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特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


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 色々の考察する事が面倒になってしまった俺。

 取り敢えず、頭と心臓とをぶち抜けば、生物であれば死ぬだろう、と見切りを付けてアイツの懐を目指して突っ込んで行く。


 急な俺の方針転換に驚愕したのか、慌てて茨を俺へと目掛けて差し向けて来る。

 が、急造かつ咄嗟の指示の元に構築された檻なんてモノは、曲がりなりにも完成しているのならば兎も角、そうでないのならば閉じる前に通り抜けてしまえば被害も最小で済む!と迷わず飛び込んで行く。


 とは言え、当然突っ込んだ先で壁となっているのは、目が粗いとは言え例の茨だ。

 物理的に破壊するのにも、かなりの労力が必要とされる程度には強度があり、かつ生えている棘も鋭く長いモノばかり有る。

 が、何処ぞの妖怪『首置いてけ』もやっていた、と聞き及ぶが、その手のモノは意外と()()()()()を以て陣形が完成する前に突っ込めば、そこまでダメージを受けずに済むモノでもある。


 まぁ、とは言え、ソレは比較的、と言う話。

 致死ダメージor致命傷を受けるか、もしくはその一歩手前で踏み留まるかどうか、と言った選択肢でしか無い為に、当然それ相応のダメージは受けている。

 が、俺の様に回復手段を持ち合わせている輩の場合、ココの差はかなり大きい。

 それこそ、天と地ほどにも大きな差が生まれる、と言っても良い程だ。


 そんな訳で、俺は空中にて茨に貫かれ、斬り裂かれた外傷を癒しながら、床へと着地する。

 そこは既に放たれた茨の檻の内側であり、咄嗟に再展開しようにも、空間が狭過ぎてどうにもしようが無い、と言う様な、そんな場所であった。


 当然、そんな所に忽然と俺が現れる事を予期していなかったらしいアイツは、驚愕から目を見開いて身体を硬直させていた。

 まぁ、そうやって飛び込んで来た、と言う事以外にも、俺が無理矢理に自傷覚悟で茨の濁流に飛び込んで来た、と言う事の方に驚きを隠せなくなっていたのかも知れないが、動かず抵抗せず、なんて状態になってくれているのであれば、こちらとしても好都合。



 的が動かずブレないなら、コチラも遠慮なくぶち抜かせて貰うのみ、だ!



 なので、俺はそのまま、血塗れのままで、大きく前へと踏み出して加速する。

 当然、狙いは当初の通りに頭の心臓。


 幸いにして、『金剛』の冷却期間は既に終わっている。

 だから、どちらにしても、確実にぶち抜いてやれる、と言う訳だ。


 とは言え、流石に殺意マシマシにて急速に接近されれば、呆けていたアイツも再起動を果たしたらしく、コチラを迎撃するべく構えを取る。

 しかし、その時には既にこちらはヤツの懐へと潜り込んでおり、少し前の焼き増しの様な光景が展開される。



 …………と、そこで、アイツが口元をニヤリと歪める。

 そして、それと同時に、着ていたコートの前側、胸元から腹側へと掛けた部分が盛り上がり、瞬時に茨の濁流が発生し、俺を呑み込もうと殺到する!!



 が、ソレは正直想定内。

 肌からも茨を発生させられた、より正確に言えば体内から発生させられる、と言う事なのだろうが、兎に角ソレは既に割れているネタだ。

 ならば、対策、と言うか警戒しないハズも無く、対抗手段の1つも考えておかないハズも無し。



「こう言う時、手数が多くて助かるんだよなぁ錬金術!!!」



 両手を合わせて空気中の酸素を弄って一回。

 踏み締めた右の踵で床へと干渉し、弄った空気と隔てる形で二回。

 踏み出した左足先にて、意図的に導火線を引いて発火させる事で三回。


 それぞれ、コンマ数秒ずつ発動をずらす事で、俺は立ち上げた壁に守られつつ、アイツのサイドへと半ば吹き飛ばされる形で移動し。

 アイツは目の前に唐突に現れた、空気に引火した爆炎によって目を焼かれ、茨を吹き飛ばされる形で否応無しに硬直せざるを得なくなる。


 当然、そんなアイツに繰り出すのは、『金剛』を装着した状態での右ストレート。

 狙いは、勿論心臓一択。


 自らコートを破り、その上で爆炎によって焼かれ、かなりあられもない姿と化している。

 普段であれば、服の上からでもかなりの膨らみを主張していた双子山が、その山頂すらも含めて露わになっている光景に思わず魅入り、生唾を呑み込んでいたかも知れないが、今は完全にスイッチが入った状態となっている。

 その為に、特に躊躇いや感慨を抱く事も無いままに、その白く深い谷間へと拳を叩き込む!!



 ────轟っ!!!!



