表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/86

58

 


 昨日と同じく、家路に着く。

 当然、状況も昨日と同じく、俺1人だ。


 昨日と同じく1人なら、同じ様に追跡者が尾行して来るんじゃないか?と思っての行動だったのだが、どうやら当たりだったらしく、今日も誰かしらに追跡されている気配がする。

 が、今日は敢えて気付いていないフリをして、特に反応する事も無く、真っ直ぐに家へと目指して歩いて行く。


 ここで、俺が確かめたいのは2つ。

 相手の警戒心と、目的の2つだ。



 1つ目の警戒心に関しては、今実験している真っ最中だと言えるだろう。

 何せ、昨日襲撃を受け、その上で変な状態異常じみたナニカを植え付けてくれた相手がいる、と言うのが追跡者側から見た俺の現状であり、奴らのターゲットの状態だ。

 そんな相手が、幾ら安全だ、とされている場所であったとしても、無防備に振る舞えるモノだろうか?

 普通であれば極度に警戒と緊張とをして、周囲へと意識を張り巡らせ、小石が転がろうと、空き缶が蹴飛ばされようと、即座に反応して跳び上がる程に怯えるのが当然の反応だ。


 そんなハズの相手が、無防備に1人で行動している。

 しかも、極度にリラックスした状態で、なんなら鼻歌すら歌いながら、だ。

 それでいて、こちらからの監視に気付いた様子は見せていない。

 昨日は、アレだけ鋭敏に感じ取り、罠にまで掛けて見せたのにも関わらず、だ。



 そんなモノ、当たり前だしあからさま過ぎる程に明確な罠に他ならない。

 普通なら、『あ、こっちの作戦バレてるし誘われてるな』と判断が付くし、そうなれば遠目からの監視に移るか、もしくは正面から堂々と接触して来て目的を語るか、位が残る選択肢だろう。


 脅しも、我が家の戦力を鑑みれば、例え俺が『能力』持ちだと知らず、勝手に無力だ、と認識していたとしても、他の面々がこちらの世界基準では強過ぎる為に、流石に直接的なモノは無いであろうし、経済的なモノも同じ理由で有り得ない。

 なら、程々に情報を集めるので満足するか、もしくは真正面から協力を取り付けようとする方が、余程建設的と言えるだろうからだ。


 なので、と言う訳では無いが、人並みに警戒心があり、相手の行動を読み取る洞察力があり、危険を察知する危機感が在るのであれば、俺を尾行しようとは、少なくとも昨日の今日では思わないし、実行もしないハズなのだ。

 …………なのだが、そうでは無く、昨日と同じ様に追跡してくれている、と言う事は、その辺の警戒心やら思考力やらを丸っと何処かに忘れて来た、と言う事だろう。

 こうなってしまうと、2つ目の目的に関しても望み薄、と言う事になってしまう可能性が高そうか。


 最低限、相手の狙いないし望みを知る事が出来れば、対抗策を打ちやすくなる、と思って待っていたのだが、この様子だと理性的な対応は願うことが出来ず、追跡してくれている連中も、事前に打ち込んだプログラム通りに動く事しか出来無い人形、と言う事だろうか。

 まぁ、それはそれで対応の仕様も無くは無い。

 直接話を聞き出せる人間相手の方が、人形相手よりも楽だったが、それでもやり方が無い訳ではないのだ。


 そんな訳で、俺は今回特に寄り道等をする事無く、真っ直ぐに帰宅する。

 玄関から屋内へと入った瞬間、扉を蹴破られて押し入られる可能性から多少ドキドキはしたものの、特に異変が発生する事無く、暫しの時間が経過する。

 …………どうやら、今回の追跡者に関しては、俺の尾行は命令されていても、それ以上の事は命令されてはいなかったらしく、気配は家の前まで来はしたものの、特に監視に最適なポイントへと移動する事も、何らかの工作を仕掛けて来る事も無いままに、ただじっとこちらを見詰めて来ている様子だ。


