最近のアニメでは見なくなったと思う始まり。第一話
何となく描き始めたものです。素人なので、感情の表し方など至らない点が多々あります。ご了承しなくていいですが、言いたいことをそのまま感想にしていただければなと思っています。
今年、高校に入学したのをきっかけに、中学の不登校だったころとは決別して頑張ろうと決めていた……はずなのに、結局また不登校になり、ゴールデンウィークを迎えてしまった。
ゴールデンウィーク初日、俺は家族に連れられるまま旅行に、親戚のいる静岡県静岡市を訪れていた。
昨日の夜中に車で出発し、さっきついたばかりだが、車から分解された自転車を取り出し組み立て、朝の散歩に近くの港を自転車で訪れた。
朝特有の空気と海の独特の香りに、車でガチガチに固まった体を包み込まれて不思議な心地よさを感じていた。
そのおかげか体は軽いし、冷たい空気を切って走る感覚に、朝日を反射して光り輝いている海の光景がさらによく感じられた。
俺は綺麗に輝く海に興味を惹かれて、自転車から降りて、港のコンクリート製の桟橋から海の中を覗き見てみる。見たところ、それっぽい影はあれど、しっかりとした魚影を見ることはできない。
「ここはあんまり見えにくいんかね。場所、移すか」
ということで俺は桟橋の先の方に移動して、今度は体を乗り出して中を覗き見た。そうしたからか、魚らしき姿を見ることはできたが、俺は海に頭から落ちてしまった。
「あ、おった! て、あああ!」
頭に固い感触を覚えた次の瞬間、俺は意識を失った。
「ぱぱー! なんか寝てる人いるよー!」
誰かはわからないが、隣から小さい女の子の高くて少し弱々しい声が俺の耳に入り、意識が回復したのがわかった。
目を開けると、まぶしい太陽が高い位置に登っていて、時間の経過を感じさせた。次に俺は周りが気になり、見渡してみると、隣に黒髪黒目の麦わら帽子をかぶった、いかにも日本人という顔をした、幼稚園児くらいの子が座っていた。
あとは砂浜が広がっていた。どこかの砂浜に流されたようや。まじで、なんで流されてるの? 俺、港にいたよな。人はいたっけ? なんで流されてんの? なんで生きてんの? なんのために生まれてきたの? あ、それ今関係ないわ。
そんなことを考えながら、現状のさらなる確認をするために頭を上げて周りを見回した。すると、海から見て左のほうから、小学校高学年ぐらいの男の子と、そのお父さんと思われる、麦わら帽子をかぶった大人の男がバケツと釣竿を持って、こちらに歩いてくるのが見えた。
「あ、起きた。おじさんだいじょうぶ?」
「あ~、えっと俺は十五歳だからおじさんではないんやで」
自分がおじさんではないと訂正しつつ、俺は、痛みのある後頭部を触ってみる。
「痛っ!」
後頭部を触れた左手を見ると血にまみれていた。
「だーいじょーぶかー」
麦わら帽子をかぶった男がおそらく俺に大声で聞いてきた。その声に応えようとしたとき、俺の意識は再び途切れた。
また、目が覚めた。
今度は目の前に青空ではなく、木製の天井や梁があった。
「古民家的天井やな」
ふと、後頭部に意識を向けると痛みがぶり返した感じがした。
「ぱぱーお兄ちゃん起きた」
さっきの女の子がバケツと釣り竿の男を呼んだみたいだ。
周りを見回すと男の隣にいた男の子がテレビを見ていた。
「はいはーい」
声が聞こえると、さっきの麦わら帽子をかぶっていない麦わら帽子の男が現れ、女の子の隣に座った。
「君、浜辺で倒れてたんだけど。頭は大丈夫かい?」
帽子の男が聞いてきた。
「頭の傷はあんまりですけど、脳みその方は大丈夫です」
悪意のない言葉にイラっと来たからか、つい皮肉めいた言葉が出てしまった。
「そうかとりあえず、君のこと聞いてもいいかい?」
「えっと、まず名前は、海星み……痛!」
頭の傷が一瞬痛み、自分の言葉を遮った。
「かいせいみ?」
「海星海心って言います」
「そうなんだ。ちなみに僕の名前は海原康で、この子たちは僕の子供で、テレビを見ている男の子が康弘で九歳、僕の隣にいるのが智花で四歳、二人ともまだ誕生日が来てないよ。それで君はなんで、あんなところで倒れてたんだい?」
