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特別になりたい!と思っていましたが……〜なってみたら思っていた程良いモノでも無かったです〜  作者: 久遠


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書き溜めが尽きたので連続投稿はここまで

次回以降は2日か3日に1回のペースで投稿します

 


「おいっ、全員居るな!?」



 暫く進んだ先にて漸く立ち止まり、振り返りながら声を掛ける。

 その頃には、食事した直後であり、かつ賢者の石によってスタミナも強化されている俺に無理矢理着いてきた、と言う事もあり、4人共に息を切らしていた。


 一応、全員居る事を確認した上で、スマートフォンに来ていた情報を再度確認する。

 そこには、俺達が先程までいた街の中心地付近に次元穿孔の発生地点が表示され、そこから同心円状に避難区域が記されていた。


 俺達が今居る場所は、避難警戒地域と準避難警戒地域の境目位。

 先程まで居た場所が、要避難地域並びに戦闘地域として指定されている為に、これ以上逃げなくてはならない、と言う訳では無いが、さてどうしたものだろうか。


 なんて思っていると、次々に俺のスマートフォンに着信が。

 何事かと思って見てみれば、そこには家族からのメッセージがズラリ。


 内容としては、戦わずに逃げろ、と言うモノ。

 まぁ、そうなるわな、と思いつつも、今日真名目先生から『能力』に覚醒している、と言う認定を受けた際にされた説明を思い出す。



 曰く、『能力』持ちは優遇される面も多いが、束縛される点も多い。

 その1つが、侵略組織との戦闘の義務化、にある。



 今回の様に、既に次元穿孔に関してはある程度正確に察知する技術が開発されている。

 が、それもまだ万能と言う訳では無く、孔が発生する直前から数分前程度までしか事前に察知する事は出来ていないし、場所に関してもある程度バラツキが出てしまう。


 なので、基本的には対侵略組織として認定されている組織に出動要請、ないし組織の方が自分達が敵対している組織だから、と勝手に出動して戦う事になる。

 が、その際に場所が悪いと到着まで時間が掛かったり、その間に被害が出てしまったり、と言う事が昔から多々あった訳だ。


 なので、と言う訳でも無いのだろうが、その穴を埋める為に、『能力』持ちとして認定を受けた者には、ソコで戦う義務が発生する、と言う訳だ。

 勿論、発生した以上何がなんでも命が尽きるまで戦っていろ、と言う鬼畜命令が降る訳では無いし、色々と条件も付く。


 例えば、で挙げるのならば、俺の様にまだ紙の書類としてしか発行されておらず、正式なカードの方を持っていない者は参加が厳禁だし、寧ろ緊急事態でもなければ参戦すれば逆に罰せられる事になる。

 また、炎上寺の様に未成年であったり、学生であったり、と言った間には罰則も免除される為に、不参戦でも構わない。

 まぁ、参戦すればその分報酬が出たりもするから、不参戦を決め込む、って事はそんなに無いらしいが、今回は学生で一般人な同行者が居たのだから、退散して当然、と言うヤツだろう。


 なんて事を思い返していると、やっと息が整ったらしい4人が復活し、言葉を交わし始める。

 そこには、突然の事態に対する困惑と同時に、確かな怒りが含まれていた。



「…………はぁ、クソっ!

 連中、もうちょっと空気読めってんだよ!?

 なんで、こんなタイミングで来やがるかなぁ!?」


「あぁ、まったくだ!

 お陰で、さぁこれから楽しむぞ!って空気が台無しじゃねぇか!?

 と言うか、何時でも来るんじゃねぇよ面倒臭ぇ!?!?」


「まったくだよ!

 コレじゃあ、お祝いのつもりだったのに、アタシ達ご飯奢られるだけで終わっちゃうんだけど!?

 アタシ達に、そんな不義理働けって言うつもりなのあいつら!?」


「…………確かに、俺も不満でいっぱいだけど、でも、だからってどうしようも無いんじゃないか?

 中心街はまだ要避難地域に指定されているし、この辺りだと遊ぶにしても、何処かに移動するにしても、あそこを通らないとならない訳なんだから、今日はもう無理じゃないかな?」