 端から見れば、不審者丸出しな行動。

 未だに夕方と呼ぶのが適当な時間帯であり、当然の様に人通りもそれなりに在る状況。

 そんな最中で、一所に固まって、一般家屋を見上げている不審人物、だなんて、最近の噂話が無かったとしても、十二分に通報されるに値する条件が揃っている、と言えてしまうだろう。


 流石に、それは不味いと判断出来るだけの思考力は在ったのか、家の前から追跡者の気配が移動し始めるのが感じられた。

 とは言え、もう俺が帰宅してから30分程も経過していた事もあり、お巡りさんこっちです!案件で逃げ出す羽目になったのか、それとももう充分、と判断しての撤退なのかは不明なのだけど。


 そうして遠ざかろうとする追跡者の気配を、今度は俺が尾行する。

 家で待機している間に目立たない服装に着替えも済ませてあり、その上で持てる技術の全てを使って気配を絶っての追跡。

 向こうの世界でも、本職の限られた連中か、もしくは予め追跡されている、と認識していない者からは、絶対に感知される事の無かった俺の特技を以てして、逆に相手方の情報を集めるべく追跡者の後を追い掛けて行く。


 幸いな事に、今の所バレてはいない様子。

 そして、昨日の追跡者とは別の個体らしく、遠目に見てもあからさまに男性な背格好をしている今日の追跡者以外に、俺を監視していた者はいなかったらしい。

 もし居たのならば、家の中に居たハズの俺の姿が無くなっていたり、遠目に見えているであろう俺の存在(別段透明化していたりする訳では無い)に気付いて慌てたりして、俺が尾行している追跡者にも何かしらの連絡が行くか、もしくは俺を取り押さえる為に動き出すハズだ。

 ソレが無い、と言う事は、予備策も予後策も立ててはおらず、ただ単に俺の後を追跡させていただけ、と言う事になる。



 …………いや、本当にマジで訳が分からない。

 普通、そこには目的が存在するハズじゃないのか?

 今回で言えば、俺の家を特定するのが目的だった、とするのなら、普通は何処かに連絡の1つもして、情報を共有するモノじゃないのか?

 もしくは、目的が俺だけでなく家そのものを見張る、だとか、家族の情報を得る、だとかであっても、やはり交代要員を用意してソッチに見張りを引き継ぎつつ、その後に場を離れる、と言うなら理解も出来るが、そんな感じでも無い。

 居場所だけ特定したし、暫く動く気配が無かったから帰りますね、なんて、ガキのお使いじゃ無いんだから、普通に何がしたいのかが分からない。



 内心どころか物理的に首を捻りながら考える。

 相手は、何がしたいのだろうか?と。


 先にも述べた通りに、あそこまであからさまに所在地を特定したのであれば、普通は監視要員を置くモノだ。

 少なくとも、直接追い掛けさせていた者は、交代要員を用意するか、それとも何かしらの手段にて絶えず監視出来る状態にしない限り、何もなしでこうして引かせるだなんて有り得ない。


 しかし、少なくとも交代要員(仮)が追加された気配は無かったし、何かしらの機器や魔導具を取り付けられてもいない。

 大昔の監視衛星じみた事が出来るのであれば、最初からソレをやれば良いのだから、そちらもやはり無いだろう。


 …………まぁ、なにはともあれ、取り敢えずこちらも相手の情報を握る他に手は無い。

 流石に親父も、昨日の今日では例のブツも解析が終わっていない、との事だったし、案外と相手の情報と言うモノは俺の手元へと集まっていないのだ。

 だから、多少危険があったとしても、どうせ大概の事では死なないのだから、こうして突っ込んで情報を集めるのが最善手に繋がるのだから。






 ────そんな風に考えながら、前を進む背中を追跡する俺。

 しかし、その背中を更に追い掛けて来るモノ。

 より正確に言えば、その姿を()()()()()()()()()()が俺自身の事を追い掛けて来ている事に、今はまだ気付く事が出来ずにいたのであった……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