至極当然の常識的な質問をされたが、俺自身何もわかっていないので、これまでの簡単な経緯を話すことにした。
「えっとですね。あの、俺は港のコンクリの桟橋で、海の中を覗いてたら体を乗り出しすぎて落ちました。落ちた時運悪く固い物に頭を打って意識を失いました」
「それで、気づいたらここに? って、そんなわけないか。あはは」
康さんは冗談めいた自分の憶測を笑った。
「あの、いえ、そのとうりです」
申し訳ない気持ちをしながら俺は言った。
「えっと、不幸中の幸いってやつなのかな? 死ななくてよかったね」
康さんは最大限の配慮を心掛けた、言葉をくれたようだ。
「気を使ってくれるのはありがたいんですが、ここってどこなんですか?」
俺は帰るための情報集めを始めた。
「ここは僕の持ち家だよ」
俺は自分の意図とは違う返しが来たため、質問を改めて聞いた。
「そ、そうなんですか。じゃあ、ここはなんていう地域なんですか?」
「ここは未海島という島だよ。本土から二十kmくらいのところにある四つの島のうちの一つだよ。大きさは四つのうち二番目に大きいよ」
「”みかい島”ですか。はぁ、えーっと、とりあえず帰りたいんで本土に行く方法聞いてもいいですか?」
「えーっとね、この島には週に二度、土日の正午しか本土へのフェリーが来なくてね。あとは個人の漁船だったりで港まで行くぐらいかな」
「そうですか。ていうかなんかここ、やけに暑くないですか?」
「もう七月だしこんなもんじゃない?」
俺は康さんの言動にとてつもなく受け入れがたい違和感を覚え、ひどく動揺した。
「は? 七月? そんなことあるわけないでしょ? 俺が海に落ちたのゴールデンウィーク初日ですよ⁉ 二か月……六十日間も流れていたって言うんか⁉ どう考えてもおかしいやろ! そんなん死んでるに決まってるやろ!」
俺は受け入れがたい事実を聞いて、つい、荒い口調で怒鳴ってしまった。
「うえーん」
俺の怒鳴り声に恐怖を覚えたのか、智花ちゃんが泣いてしまった。
「ああもう、大丈夫だからな! パパがいるからな、大丈夫落ち着きな」
康さんが泣き出した、智花ちゃんをあやし始めた。
「とりあえずこの部屋から出て行ってもらえるかな?」
「あの、すみません……ちょっと頭の整理と、親に連絡をしてきます。俺のかばんって見ませんでしたか?」
俺は小さい子を泣かせたことと、先ほど聞いた事実に頭を抱え、立ち上がった。気持ちは座り込んだまま。
「君のそばに落ちていたものなら、そこにあるよ」
そう言って、縁側沿いの廊下にちょこんと置いてある、かばんに向かって指を指した。
「なにからなにまでありがとうございます。失礼します」
そう震えた声で言い、俺は障子を閉じてかばんを取り、部屋を離れた。
ある程度部屋から離れた廊下で、鞄からスマホを取り出し、電源の確認やらをした。
スマホは濡らしたとは思えないほどこれまでどうり動いたが、電波がまさかの3Gで、よく使うチャットアプリは使えなくなっていた。不幸中の幸いなのか、初期のメールや電話のアプリは使えるようになっていた。だが、一つ問題がある。俺は親や友達、親戚などのメールアドレスや電話番号を知らない。つまり、これは事実上のデジタルアルバムであると言える。これほど、電話番号やメールアドレスを聞いておかなかったことを後悔したことはない。
俺は次の手を考え始めた。
これで、スマホは使いもんにならないことが分かった。ならどうするべきか、何とかして生きている旨を知らせなければならんけど……そうや! 普通に交番に行けば、助かるんちゃうかな? 二か月も姿くらませたら、行方不明の届け出くらいは出てるやろうし、これで帰れそうやな。
そんな風に思い、俺は希望を持った。
帰る方法を考えるのを終え、海側の縁側に座り太陽光を反射し、光り輝く綺麗な海を見た。
ほんまに二か月も経ったんかねぇ。もしそうなら一週間ぐらいのタイムラグじゃそんなに変わらんし、焦らんでもいいか。でも、ここにいるのはあんまりよくないかもしれんな。叔母さん関西弁が子供に移るの嫌そうやったしな。従弟は普通に受け入れてたけどな。あぁ、従弟が恋しいなホームシック? いや、この場合はなんていうんやろな。セカンドホームシック、かな?