「「「でもっ!!!」」」



 ここまで移動させられた不満か、それとも楽しみを邪魔された怒りか。

 口調を揃えて感情を顕にする3人を抑えようと、水連が1人で説得しているが、だからといって彼が不満に思っていない訳が無く、残念さを感じる雰囲気を醸し出していた。


 そんな友人達の姿に、何故か胸の内から込み上げて来るモノが。

 向こうの世界では、基本的に俺の都合や感情を鑑みてくれるヤツなんて殆どいなかったし、いても直ぐに死んでしまったりしたからなぁ。

 こういった心遣いが、かなり身に沁みるのである。



「…………なぁ、だったら取り敢えず今日は解散にして、明日以降でまた来れば良いじゃないか。

 流石に、俺も奢りっぱなしって言うのは座り心地が悪いからな。

 取り立てられる機会があれば、遠慮なくお前らから取り立てさせて貰うから、覚悟しておけよ?」


「「「うっ……お前がそう言うのなら……」」」



 流石に、主役からの提案を押してまで感情を優先する事は出来なかったらしく、言葉に詰まる3人。

 その後ろで水連だけは苦笑いを浮かべているが、コイツだけはどうやら俺の言葉の裏、特に取り立てる上限を設定していなかった、と言う事に気が付いている様子だな。

 まァ、別段そこまで悪どく請求するつもりなんて無いから、良いんだけど。






 ******






 そんな訳で、一旦解散、となった帰り道。

 俺は1人道を歩いていた。


 幸いな事に、4人共に比較的近くに住んでいたので、中心街に戻らずとも帰宅が可能であった。

 帰宅困難者が出なくて良かった良かった、と誰に向けるでも無く呟いてみれば、周囲を違和感が支配する。


 …………まぁ、幾ら侵略組織による侵攻が近くであった、とは言え、矢鱈と静かだな、とは思っていたのだ。

 特に、発生地点からそれなりに距離が離れた場所であり、かつ住宅街の一角、と言う事も相まって、ここまで人気が無くなる、なんて事は基本的に有り得ないので、恐らくは誰かが何かしている、と言う事なのだろう。


 そうなると、可能性は2つ。

 1つは、俺とは全く関係無い何事かが行われているこの場所に、偶々運悪く俺が足を踏み入れてしまっただけ、の場合。

 その時は、見てはならない物を見たりする前に、サッサと通り抜けてしまうに限る。


 …………だが、可能性の2つ目。

 俺を標的として周囲に人払いをしていた、と言う場合。

 こちらの場合だと、見逃してくれたりだとか、勘違いでした、なんて事は期待出来ないだろうから、確実に何かしら仕掛けて来る事になるのは間違い無いだろう。



 ……………………まぁ?

 本当に可能性として?

 何処ぞのド変態カップルが?

 侵略組織の侵攻にかこつけて『能力』か何かで人払いしていて?

 本来なら誰かしら居て然るべき夕暮れの時間帯に?

 大通りで露出プレイに勤しんでお愉しみの真っ最中でした、なんて可能性が一欠片位は有るとは思うが、まさかソレが正解なんて有り得ないだろうよ(笑)。



 なんて、心の中でふざけながら呟いてみる。

 …………何やら、何処かで何かしらのフラグが立った様な気がしないでも無いが、まぁ多分気の所為だろう。きっと。恐らく。そうに違いない。


 そうでなければ、こうして瞬きの間に視界に現れた影は、無関係な一般テロリストでは無く弩級の変態、って事になるんだけど、それでも良いのか?

 良くないよな?

 だから、頼むから違うと言ってくれよ!?(懇願)



 …………と、何故か自ら立ててしまったフラグを折る様に、信じていない神へと祈りを捧げる俺。

 しかし、そんな俺の祈りを嘲笑うかの様に、コツコツと足音を周囲へと響かせながら近付いて来たその姿は、まるで男の欲望を固めて『女』、と言うよりも『メス』として出力した様な、暴力的なまでの肉感的な身体をしていた。


 大きく張り出し、衣服に悲鳴を上げさせている胸部。

 元々それなりにタイトなのだろうが、質量の暴力によって今にもスカートを張り裂けそうな程に膨らませている臀部。

 それでいて、腰は確りと括れていてチラリと覗く腹部には腹筋が浮き、程よく肉の乗った太腿から続く脚と腕はスラリと長く伸びていた。


 …………ここだけ見れば、ドエロイ女が前から歩いて来た、と言う程度で済んだのだろう。

 服装が、最早服?と言うレベルのどえらいボンテージファッションであり、各所の金具が弾けないかどうかが心配になる程度で、まぁ各人の好みによるか、と言う話で済んでいた。


 が、そうして姿を現した彼女は、褐色の肌と長く伸ばされた黄金の髪の境目付近。

 丁度こめかみに当たる部分から、大きく捻くれた角を生やしていた。



 ……………………そう、その身に纏う強大な魔力と言い、外見的な特徴と言い、俺が向こうの世界で散々に相手にして来た、『魔族』と外見的特徴が一致し過ぎるその女が、俺の目の前へと悠々と歩み出て来たのであった……。




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