって、Aランクパーティ『紅蓮の獅子』の美少女魔術師、セラフィナが待っていた。

「あ……」


 俺の顔を見るなり、彼女は顔をカッと赤らめ、俯いてしまう。

 そのステータスを覗いてみれば、【状態:心臓バクバク、リアンが気になる(好意)】の文字。

(うわ、一番めんどくさいのが残ってた……)

 どうやら俺の平穏な異世界ライフは、まだ当分、始まりそうにない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