俺は現実離れした事実と思われる情報を受け入れて、楽観的に考えた。
「はぁ、なんでこないなところに流されて来たんやろな~。運命ってデスティニーやし、運命があるなら運命は俺にどうしてほしいんやろね~? ここから人の手を借りて、帰るのが試練やー言うなら喜んでやるけどな。そないなことどうでもええか。それより、さっきのは絶対によくないな、あないなことする人間なんか仲良くなりたくないもんな。謝罪はしとかないかんな」
ため息を皮切りに思ったことが口から独り言として出た。
数分後、俺は先ほどの部屋に戻ってみた。
「あの、失礼します」
俺は恐る恐る部屋の障子を開けた。
障子を開けた先には、泣き疲れたのか寝ている智花ちゃんとその横に座っている康さんの姿があった。
「現状を受け入れられたかな?」
俺が障子を開けたのに気づき、状況を呑み込めたかを聞いてきた。
「ま、まぁ……受け入れざるを得ない事実……事実ですからね。あの、さっきはほんとにすみませんでした」
俺は深々と頭を下げた。
「それはいいよ。僕もそんな事実を急に聞かされたら、動揺して周りに迷惑かけちゃうよ! それに、反応は人それぞれだからね。呑み込めたのならよかったよ」
「お気遣い、ありがとうございます。あの話は変わりますけど、この島に交番とかありますか?」
「交番は隣の海命島にならあるけど、この島にはないね」
「あの、隣の島ってどうやって行くんですか?」
「本土の人だと、さっき言ったフェリーに乗るぐらいしかないかな〜」
結局のところ俺はこの島に1週間ほど滞在せねばならないらしいが、まだ諦める段階では無いと思い、滞在先を探しつつ、何とか海命島に行く方法を探すことにした。
「そうですか、ならこの島に民宿とかないですか? 1週間滞在するにしても、滞在先がないとやばいので、教えてください!」
俺はまた、頭を下げた。
「え、一週間ぐらいならうちに泊まっても問題ないけど。泊まらないの?」
「いいんですか⁉」
俺は驚きのあまり頭を上げてそう言った。
「いいよ、いいよー。僕が拾って来たんだから最後まで面倒は見るよ」
「じゃあ、あと八十四年ほどお願いします」
「君が帰るまでだからね。一生じゃないからね!」
「しばらくの間、よろしくお願いします!」
俺は軽く頭を下げ、それなりの態度を示してお願いした。
「うん、よろしく」
七月四日、日曜日。
こうして、俺の人生にとって一瞬ともいえる、たった約六億五千五十九万二千フレームの間の下宿生活が始まった。
どうでしたでしょうか。素人なりに頑張って書いたのですが、やっぱりダメなんですかね。これからものびのび頑張ります。