 着弾と同時に、周囲へと轟音が再び響く。

 それだけでも廃墟である倉庫が崩壊しそうだが、その前に仮の主の肉体の方が限界を迎える方が早いだろう。

 何せ、今まさに、心臓に風穴を開けられた状態で、再び壁へと叩き付けられているのだから。


 これで、壁から杭でも飛び出していれば、磔じみたモノに姿を変えていた事だろう。

 だが、流石は日本製、と言うべきか、廃墟と化した今の今となっても、その様な中途半端な壊れ方をする事無く、建物としての使命を全うし続けていた。


 そんな状態だったからか、アイツは未だに健在な壁へと背中から叩き付けられて、真っ赤な壁画を描いていた。

 端から見ている限りであれば、ソレは何処か現代アートの風刺的なモノにも見えなくも無かったが、その塗料が人の生き血?であるのならば、確実に美術館に飾られて称賛される事は無いだろう、と適当な見切りを付けて、再び前へと足を進める。


 そのまま大人しく嬲られてくれる、となれば話は早かったのだろうが、流石にそうはなってくれず。

 半ばめり込む形で壁へともたれ掛かっていたアイツも、このままでは不味い、と判断出来たのか、未だに衝撃によって動き辛いであろう身体をどうにか壁から引き剥がし、行動を開始しようとする。


 とは言え、流石にエネルギー源?である血液を大量に喪った影響は大きいらしく、その足取りは覚束無い。

 尤も、そうやって鈍りながらも、心臓に開けられた風穴は、即座に修復される、と言う程の速度では無いにしても、それでも吹き飛んだ乳房同様に肉が盛り上がって塞がろうとしており、あまり長く放置していては、再度風穴を開ける事になるだろう。


 俺としては、回復させてしまうと手間が増える為に、時間が惜しい。

 アイツとしては、回復する為の時間を稼ぎたい。


 相反する目的を持っているが故に、行動を起こしたのはほぼ同時。

 逃げようとして退くアイツを、俺が追い掛ける。



「…………まぁ、当然この状態なら、俺の方が速い訳だけどな」



 一応、血塗れにはなっているものの、そこまで重篤な負傷をしている訳では無い俺。

 一方、吸血鬼だかゾンビだかにとって、どれ程重要な部位なのかは不明だが、それでも普通ならば即死するハズの心臓を失っており、ソレを再生させつつ逃げようとしているアイツ。


 どちらの方が体力的に余裕があり、追い詰めてトドメを刺すべき、と言った覚悟と殺意とを決めているのはどちらか、と問われれば、まず間違いなく俺の方だろう。

 よって、ほぼほぼ順当に回復しきられるよりも先に、アイツの背へと追いつく事に成功する。


 流石に、大量に血液を喪ったせいか、身体から直接茨を発生させる、みたいな手段を使って来る事は無かった。

 が、背後に位置する例の壁から、残された血液を利用して大量の茨を展開してきた時は焦ったモノだ。


 しかし、こうして追い付いた以上、生かしておく必要性は無い。

 さっさと片を付けて帰る事にしよう。


 そう決めたのだが、追い付いたアイツは何処か余裕そうな雰囲気。

 視線は俺の右腕に注がれており、その先には未だ冷却期間が終わっていない『金剛』の姿があった。



 …………さてはコイツ、俺の有効手段が『金剛』しか無いと思ってやがるな?

 そして、その虎の子がまだ使えない状態だと確認しているから、そこまで余裕がみせられている、と。

 大方、先に見た冷却期間の長さ的に、自分の心臓が治る方が先だ、とでも読んでいるのだろうが、流石にソレは甘すぎるだろうがよ!



 現状を読み、内心で吐き捨てた俺は、そこから大きく踏み込んで、アイツの懐へと飛び込む。

 コレには、動くのならばもっと後、と判断して油断していたアイツは反応する事が出来ず、無防備に接近を許してしまう。


 が、そうして近付かれたとしても、有効打はまだ打てないのだから、とでも思っているであろう痴女じみた格好を続けるアイツの口へと、俺は握り込んでいたとあるモノを、叩き付ける様に捩じ込む。

 ソレは、存在性の高さから、かなりの硬度を保持しており、恐らくはかなり頑丈であったのだろうアイツの牙を圧し折りながら、その口腔の内部へと侵入し、蹂躙して行く。


 突然過ぎる程に突然の出来事に、まるで他人事の様に目を白黒させる真っ赤なアイツ。

 しかし、その口元は確かに蹂躙されており、折れた牙と同様に、俺が突っ込んだモノが口内を好き勝手に破壊し、頬を突き破って先端が覗いていたりもする。



「…………なぁ、知ってるか?」


「…………?一体、ナニヲ……」





賢者の石(お前の口の中のソレ)って、作り手なら意図的に崩壊(爆発)させられるんだぜ?」





 そう言って俺は、掲げて見せた右手の指を、これ見よがしに鳴らして見せたのであった……。




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